後編

 誰にも顧みられなくなった花壇。

 今はただの枯れた花のゴミ捨て場。

 角川園長がしたことは誰の目にも明らかな失敗でした。

 ヘラジカちゃん達はボランティアでしたようなものですから、たとえ失敗していたとしても、責任は誰にもありません。

 けれど新しい花壇はお金も人も大勢関わりました。

 誰かが責任を取らないといけません。

 それが大人の世界です。

 本来なら角川園長が責任を取るべきです。

 むしろそれ以外、責任を取るべき人はいません。

 しかし、角川園長は絶対に自分の失敗を認めようとしませんでした。

 そんなとき、角川園長の目に枯れた花壇を悲しそうに見ていたヘラジカちゃんの姿が映りました。

 角川園長はシメシメ、と思いました。

 次の日角川園長は、大勢の人の前でこう説明しました。

「元々、花壇は自分が作ろうと考えていた。けれど、どうしてもヘラジカが作ると言い出したので、仕方なく許可してやった。だが、ヘラジカが勝手にパークの植物を植え替え、しかも飽きたから止めると言いだしたので、代わりに私が正当な手続きで引き継いでやった。だから私は悪くない」と――。

 ヘラジカちゃんはビックリしました。

 けれど、ヘラジカちゃんを責める者は誰もいません。

 ヘラジカちゃんの協力して花壇作りを手伝ったスタッフは、それが嘘であることを全員理解していました。

 フレンズ達も、花壇を作っている間、一切文句を言われなかったことぐらい覚えています。

 お客さんも、スタッフ達からこの花壇ができた経緯はしっかりと聞いていました。

 皆この花壇を大事にしていて、どんな人間がどのように関わっているのか既に知っていたのです。

 全員が白い目で見ているというのに、ずっと言い訳をまくし立てる角川園長。

 自分がどれだけ滑稽なことを言っているのか、角川園長だけが分かりません。

 角川園長はこう言っておけば全て責任をなすりつけられて、上手くいくと思っていました。

 言えば言うほど、人もフレンズも呆れて離れていきます。

 やがて台上で熱弁する角川園長だけを残して広場には誰もいなくなり、セルリアンだけが闊歩する場所になりました。

                                  (了)

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枯れた花壇 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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