『窓』『月』『ひかり』

 ────窓から漏れる月明かり。

 外を眺めるだけで此処ここを出ていく事は出来ない。



「・・・・・・お月さま、どうしてそんな高い所から地を照らすのに、私は月明かりの下を歩く事はできないの?」



 答えが返ってくるわけも無く───

 少女は一人ポツリと涙を流す。



「ずっと、ずっと此処を出られないで一人なんだ。・・・・・・きっと閉じ込められたままなんだ」



 涙する少女を月明かりは優しく包み込む。

 柔らかなひかりとなって。


 少女が顔を上げると────


 月明かりは、まるで意思があるように移動する。

 ひかりが移動し、止まったのは、ある場所だった。



「む、無理だよ─────」



 そう。

 そこは玄関なのだ。


『ここを開けて出てごらん』


 ふとそんな声が聞こえた気がした。


 ─────無理と言いながらも、少女の足は一歩、また一歩と踏み出している。



「怖い、怖いよ……………だって外に出ても独りぼっちだもん」



 涙で前が見えなくなっても、足は止まらない。


『大丈夫────扉の鍵は開いてるよ』


 怖くても、勇気を出せば外に出れる。

 そして、景色を見て!

 自分が閉じこもっていた世界がどんなにちっぽけなモノだったかを知って!


 そして…………学んで。


 一人だとしても、貴女を待っている世界がある事を。



 少女はとうとう辿たどりついた。


 ────扉へと。


 そして、ひかりが導き、月が優しく見守る中、鍵を開けた──。



 ガチャリ………



 待っていたのは────


 月明かりが照らす美しい景色。

 オルゴールの音が聴こえてきそうな、月明かりに照らされ輝いている街。


「綺麗・・・・・・」


 呟いた少女は自然と笑顔になる。

 見下ろすと、電灯でんとうが街を夜空に輝く満天の星空のように照らしていた────



「そっか───。大丈夫だね、この景色があれば。このひかりがあれば。

 一人じゃないよね。一人でも、ひかりはいつでも照らしてくれるから」



 そう。

 大丈夫だよ。だから、泣かないで

 星の数ほどこれからは笑って───



 空から見守る月の声が聞こえたように、少女は満面の笑みで上を見上げるのだった。

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