第5話

「うわっ!」


自分の叫び声をきっかけに、俺はようやく身体が動かせるようになった。


そのままドアを開けて、外に飛び出そうとした。


が、席を立つ前になにかが俺の肩を掴んだ。


見れば老婆の右手が俺の肩を掴んでいた。


強い力だ。


それは老婆どころか、人間ではありえないほどに強大なものだった。



連絡が取れなくなった巡査のパトカーが見つかったのは、夜が明けてからのことだった。


周りから孤立した一軒の民家の前である。


そこにもう一台の車があった。


調査の結果、隣町に住む玉木というサラリーマンのものであると判明した。


しかし巡査も玉木も、どこにも見当たらない。


そこで鍵が掛かっていて、訪ねても何の反応も無い民家を強引に調べたところ、中から住人である老婆の遺体が見つかった。


検死の結果、病気とか老衰とか殺害されたとかではなくて、餓死していたことがわかった。


死後三日ほどだと言う。


ただ一つわからないことがあった。


それは餓死したはずの老婆の胃袋の中から、まだ消化されていない大量の生肉が見つかったと言うことだ。



     終

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餓鬼 ツヨシ @kunkunkonkon

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