第23話「今日もまた出かける」

 ―――竜胆白は手を繋ぐ―――


 王城を出た俺は、早々にエミリーと合流した。


 この情報はあくまで俺の感覚によるものだが、俺自身は体感身長約170cm。俺とエミリーの身長差は10cm程だろうか。


 前髪の部位からは白地に青系色トーンオントーンチェックのカチューシャ風に巻かれたリボンが見え、ブロンドの髪は鎖骨の辺りまでまっすぐに伸びている。


 今日のトップスは胸元が開いた水色のタンクトップの上には大きく襟口の開いたピンクのTシャツを着ている。

 そしてボトムスは群青色のショートパンツに黒のニーハイソックス、黒いスニーカー。

 元の世界で例えると一番近いのはそんな格好だろう。


 勿論俺は今、エミリーをまじまじと眺めている訳だが、青い目でこちらを見ながらニコニコ微笑んでいて、嫌そうにする様子はない。


「ねぇ今私見てたでしょ。どうしたの見惚れてたの、それともなにか想像してたの。」

 嬉しそうな顔でそんな事を言うエミリー。

 この娘は全くもう。


「可愛いな...。」とだけ呟いてみる。

 勿論今回も悪戯な訳だが、俺もエミリーの事を微塵も可愛くないとは思っていない。


「また、また私のこと可愛いって言ってくれた。嬉しいなぁ。」

 それで更に機嫌が良くなっている。

 単純でわかり易いな。


「えっと、じゃあそろそろ街を散策しに行こうか。」

 これ以上可愛いと言ったことについてしつこく問われると困る。その為俺はすぐに本題へ移るのだった。


「えぇ、可愛いって言ってくれた話はもう終わり。それともハク、もしかして照れ隠ししてるの。」


 それは断じてない。別に可愛いと言ったところで、照れる事はない。


「そんな事言うんだったら、もう言わないでおこうかな。」


 可愛いと言えば嬉しがる訳だ。想像かそれ以上の落ち込みを見せるはず。


「えっと、じゃあそろそろ街を散策しに行こっか。」

 予想とは違い薄い反応。まぁいいか、確かにもうそろそろ動き出したいとは思っていたし。


 エミリーはさっき俺が言ったことをそのまま返したのだが、全く覚えていなかった。自分が何気なく言ったことを一々覚えてはおけない。しかし、その一言が重大な事になる事もある。


 歩き出した俺に、エミリーは直ぐに気づき駆け寄ってくる。そして、そのまま耳元で囁く。


「今日は、もうどこにも行ったらダメだよ。行かせない。だから、ね。」

 そしてエミリーは俺の右腕を掴み、その後腕を組んできた。しかし、流石にこれでは暑苦しい。


「ダメだよ。」

 それと共に俺の左の手を使いエミリーの左腕を剥がす。勿論エミリーはとても悲しんだ顔をしていたのだが、剥がした左手を下ろしその手のひらを俺の右手のひらで握る。


「別にまぁ、これなら。」

 そう言った俺の、右手とエミリーの左手は指と指で結ばれていたのだった。

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