第3話 5


 眠気と戦いながら、授業を受けて、家事をこなして……途中、仮眠を取ったけど、それを合わせても二時間しか寝ていない。常に眠くて、立っていても寝れるような気がする。

 コンシーラーを重ねて塗っても、隈は消えてくれなくて、自分のあまりに酷い顔に笑ってしまう。

 不自然に留衣ちゃんを避けてしまうし、自分の行動に嫌気がさしていく。

 もっと器用になれたらいいのに。

「千和、大丈夫?」

 ぼーっとしてるのは自覚があるけど、決して体調が悪いわけではない。桃子ちゃんに心配かけてしまうのが心苦しい。

「眠れなくって」

 素直にそう言うと、桃子ちゃんが保健室を勧めてくれた。

「でも……」

「千和」

 エンジくんに睨まれる。そう、寝不足は自己管理が出来ていないのがいけないんだよね。桃子ちゃんを守るためにこの島に一緒に来たのに、情けない。

「明日の歩行祭、休む?」

「大丈夫、今日ちゃんと寝るから。ね?」

 桃子ちゃんが楽しみにしている歩行祭を休むわけにはいかない。

 授業も半日だけで終わるから、帰ってすぐに寝れるようにすればいい。

 そう思っていたけれど、実際は浅い眠りを三十分毎に繰り返すばかりでぐっすり眠れなかった。眠らなきゃと目を瞑るけれど、時間ばかりが過ぎてしまう。

 結局そのまま、夜が明けて、歩行祭を迎えてしまった。

 でも、昨日よりも休めたからか、体はすこし軽いように感じる。

 いつもより早めに朝食を済ませて、学校に向かう。制服じゃなくて、ジャージとリュックでの登校なのもいつもと違う。

「いってらっしゃい」

 留衣ちゃんに見送られて、学校へと向かった。

 わたしのグループは桃子ちゃん、エンジくん、鬼藤くん、鏡花ちゃんの五人。もう鬼藤くんと鏡花ちゃんは学校に着いていて、わたちたちが合流する形になった。

 体育館で先生たちからの注意事項があって、軽く柔軟をして体を解すと、先頭のグループから出発していった。

「ねえ、千和」

 桃子ちゃんのほっそりした手が、おでこに触れる。ひんやりして気持ちいい。

「体調悪いんじゃない? 顔色がよくないよ」

「平気」

「でも」

 桃子ちゃんと話している間に、わたしたちのグループの番になってしまった。

「行こうぜ、桃子」

「ちょっと、エンジ」

「千和も、途中無理なら救護の先生に拾ってもらえ」

 エンジくんの手が、わたしの頭にぽんと乗る。

 いつも、わたしが落ち込んでいるとしてくれる、エンジくんなりの応援だ。いつも厳しいけど、ちゃんとこうして見ていてくれる。

「うん」

「ゆっくり行こうか」

 鏡花ちゃんが手を差し伸べてくれる。その手を掴んで、わたしはスタートを切った。

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