18.魔女さん、準備を整える
この世界は、数々の魔女たちによって支配された弱肉強食の混沌した大地だった。
魔女たちは、止めどない欲望のままに、人体実験を繰り返し、地を汚染していった。
魔女たちは、各々に特別な力を持ち、時に互いを殺し合いながら生きていた。
魔物を生み、自分たちが危険にさらされてもなお、留まることのない知識欲は新たな実験へと魔女たちを追いやった。
魔女たちが人工的な
そして、勇者を召喚した。
しかし―――。
*
リサは未だに『精霊の依り代』を手にして悩み、唸っていた。
クロが欠伸をしながら呆れた目を向ける。
「もう、寝ろ」
「だって、明日までには武器を準備しないといけないし、せっかく買うなら長持ちするやつにしたいじゃん?」
「......」
クロの注意にそう答え、リサは画面をじっと睨んで固まる。
クロは密かに溜め息を吐いた。
「やっと、決まった!」
リサの眺める画面に浮かぶのは、厳選した武器だった。
『魔力小型銃器』 聖金貨一枚
決められた魔力を込めることによって、魔力弾を作り出し、撃ち込む。弾の種類あり。
『魔剣・
短剣。相手を麻痺させる。
購入スキル『精霊パワー』 聖銀貨一枚
精霊の力を借り、願いを叶えられる
叶えてもらえるかは運次第。
......最後の『精霊パワー』はスキルだが、運次第で強力なものにも弱いものにもなりうる可能性を秘めている。
もっとも、
全財産は、聖金貨三枚に聖銀貨が五枚、金貨が九枚で銀貨が十七枚と銅貨四枚。
アイテムボックスは、銀貨を銅貨に両替えする機能までもっている優れものである。
優秀すぎて可愛げがない。
それ以前に、見た目も無骨すぎて、可愛くない。
『魔力小型銃器』『魔剣・小さき王』『精霊パワー』を購入し、リサはまず『魔力小型銃器』を手に取った。
どうやら、リボルバーのようで手入れをする必要が少ないのは助かる。
『精霊の依り代』を見ると、銃弾の種類がびっしりと並んでいた。
・魔力弾〈火属性〉 聖銀貨一枚
火を纏った銃弾。
・魔力弾〈水属性〉聖銀貨一枚
水を纏った銃弾。
・魔力弾〈風属性〉聖銀貨一枚
凄まじい勢いで飛ぶ銃弾。
・魔力弾〈土属性〉 聖銀貨一枚
撃ち込んだ場所にゴーレムを召喚する
ただし、ゴーレムは一度攻撃を受けるとどんなに弱い攻撃でも死ぬ。どんなに強い攻撃でも一弾につき一回は必ず耐えきる。
・魔力弾〈回復〉 聖金貨一枚
外傷を回復させる
購入するのは、上記の魔力弾に決めた。
どの魔力弾も、一度使うだけでリサの魔力値をがりがり減らす。
リサの総魔力値10,000に対し、属性ものの魔力弾は一弾に50を費やす。
回復ものの魔力弾は、値段がひとつだけ飛び抜けて高いだけあって、消費する魔力値は500だ。属性ものの10倍。
「外傷の怪我を治すのって、やっぱり大事だしね」
自分に無駄遣いではないと言い聞かせ、リサは初級魔法スキルの一覧を見直す。
見直すと、初級魔法スキルのどれよりも、銃弾の殺傷能力が高いということが読み取れた。
この世界でのHPは体力だ。
体力がなくなれば人は死ぬ。
魔力値は命には関係ない。
『魔剣・レグルス』は万が一のときのものなので、柄から慎重に刃を取り出す。
僅かに艶を含んだ刀身は確かに、触れただけで相手を麻痺させるような雰囲気を醸し出していた。
触れないよう細心の注意を払いながら、しまい、視界の隅に追いやる。
残ったのは、『精霊の依り代』の中に追加された『精霊パワー』だけだ。
リサは久々にステータス画面を開いた。
×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+
ハンドルネーム:未設定
実名:花王 理沙(秘匿)
種族:人間
職業:魔女(指定)
レベル10
体力100
魔力10,000
スキル 『魔女の血縁者』 ???型
神々の加護を受けている。この世界において言語翻訳や認識阻害などが可能。日常生活に困らなくなる。
スキル 『使い魔召喚』 職業限定型
使い魔を召喚できる。体力と魔力を大幅に消耗する。契約できるかは本人次第。ただし、一匹目はサービスで無償で契約することができる。体力の消費は召喚する使い魔の力に比例する。
▶︎スキル 『初級魔法スキル』
全初級魔法スキルが使用可能。
▶︎Newスキル『精霊パワー』
運次第によって精霊が力を貸す。
×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+
運任せなわりには、消費する魔力値が多く回復弾をも凌ぐ。
消費魔力値.2000。
準備は整った。後は日が昇り、明日がやってくるのを待つだけだ。
いつの間にか、寝てしまったクロを見てリサは微笑みを浮かべる。
弱々しい、リサらしくない笑みだった。
あらゆることには手を打った。
自分が心配することなんてないはずだ。
なのに、なぜこんなにも嫌な予感がするのだろうか。
カーテン越しに、朝日が昇り始めたのが見えた。
魔女さんともふもふ使い魔 あいねずみ @iruka
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