4回表「一流の戦い方」

 キャンプでさっそく俺は試された。


 相手はゴブリンである。大きさはオークと同じくらいだが、動きが早く、持っている武器を投げたりもしてくる。

 またあまり単独では動かず、3人くらいの集団でまとまってることが多い。

 しっかり戦えば、まず負けないが、油断してればこちらも死ぬ。

 前のチームではまず執拗なまでにオークを狙ったので、正直ゴブリンですら戦うのは怖い。


 まず、1番イースナーがシールドを構えながら、ゴブリンに突進する。気づいたゴブリンは、それをよけようとして、体勢を崩した。

 そのすきを見て、まってましたとばかりに、俺は振りかぶって、火球ストレートをなげ、ゴブリンの顔面に命中させた。

 顔面が火に覆われて、冷静さを失い、ゴブリンは暴れまわる。


 間髪を入れずに、ナチョレック勇者が、風のようにというよりは文字通り風をまとって高速で、ゴブリンに接近して、その心臓を一突きにした。


 ぐだっとゴブリンは倒れこんだ。


 クロマテ勇者もとどめを刺す態勢に入っていたが、それはしなかった。

 流れるような連係プレイだった。


「ま、たまには3番にセーブを譲らんとな。」

 クロマテはそういった。


「いいんですか、そんなこと言ってたら、全部セーブもらっちゃいますよ。」

 とナチョレック勇者は返す。


「そりゃあ、仕事が楽でいいわ。それはそうと、バリントン、見事だったが少しいただけないな。」


 おれは突然名前を呼ばれドキッとした。あれ、なんか悪いことしたっけ。


「なぜ2球めの準備をしなかった。そんなに自信があるのか。」

 

 た、たしかに一球目を当てたまま、しばらくどや顔してるだけだったが…。


「おれらは、のチームとちがってオーク一点を狙ったりしない、敵が複数のことも多い。だから必ず2撃目の準備はしてるし、周囲の警戒も全員が怠らない。」

 クロマテ口調は厳しい口調で、俺に伝えた。これが一流のプロの戦い方だと言わんばかりに…。


「‥‥‥‥…死ぬわよ…。」

 無口なアオイ勇者が、それだけを言った。


 たぶん、「そんな戦い方と覚悟だといつか」っていうのが、その前につくんだろうな。


 正直今までのチームでは俺が一番の使い手だという自負があった。しかし、キャンプ初日でその甘さを痛感させられてしまったようだ。


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