第22話「楓の目的」

 ―――竜胆白を監視する―――


 楓は驚愕していた。竜胆白は彼自身が壊滅させたデッドビートに潜入したと言うのだから。

「なぜ、その組織に潜入する事にしたのかな。」



 ブートンを倒したのだから、竜胆白はデッドビートを完全に解散させられた筈だろうに何故そんな事をしたのだろう。

「簡単な話、あぁいう連中はいくら潰して行った所でまた再結成されて他の組織として集結する。ならば今ある組織を潰すのではなくて、それを監視する方が良いと思ったんだ。」


 確かに竜胆白の言ってる事には同意ができた。

「確かにそれはそうだ。」

 その言葉を聞いてから、竜胆白は更に話し続けた。


「さて、向こうには王族関係者の裏切り元して潜入している。誰かがこちらに密告するかも知れない。だから楓が俺をデッドビートに派遣したと言うことにしていて欲しい。そうじゃないと面倒なことになりそうなんだ。」


 竜胆白は敵対者では無さそうな気がする。確かに見た目と中身は合致していないが、敵対するような様子はない。

 もし、敵対したとしても焔架連は僕に味方をするだろう。

 それよりも、確認したい事はこの竜胆白がであるかが重要なんだ。


「そうだね、君の働きかけでこの国が少しでも平和になる事を望んでいるよ。」

 敵でないならそれは叶うはずだし、これは彼の様子を結果としてみる機会かも知れない。

「言いたい事はそれだけだから、俺はもう帰るよ。」

 竜胆白はそう言って出口に向かい歩き出す。


「わかった。次回はあの続きからだから、またいつでも来てくれればいいよ。」

 楓は笑顔で手を振り竜胆白を送り出した。

 竜胆白を追いかけたい気持ちもあるが、アリア姫を置いていく訳にはいかない。

 アリア姫が逃げ出した事で恐らく僕は少し以上に信用が失われた事だろう。更に信用を失う訳にはいかない。


 とりあえず竜胆白の事は味方だと信じよう。

 楓はそして、すぐ後ろの扉を再び開く。

「さて、アリア姫。これから僕達もやらなければならない事があるよ。一応少し時間があるから一度部屋まで戻ろう。」


 アリアは少し寂しそうな顔をしていた。

 それは、竜胆白が扉の傍にはおらず、もう既に出口の方へと歩いて行っていたからだった。

「あのっ」

 そこまで叫びかけてから、アリアは話すのを辞めた。


 予定があると言っていた人間を引き止めるのはいけないと思ったから。アリアはそう思っていた。

「彼はまたきっと来られますよ。その続きはまた次にという事で、僕達はもう部屋へと向かいましょう。」


 楓の目的、竜胆白が敵対の調査、竜胆白の魔法適性の調査。この二つであった。

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