魔法『少女』だったけど・・・・・・

 静かになったバー。すでにマスターは閉店作業を始めてしまっていた。

 みくりと真弓が途中で寝てしまい、すっかり酔いも覚めたあたしと優香はグラスを手の上で遊ばせながら沈黙していた。


 結局、優香の成長が止まらなければ今頃あたしは永遠の二番手だったと思う。消滅魔法なんて力は、いくらでも対処が出来ると教えてもらったのだから。

 いや、もし佳珠が生きていれば……。


「たまにはいいもんだねぇあかりん? 感傷に浸るってのはさ」


 そう語る優香の顔は、妹を失って壊れてしまう前の表情によく似ていた。それが、あたしには何より嬉しかったんだ。

 彼女はもう受け入れているのかもしれない。妹が戻ってこない現実を。自身に無理矢理佳珠を重ねることで保っていた精神が、何らかのきっかけで少しずつ癒されているのだろう。


「……なんかさ、墓参りでもしたい気分だわ」

「ボクもそんな気分だね〜」

「佳珠に愛達のこと話したのか?」

「いんやまだしてないよ? した途端戦死されても寝覚めが悪くて仕方ないだろ? でもそろそろいいかもね及第点としてね大負けに負けてね?」

「甘くなったよなお前」

「歳だって言いたいのか子持ち魔法少女くん?」

「っ!? あんだとこの野郎!!」


 この後、眠たげな姉妹を起こして昔の仲間に会いに山を登った。本当に久しぶりでまだ墓があるのかも不安だったけど、そこは優香がちゃんと手入れをしていたらしく、当時より何だか豪勢な墓石が立っていて笑った。


 四人で手を合わせる。七海も失って、あの時には想像も出来ないほど悲惨な現実を迎えてしまったけど、佳珠ならたぶん、こんな世界でも愛してしまうのだろう。

 横で楽しそうに後輩組の話をする優香を眺めているとヒシヒシと感じる。あたし達は前を走る先輩になり、それを追ってくれる小さな仲間もいる。まだまだ守る立場だけど、いつの日にか横に立って、こうして一緒に墓参りに来られればいいなって思う。


 もう少しだけ頑張ろう。

 優香を癒してくれた、可愛い後輩達のためにも。

 死んでしまったみんなの妹分のためにも。

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