第13話「目の前の悪」

 ―――竜胆白は表の悪を提示する―――


 普通の人間ならば、もし悪い人間が祭りの夜に出歩いた姫を誘拐する事を知ればどんな行動を取るだろう。その答えは、城にその事実を伝え、姫が捕まらないように監視を付けてもらう等の策が普通の善人が行う事だろう。


 姫の部屋に侵入し、護ってやる等と提案するのは、姫を護る意味では最善策ではない。なぜなら外に出せば狙われる事は分かっている訳だから。

 まず初めに竜胆白は善人ではない。

「楓さんはお姫様を連れて王城へ戻って。俺は俺でまだやる事があるから。ちょっと悪党を懲らしめてくる。」


 その言葉を聞いて、楓は俺に一つ教えてくれた。

「君の役に立つかは分からないが、斬ってしまったお詫びに対集団用の魔法を教える。僕らの歴史を疲れた君なら僕の固有魔法も使えるかも知れないし。焔の鎧、身の回りに炎の壁を纏うイメージをする。なるべく高温の炎を想像する。炎魔法の特徴は火には火をだ。自分の出す炎の温度は熱いと感じないし、自分の炎より弱い炎を取り込める。温度が高ければ水も蒸発させられる。」


 集団を相手に範囲攻撃は確かに有効的だ。

 奴らのアジトの場所は割れている。後は、アジトに乗り込んで奴らを制圧し、そして乗っ取る事が目的。


 思念体を飛ばし、アジトの広間に転移魔法で転移する。

「さて、よくもお姫様を誘拐してくれたな。お前達の組織を解体しに来た。これはただの口実だ。お前らのトップを出せ。」


 奴らがそれに応じる訳はない。

「てめぇいきなり現れて何ぬかすんだ。全員一気にかかれ、侵入者をぶっ倒すぞ。」

 読み通り、奴らは全員で飛びかかってきた。ここで焔の鎧を使うべきだろう。


 発動した焔の鎧は有効に作用した。発動の爆風で近くまで来ていた敵は吹き飛び、その後はこの中に近づく事が出来なくなっていた。

「お前は、俺達のアジトで何をしている。」

 一人だけ他の者とは違う存在感を放つ男がいた。


 恐らくこの男がこの組織のボスだろう。

「まあぁさか姫を檻から出したのはてめえぇか。まさかでもなあぁい、てめえぇだな。折角の作戦が台無しじゃあないか。」


 逆に言えば俺の計画も少しお前に歪められた訳だから、お互い様だろう。しかし、俺の方は逆に良い方向に進んでいるわけだが。

「さて、組織の一番偉い奴に用があってきた。」


 案の定いかにもらしいアイツがボスであった。

「まあぁ、おぉ俺様が一番偉い。こいつらのボスだが、てめぇ何のようでここに来た。」

「簡単だお前を倒して次のボスになりに来た。」


 そして戦いが始まる。

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