第10話 人事権はどこにもない!


 基本、地上の者たちは天界や冥界に関わることはできない。例外として、妖精による「とりかえっ子」だ。

 地球のとりかえっ子伝説は、妖精が人間の赤子と妖精の赤子を入れ替えるが、ヘブンズは違う。妖精がとりかえるのは地上と天界、もしくは冥界に産まれる予定の赤子だ。

 とりかえられた子供は、生まれながらにして地上以外から神託を受け取れる。そのため重宝がられ、神殿や王侯貴族に手厚く保護される。そして、魔力も高く寿命も長いことから、魔術師として大成することもある。

 それ以外で、関わることが出来ないため、天界人事に口出しは出来ない。

「あれ? 稔憲はしょっちゅう……」

「私は例外中の例外だな。伊達に千年も生きていないということだよ。そんな私でも人事には口出しできない」

 そう言って言葉を濁す。


「……あっそ。ま、出来ないなら仕方ねぇな」

 そのまま台所に向かう隆文に、稔憲はついていく。まず最初に魔石に魔力を通しておかないと、隆文は使えないのだ。

「はい、これで一週間くらいは使えるはずだ」

「サンキュ。で、今日の飯は何がいい?」

「こちらの芋を使ったニョッキかな。インベントリ用に弁当をそれなりに。おにぎり弁当とサンドイッチ弁当は同数で」

「ん。だとフル回転だ。フラウさんのところから何人か手伝い頼んでもらえる?」

「フラウが喜ぶね」

 手伝えば、隆文作のご飯が食べられる。これはご褒美以外何ものでもない。



 料理の指示をする隆文を眺めつつ、稔憲は天界・冥界から渡された羊皮紙に目を通していく。

 召喚されたという地球人をどのように助けるか。あまり酷い場合にはいっそのこと冥界の炎で焼いてもらおうか、そんなことを考えていた。

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