第12話「語るに落ちる」

 ―――竜胆白は奪い取る―――


 楓の二撃目の攻撃を竜胆白は交わしきった。そして、楓はその時、ありえるはずがない物を見てしまう。そして、今までになかった程動揺する。

「待て、君は今どうやって僕の攻撃を交わしたんだ。ありえるはずがない。」


 楓には信じられなかった。しかし、竜胆白は容赦なく話し出す。

「信じられないも何も、俺が選ばれし者だったって事になるね。正直、もしここで成功しなければ死ぬんだろうなって覚悟だったよ。けど、発動出来たって事は俺はここで死ぬ訳にはいかない。」


 俺は、楓が飛んできた時に、「赤の聖剣よ来たれ。」そう右腕を前に出して詠唱した。

 そうすると、俺の伸ばした右腕の掌の前には赤の聖剣、炎刀焔架連が出現していた。


 それを握れば後は、楓が言っていた様に、自動的に身体が動き、楓の攻撃を否して、交わしきっていた。

「どうして、僕達の歴史が、僕達の歩みが君に使える。まさか白の、いや、ありえるはずがない。」


 楓から笑顔が、余裕が消える。そして、今まで赤の伝承の事も、赤の聖剣の事も知らなかった者が、気軽に聖剣を手にして、今まで伝承してきた楓に向けて振るっていたのが許せなかった。


 もはや、騒ぎを隠す気もなったのだろう。凄まじい形相でこちらへ怒りを向けて何度も突撃に突撃を繰り返す。

 それを俺は自動的に対処し、反撃もするが、その反撃を相手は自動的に対処する。

 そんな無駄なやり取りが延々と続いていた。


 その戦いは、この祭りの日の何よりも皆の印象に残ったらしく次の日から皆が皆その話題を話していた。

 そして、楓の実力を示す機会となり、相手の俺ごと楓の戦闘力が公に晒された。


 これは弱い悪の抑止力になるが、強い悪には良い情報を与えた事になる。

「楓、もう辞めてください。」

 姫が俺を庇い、前に出た。ちょっと待って、あの聖剣の一太刀を交わせるわけがない。


 もう止まれないであろう楓を見越し、俺が姫の前に出た。が、しかし、タイミングが遅れ、楓の刃を受けきれなかった俺の手から聖剣は離れ、俺の右腕にその剣の一太刀は落ちて来る。勢いはほとんど総裁したが、こんなに斬れ味の良い聖剣に当たれば腕が最悪落ちる。だが現実は残酷で、俺の腕に聖剣は刺さった。腕はおちなかったが、腕の感覚が完全に消滅し、痛みが走る。


 楓はそこで冷静になり、聖剣の発動を辞める。

「楓、私を助けてくれた人になんて事をするの。」

 姫は冷たくそう述べる。そして、歌い出す。


 黄色の姫の歌は魔力がある魔歌である。癒しの力は癒しの歌を歌えば発動する。その癒しの歌は無尽蔵の効果範囲で、例えば戦場で、負傷した兵に聞かせれば、聞いた者全員の怪我を治すらしい。


 俺は姫に救われた。

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