第4話
「えっと、それはどういう事?」
アグニルの青みがかった綺麗な白髪は、僕の吹き出したジュースによって濡れてしまった。
艶が出ていてまるでお風呂上がりの様になっているアグニルに、すぐに謝り髪をタオルで拭く、アグニルの表情は何故だか気持ちよさそうにしている。
「私は
「でもその少女は人間の筈じゃ?」
「そうですね……私も元々は人間でした、でも気付いたらこんな姿になっちゃってたんですよ」
再び牛乳をガブガブと飲むアグニルの笑顔は、後世にまで伝えられる程の伝説の召喚士には全く見えない。
何かの間違いでは━━、とさえ思える。
「もし本当にそうだとして、何故僕の召喚に応じてくれたの? 他にも
霊力の高さは召喚士によって大きく異なり、高ければ高い程精霊は本来の実力を発揮できる。
逆に低ければ動きは鈍く、本来の実力は発揮できない。
霊力の高さは両親からの遺伝で決まる。
両親も精霊召喚士の場合、子供は親の霊力を引き継ぎ必然的に霊力は高くなる。
だが逆に両親が精霊召喚士でない場合は引き継ぐ霊力が無い為、霊力の低い子供が生まれる。
僕は父親が精霊召喚士だったが、母親は違ったので霊力は半分しか引き継いでいないのであまり高いとは言えない。
なので、アグニルが初代精霊召喚士だったと仮定するなら、僕では役不足ではないか。
「私は主様の想いに感銘を受けました」
「えっ、僕の想いって━━、僕に力をって言葉に?」
アグニルはニコっと笑い、首を横に振る。
「いえ、僕は最強になって彼女が欲しいって言葉にです」
「ブッ!!」
今度は無数の唾をアグニルの顔に飛ばす。
アグニルはため息をつき、呆れた表情をしながら、
「主様は少女に自分の唾液を吹き掛ける趣味をお持ちなのですか?」
「いや、無いんだけど━━、って、精霊の方が召喚士を選べるの?」
「はい、私は精霊召喚士の頃は自分が精霊を選んでる━━、そう思ってたんですがそれは間違いだったんです。召喚士の才能なんて関係なく、召喚士を選んでるのは精霊の方なんです」
この言葉は世界を震撼させるだろう。
ずっと自分の創造や才能の違いで下級精霊、中級精霊、上級精霊と強さの異なる精霊を呼ぶと、世界の誰もが思ってた筈だ。
だが目の前の幼女、アグニルはその根本から壊す発言、精霊が召喚士を選ぶと堂々と言ってのけたのだから。
「精霊は召喚士の想いを受け取って気に入った召喚士を選ぶんです」
「じゃあ……じゃあ僕の想いを聞いて気に入ってくれたの? あんな邪な気持ちの混じった?」
「はい!! あんな大事な場面で彼女が欲しいなんて言う召喚士はいませんから!!」
一瞬だが彼女が欲しいと願った、だがこんな邪な言葉を気に入るとは━━。
「なんか、アグニルって変わってるね」
「私もそう思います……でも皆ありきたりでつまらなかったんです、強くなりたい、力が欲しい、そればっかりでした━━、そんな時、主様の言葉を聞いてこの人なら楽しいかなって思ったんです」
ずっと見つめていたら吸い込まれそうな程真っ直ぐな眼差し。
楽しいか楽しくないか、そんな安易な考えで相棒でありパートナーである召喚士を決めるとは。
「本当に面白いよ、これからよろしくねアグニル!!」
「私こそよろしくお願いします、主様!!」
「まあ、仲良くなれたんだし主様って呼ぶのは辞めてくれないかな? なんだか歯痒いよ」
「あの、これは私が精霊召喚士だった頃に呼ばれてたので……嫌でしょうか?」
僕を見つめるアグニルにこれ以上は何も言えなかった。
「まぁそういうなら……それより何か食べようか? お腹空いちゃったよ」
「はい主様!! 今日は私が料理しますよ」
随分と話に夢中になっていて何も食べてない事に気付いた。
人間だった頃は料理が得意だったらしく、アグニルが手料理を振る舞ってくれる事になった。
身長が足りないのか、キッチンに足が届いていない。
必死に背伸びをする姿は、何時間見ていても飽きないし十分楽しい、僕はアグニルが苦戦してるのを必死に笑いを堪えていた。
そんな僕に気づいたのか、アグニルは頬を膨らまし不機嫌さをアピールしている、仕方なく踏み台を用意してあげた。
アグニルの作った料理を二人は食べ終え、後はお風呂に入って寝るだけだ━━。
「主様!! お背中流しますね!!」
「ちょ、ちょっと待って!?」
アグニルは元人間だと言っていたのだが、少し人間の感性とずれている。
僕がお風呂に入っていたら服を脱ぎだし、風呂場に入って来ようとした。
「私が精霊召喚士の時はいつも精霊が背中を流してくれたので━━」
「いや、いやいやそれとこれとは違うよ!! 僕は男でアグニルは女の子なんだから!!」
「あれ、もしかして主様照れてますか? 初々しいですね」
アグニルはお風呂の扉から顔だけを出しニヤニヤと笑っている。
アグニルを無理矢理追い出し、ゆっくりとお風呂に入る事ができた。
━━だが非現実的な出来事はこれで終わりではなかった。
「アグニル!! 僕は下で寝るからベッドで寝てって言ったじゃないか!?」
「主様に安らぎを与え眠ってもらうのも精霊の勤め」
ベッドをアグニルに、柚木はソファーで寝る事にして電気を消した。
だがアグニルは柚木のソファーの方へ歩み寄り、ノソノソと足の方から潜り込んできた。
そして顔だけをひょこっと出しじーっと僕を見ている。
「せっかくベッドを開けたのに」
「まあまあ……ってあれ? この膨らみは━━」
「━━!! いいから早く寝てくれぇ!!!!」
こうして、長い一日がやっと終わった。
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