読後感爽やか!本好きにオススメな、小学生が見つめた田舎の穏やかな物語

叔母のミサコちゃん曰く、「田舎には二種類あるのよ。使い物になる田舎、使い物にならない田舎」とのこと。
主人公の少女千秋が、そんな叔母含めた家族と暮らしているのは後者の田舎。
今日も手作りの本を並べ、本屋さん(ごっこ)をしていると、
くまの着ぐるみみたいなパーカーを着た「こぐ」という見知らぬ少女に出会います。
また、こぐの母でありミサコちゃんの友人であった「マイちゃん」という女性の名前も出てきたところから、少しずつ物語が動き始めます。

ゆったりと進んでいく、穏やかなお話が読みたい方にオススメです。
ゆったりしているのですがぼやーっとはしておらず、千秋の過ごす日々はとても鮮やかに描かれています。
また、彼女が本を手作りしていることもあって、様々な場面で本がキーワードとして出てきます。
有名な本のタイトルや作者の名前が出てきたり。
懐かしきケータイ小説に触れられたり。
クラスのリーダー格の子がキラキラ可愛い絵本を熱中して作ったり。
家では漫画等が制限されている子が、友達の家でこっそり熱中したり。

小学生のため友達同士、独占欲を向けて拗ねたり喧嘩したりすることもありますが、
それも愛おしく思えてきます。それくらい全員が魅力的なお話でした。

「……千秋って本当に変だよね。こんなのいっぱい作ってさ。それって面白いの?」
「面白いよ。面白くなきゃやんないよ」

そう答えた千秋のまっすぐな言葉が、今も印象に残っています。
読後感も爽やかな、とても素敵な物語でした!