聞こえないふり






「…ねぇ、君が好き。」

俺が発したその言葉。

怖くて、怖くて。仕方がなくて。

だけども、伝えたくて。

それなのに。




「…ん?何?何か言った…?」

_君は笑顔で聞こえないふりをした。_




「ううん、何も言ってない。」

聞こえないはずがなかった。絶対に、聞こえているはずだった。

俺がその言葉を発した時、君は微かにこちらを向く素振りを見せたから。

でも、俺を視界に捉えた君は、戸惑いを瞳に浮かべてから綺麗な笑顔を見せて、言うんだ。




【何?何か言った?】




いつだって、笑顔でそう返す。

その前の、戸惑いで揺れる瞳は何?

何回、俺にその表情を見せるの?

……なんで、そんなに綺麗に微笑むの?




嫌いなら、嫌いって言えばいい。

好きなら、好きって言えばいい。

何をそんなに怖がるの。俺だって怖いんだ。

怖いのは、君だけじゃ無いんだ。

だから、ちゃんと自分の気持ちに向き合って。

綺麗な笑顔で誤魔化さないで。

綺麗な笑顔で無かった事にしないで。

綺麗な笑顔で聞こえないふりをしないで。




「やっぱり、君が好き。」

君が何を怖がっているのかはわからないけど、

俺は伝えたいから伝え続ける。

君の愛が欲しいから伝え続ける。

ちゃんと、聞こえているんでしょう?

だから、その笑顔を見せないで。








「何、また何か言った?」

笑顔で、聞こえないふりをしないで。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る