第15.5話 二人の試練

交換研修開始の前日にそれは突然やってきた。

高位精霊師ハイ・エレメントへの試練。

私が試練を受けるのは、まだ大分、先のことだろうと思っていた。


私が召喚できる精霊は、風の精霊のみ。

この丘の様々な精霊とお話はできるのだが、友となった精霊は少ないのだ。

だから、試練を受けれるとは思っていなかった。


私の恩師であり、上司でもあるレイティア様は、火、水、風の精霊と友であり、召喚も無論、行える。

私と同じ高位精霊士ハイ・エレメンタラーでも、3種の精霊とたった1種の精霊を召喚できるのでは、全然、違う。

レイティア様は、この丘の様々な精霊と友となっており、友となった精霊も多い。

この試練を受けるのは、レイティア様だけだと思っていた。


アニスがこの地に召喚し、顕現した「光」「闇」「火」「水」「風」「土」の大精霊を照覧できたことに私達は感動していた。

そして、その後、四大の高位精霊から「高位精霊師ハイ・エレメントへの試練」を私達に課せられたのだ。

私は自信が無い為、試練を断ったのだが、四大の高位精霊達はそれを却下したのだ。


「何故、試練を断れないのですか?」


「これは、精霊姫エレメントプリンセスから願いであり、私達にも貴女には素質があると思います。だから、貴女には試練を試しでいいので、受けて欲しいのです。」


「アニスの願いと私の素質…。」


「シャイン、四大の高位精霊様たちが認めて下さっているのですから、一緒に試練を受けましょう。貴女が受けないのなら、私も試練を受けません。」


「そんな私のせいで、レイティア様が試練を受けないだなんて、そんなことは止めてください。」


「なら、一緒に四大の高位精霊様たちの試練を受けましょう。そして、私達二人で試練を突破するのです。」


「わかりました。高位精霊の試練、受けさせていただきます。」


私は、レイティア様の信頼に応える為、試練を受ける覚悟をし、高位精霊達に答える。


「では、貴女方に我ら四大の高位精霊達が、高位精霊師ハイ・エレメントへの試練を課しましょう。我ら全ての試練に合格した暁には、「四大高位精霊師マスター・ハイ・エレメント」と認め、その証を授けましょう。」


「私達が課す全ての試練をクリア出来ずとも、一つでもクリアすれば、高位精霊師ハイ・エレメントの証を授けますので安心してください。」


火と水の高位精霊が私達に向かって、試練のクリア後の話をする。

そして、風と土の高位精霊が、試練の扉を作り出し、試練に関する説明を始める。


「この扉は、貴女方の資質に見合った試練を課します。僕達にはその内容はわかりません。そして、僕達の力で作ったものなので、僕達以上の力の試練をすることはありません。」


「試練は、この扉を通れば、開始となります。二人が別れて受ける試練もありますし、二人一緒でなければ、受けれない試練もあるでしょう。」


さっきまで、まったく自信の無かった心がどこかにいってしまった感じがする。一つ一つの試練をしっかりと頑張ろうっと。

レイティア様の表情も、いつもと違う真剣な表情に変わっている。


「シャイン、心の準備はいい?」


「はい。準備はできました。アニスがくれた折角の機会を無駄にする訳にはいけませんから。」


二人揃って、扉の前に立つ。


「私達は、お二人が全ての試練を達成することを心より望んでいます。では、心の準備が出来たら、お二人同時に扉を通ってください。」


水の高位精霊が心から応援してくれているのが、私達にも解る。


「行くわよ。シャイン。」


「はい。参りましょう。」


扉を二人同時で通る。

すると、別の空間に飛ばされた感覚が走り、目の前に懐かしい感じのする巨大な森林が目に入り、力強い風が吹いている。

隣りにいたレイティア様の姿は無く、他の場所に飛ばされたみたい。

空から、声が聞こえてくる。


「ここは、風の試練。別れし二人が再び、出会えた時、この試練を達成した時、新たなる扉が現れるでしょう。」


力強い風が吹いているが、精霊の気配が全くない。

とりあえず、森の中へと入るが、この巨大な森林の中にも精霊の気配が全くしない。

闇雲に歩けば、この森林をただ彷徨い歩くことになるだろう。


「風の精霊よ。我が声に応え、我が前に顕現したまえ。」


風の精霊召喚術を試しに行う。

すると、とても仲の良い風の精霊が一体、顕現する。


「やぁ、シャイン。こんにちわ。珍しいね、呼び出すなんて。」


「うん、ここは全く精霊の気配が無いから、召喚したのよ。」


「言われてみれば、そうだね。これだけの森なのに精霊の気配が全くしないね。ここはどこなの?」


「えーっと、高位精霊の風の試練場みたい。」


「え!今、なんて言ったの?」


「だから、高位精霊の風の試練場…。」


「僕、そんな所に来てるの。やっぱり、シャインは凄い子だね。うんうん。」


召喚した風の精霊が私を嬉しそうに褒めてくれてる。

何が何だか解らない私に説明してくれる。


「シャイン、ここが風の試練であるのならば、僕を呼び出すということは正解だよ。あとは、試練で言われた言葉を思い出してみて。」


「別れし二人が再び出会えた時にクリアってことだから、レイティア様もこの森の何処かにいるはずよね。だから、探してくれる。」


「僕にお任せあれ。これだけの強い風が吹いているから、この森の中でも見つけるのは容易いけど…。」


「けど? まぁ、でも、レイティア様探し、宜しくね。」


「もう向こうの方は、探し始めてるみたいだね。すぐに会えると思うんだけど…。」


確かにもう一体、風の精霊の気配を感じる。つまり、レイティア様が召喚したということだから、気配の方向に行けば会えるはず。


「さて、僕も探すけど、ここからがホントの試練だから、気をつけてね。」


風の精霊がそう言うと、一気に精霊の気配が現れる。私と最初に感じた精霊に似た感じの気配が森の中に充満している。


「なるほど、これが本番と言うことなのね。でも、大丈夫、目的の気配はもうわかってるから、私に力を貸して。」


「さすが、シャインだね。では、行くよ。」


すごい似た感じの気配が森の中に充満しているけど、もうわかっているから、目的の方向へ召喚した風の精霊を身に纏って、進んでいく。

向こうからも、同様に風の精霊を纏った方が、こちらの方に向かってくるのがわかる。

徐々にお互いの距離が近づくにつれ、風の精霊との感覚が鋭くなってく感じがする。


「レイティア様、ようやく見つけました。」


「シャイン!よく風の精霊を召喚できたわね。会えてよかったわ。」


「え!普通に風の精霊召喚を行っただけですけど。」


「ここは特殊空間だし、精霊の気配すら無かったでしょ。だから、精霊召喚するのは、とても難しいのよ。特に風の精霊を呼び出し難くなっているの。気付かなかったの?」


「全然、気づきませんでした。だから、召喚んた精霊が驚いて褒めてくれてたのね…。」


「そうよ。シャインたら、私の話を聞かないんだもん。別に呼び出した精霊に試練のことを聞いてはいけないということは無いのよ。まぁ、試練の内容に関して、知ってるいかどうかは別問題だけどね。」


「いつものシャインらしいわ。次の試練からは、もう少し注意深く状況判断と精霊に話を聞くのよ。いい、わかった?」


「はい。レイティア様、次の試練から気をつけます。」


「でも、これで風の試練は、達成できたみたいね。次の試練への扉が現れてるわ。」


レイティア様と私と出会った大樹に次の試練への扉が現れている。

空からまたしても声が聞こえてくる。


「風の試練は終了です。新たな試練の扉は現れました。次なる試練へと向かうといいでしょう。」


「では、僕達はこれで帰るね。次の試練も頑張って。応援してるよ。」


そう言うと私とレイティア様が召喚した風の精霊は、精霊界に帰っていた。

私達は、現われた次の試練への扉の前に立つ。


「準備はいい。次はもっと慎重にね。」


「はい。レイティア様。」


そして、次の試練の扉を開き、通るとまた別空間に飛ばされた感覚に陥る。

目の前には、大きな湖が広がっている。


「ここは水の試練。汝ら、深き水の底に眠りし、永久の神殿へと来たれ。」


空から声が聞こえ、試練が告げられる。

つまり、湖の底にある神殿に行けば良いってことなのかしら。

レイティア様、周囲の状況を観察している。

そうだ、これは私の試練でもあるのだから、私も周囲の状況把握をしないと。


うーん、ここは精霊が普通に居るのね。でも、この精霊の気配はさっきの大森林に現れた精霊と一緒ね。

周囲は木々に囲まれてるから、もしかしたら先程の大森林の中にある湖かもしれない。

湖は、エルフとして見る限り、底が全く見えないから、かなりの深さがありそうね。

湖の底まで行くとしたら、水の精霊に力を借りて、ここを潜っていくしかないみたい。

そうだ、精霊がいるなら底に神殿があるか、確認しないと。

水の精霊に訊ねてみると、湖の底には神殿があるとのこと。


「レイティア様、ここは先程の大森林の中にある湖みたいですね。湖は、見る限りでは、かなりの深さがあるようです。」


「そうね、シャイン。先程の森の中みたいね。精霊の気配が同じだし、湖も確かに見る限りでかなりの深さがあるわね。それで、どうしたらいいと思う?」


「そうですね。水の精霊の力を借りて、底まで潜って行くのが良いかと思います。水の精霊に訊ねてみた所、湖の底に神殿があるとのことですし。」


「湖の精霊に聞いたところ、水底には神殿があるとのことで行くには、確かに水の精霊の力を借りて、湖を潜っていくしか方法は無いみたいですね。」


「では、レイティア様、水の精霊の力を借りて、水底まで行きましょう。」


「深さを考えると二人の力を合わせて、水の精霊に力を借りて水底まで行くのが良いと思うんだけど。」


「確かに私の力だけでは、きっと水底までは到達できないと思います。なので、レイティア様の御力をお貸しください。」


「えぇ、私も同意見よ。シャイン、貴女の力を貸してね。水の精霊よ。我らを水底まで導く力を貸し与え賜え。」


レイティア様が、水の精霊に私達を湖の底へ向かう力を願う。

すると、私達の周囲を巨大な泡で包み込み、湖の底へと向かって潜っていく。

深くになるにつれ、精霊の泡が形状を保つことが難しくなり始め、私達の精霊力を使って泡を保持しながら、水底を目指す。

きっと私だけだったら、湖の深さの半分程度で精霊の泡が弾けてしまっていたと思う。

レイティア様の力と私の力を併せて、そして、水の精霊と力を併すことも出来たから、水底の湖底神殿まで辿り着くことが出来ました。

湖底神殿の入り口に辿り着くと、自然と泡が消失する。

神殿周囲には、特殊な結界が張られているようで、空気で満たされており、普通に呼吸ができる。


「シャイン、やったわね。無事、辿り着けたわ。」


「はい。レイティア様の御力があったからこそです。ありがとうございます。」


「そんなことないわ。貴女の制御のお陰よ。私はそれに殆んどの力を保持に使っていたのだから。お礼を言うのは私の方なのよ。」


「でも、お互いに力を併せられたから、ここまで来れたんです。」


「よくぞ、力を併せ、ここまで来た。さぁ、神殿の中に入るとよい。」


結界内にここの試練を伝えてきた声と同じ声が私達の心に響き渡る。

私達は、神殿の中に入り、神殿の中央まで進むと水の大精霊像があり、精霊像を中心として小さな庭園が拡がっていた。

水中庭園と呼ぶのか水上庭園と呼べばいいのか、不思議な庭園が目の前に拡がっている。


「これで水の試練は終了である。次の試練へと向かうがよい。」


不思議な水の庭園の入り口に次の試練への扉が現れる。

私達は、扉を開き、次の試練へと向かう。

扉を抜けると、岩だらけの荒野が拡がっている。


「ここは土の試練だよ。ここに見える庭園を整えれば、試練は終了だよ。それでは頑張ってね。」


空から試練の内容が伝えられる。


普通に周囲を見渡しても、庭園と呼べるような風景は全く見えない。

見えるのは、岩だらけの荒野のみ。


「レイティア様、この試練は一体?」


「うーん、私にも正直、わからないわ。普通に見ても、岩と荒野と呼べる大地が拡がってるだけですもの。」


「とりあえず、様々な精霊がいますから、二手に別れて、聴き込みをしてみましょう。」


「そうね。まずは、精霊にいろいろと聴いてみましょう。そうすれば、きっと答えに繋がるはず。」


私達は、二手に別れて、この地に住む精霊に聴き込みを開始する。


「おーい、風の精霊さん、ここの庭園ってどんな庭園なの?」


「うん? 見て解らないのかい? ここは、この風景がそのまま庭園なのさ。でも、以前に比べると荒れてるから、整備しないとダメだと思う。整備するならお手伝いするから、また声かけてね。」


この風景が庭園? うーん、まだ、よくわからないから、今度は土の精霊に聞いてみようっと。


「土の精霊さん、この庭園に関して、教えてくれませんか?」


「おっ、見かけないエルフのお嬢さんだね。ここの庭園は、普通に見るだけじゃ、よくわからないだろう。」


「えぇ、その通りなんです。正直、岩と荒野にしか見えないんです。」


「エルフにしては、正直者じゃな。高慢さの欠片も見られんから、他の精霊からも慕われてそうだのう。」


「私は、その高慢さというのが嫌いなんです。種族や寿命が違うだけであって、他は、何も変わらないじゃないですか。」


「うんうん。面白い子じゃな。ここの庭園は、自然を肌で感じられる庭園にしてくれれば、いいんじゃよ。今は荒野が拡がってるじゃろ。」


「確かに岩の位置やこの荒れ果てた草原を綺麗にすれば、庭園に見える気がします。」


「手伝いが必要なら、また声を掛けておくれ。喜んでお手伝いするぞ。」


「ありがとう。また、声を掛けると思うので、宜しくお願いしますね。」


そうか、自然そのままが庭園なのか、見栄えを変えれば、確かに庭園の風景に変わるわね。

よし、レイティア様に声を掛けて、ここの整備をしていこう。

丁度、反対側からレイティア様が戻って来られたけど、いい情報が得られなかった様子。


「シャイン、何かわかった?」


「はい。この風景、この自然がそのままの庭園なんだそうです。」


「やっぱり、そういう答えなのよね。いろいろな精霊に聴いても同じ答えが返って来たわ。でも、私にはどうしても荒野にしか見えないのよ。」


「この荒野を整備して、あの荒れた草原や反対側の岩肌や岩の位置とかを変えると風景が変わって見えますよ。」


「うーん、そうね。そう言われてみると、荒れ地や岩の位置とかを変えると風景がかなり変わるわね。」


「では、いろいろな精霊さんにお願いして、ここの整備に入りましょう。」


「そうね。とりあえず、今回、私は完全にサポートに廻らせて貰うわ。風景は見えたけど、構図はシャインの方がしっかりできてそうだから。」


「わかりました。では、私が指示を出しますし、精霊の声を聴きながら、上手く整備していきましょう。」


「えぇ、精霊の声を聴きながら、整備していくわ。しかし、何か初心に戻った感じで楽しいわね。」


「そうですね。でも、まさか、私がレイティア様を指示するなんて、思っても無かったですけど…。」


「私は、こういう日がいつか来ると思ってたわよ。さぁ、お喋りはこの辺にして整備に入りましょう。」


「はい。わかりました。では、あそこの荒れ地から整備していきましょう。」


こうして、いろいろな精霊に以前の風景を聴きながら、整備を行っていく。

すると目の前に拡がっていた単なる荒野が変わっていく。

荒れ果てていた風景が、精霊の力を借りて整備することで、自然が見えてくる美しい風景に変わっていく。


「ほほう。これは以前よりも綺麗な庭園に変化したのう。強風や降雹で荒れた岩肌も綺麗になったのう。荒れ果てた草原も良い具合になっておる。」


「そうだね。以前よりもすごく綺麗な庭園に戻ったね。ここの手入れを誰もしてくれてなかったからね。僕らがやると喧嘩になっちゃうからね。」


先程、聞き込みをした風と土の精霊が話している。


「エルフのお嬢さん方、本当にありがとうよ。わしらでやると喧嘩になって余計に荒れてしまうから、本当に助かったよ。」


「うんうん、エルフのお姉さん達のお陰で、とても綺麗になったよ。ありがとうね。」


「私達は、聴いた通りに整備をしただけだから、何もお礼を言われることはしてないわ。これも試練の一つだったと思うし。」


「そうです。私は、この子や精霊様達の言われた通り整備しただけですから。」


風と土の精霊にお礼を言われたけど、精霊の声を聴いて、整備を行っただけだし、お礼を言うのは私達の方なのよね。


「こちらこそ、お礼を言いたいです。こんな綺麗な自然庭園に整備させて頂けて、ありがとうございます。」


「本当に私もこんなに綺麗な庭園だったとは、全く思わなかったので、本当にありがとうございます。」


私達は、手伝ってくれた精霊達にお礼を言うと、声が聞こえてるくる。


「すごく素敵な庭園に変わったね。精霊達も喧嘩せずに上手く手伝ってくれたようだね。土の試練は終了。では、最後の試練へいってらしゃーい。」


そうすると目の前に最後の試練への扉が現れる。

私達は、最後に試練に向かう。

最後は、火の試練。一体、どんな試練なのだろうかと考えつつ、扉を通ると目の前に四大の高位精霊達が顕現されている。


「よく、ここまで来ました。最後の火の試練は、私達全員と友となることです。」


「最後の試練が、今まで一番、簡単そうで難しいですね。」


「まず、どうすれば、私達を友と認めるのかを知ることからかしら?」


「レイティア様、今までの試練を思い出して考えてみましょう。」


「そうね、シャイン、お互いにここまで力を併せてやってきたのだから、思い出して考えてみましょう。きっと、答えが見つかるはずです。」


私達は、今までの試練を思い出してみる。


風の試練は、精霊の召喚する力と精霊の気配を読み取る力の試練。

水の試練は、精霊を保持する力と精霊を援護する力の試練。

土の試練は、精霊を指示する力と精霊から支持される力の試練。


3つの試練は、私達自身の総合精霊力を試す試練だったのだと思う。


私達は、それぞれにお互いの力を併せて、ここまでやってきたことを思い出す。

だから、最後もレイティア様と全員で友となりたいと思った。

レイティア様も考えてることは同じだった様子。


「「四大の高位精霊様たちにお願いします。私達と友達になって頂けませんか?」」


「それが貴女達が出した答えですか?」


「「はい。」」


「いい返事ですね。貴女方は師弟でありながらも、お互いの力を認め合い、補い合ってました。今までの試練を通して、精霊力も見せて戴きました。そして、全ての試練を達成し、ここまでやって来られましたね。最後の答えも二人で同じことを考えていたようですね。」


「はい。私もシャインも同じことを考えていたようです。」


「レイティア様と私では、精霊力の差があると思い込んでいました。でも、お互いの力を補うことで様々な試練を達成できました。だから、最後は単純に高位精霊様達と一緒に友になりたいと思ったんです。」


「さすがアニス様が認められた方々ですね。私達、四大の高位精霊は、貴女方の友となりましょう。そして、貴女方二人に四大高位精霊師マスター・ハイ・エレメントの名を授けます。」


「「ありがとうございます。」」


私が四大高位精霊師マスター・ハイ・エレメントになれたのは、周囲の精霊達やアニスの信頼、レイティア様の御力のお陰。

私一人だったら、決してなれなかったと思う。


「シャイン、今、貴女、私一人だったら、決してなれなかったって思ったでしょ。」


「えっ、心をお読みになったのですか?」


「いいえ。私も同じことを考えていたのよ。確かに私の方が精霊力は高かったと思うけど、貴女には私に無い力で支えてくれたじゃない。土の試練を思い出して、貴女は私に足りないものを補ってくれたのよ。水の試練では、その逆だったけれどね。だから私達は二人でなければ、決してなることは出来なかったのよ。」


「レイティア様、私にはその言葉だけで、とてもありがたいです。」


「シャイン、本当にありがとう。貴女のお陰よ。」


「いえ、レイティア様のお陰です。こちらこそ、ありがとうございます。」


「貴女方は、これからも変わらず、良い関係を築いてくださいね。私達も友として、皆で支えていきますので。」


火の高位精霊が代表して話される。

こうして、私達に課された高位精霊の試練が終わりました。

無事、証と新たなる友を得ることができ、明日からの交換研修において、アニスの補佐にも自信がついたのでした。

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