第11話 すっかり飼い猫ですが、何か?

あれから一週間が経った。

俺は、美優様の元で伸び伸び暮らしている。

所謂、『三色昼寝付き』だ。

朝は、美優様を起こす事から始める。

といっても、それは人間目線の話で、俺は、単に朝飯をねだっているだけだが・・・・。


「あー、もう。分かったわ。起きるから・・・・。」

美優様は、毎日めんどくさそうに起きる。

「マサムネー。ちょっと待っててね。」

美優様が俺の朝飯を準備している間、俺は窓から外を眺めるのが日課だ。

そして、朝飯が運ばれてくる。

「はい、どうぞ。」

またカリカリだ。

いい加減飽きた・・・・。

野良時代のバリエーション豊富な飯が懐かしい。

が・・・・。

これはこれで幸せなのかもしれない。

毎日食う事に困る事はない。


俺が飯を食ってる間、美優様は忙しく、仕事へ行く準備をしている。

あれから変わった事と言えば・・・・。

『人間』というものが、というか、美優様の事が深く理解できるようになった。

野良の時代は、広く浅く人間を見ていたが、事故に遭ってからというもの、人間という生き物が、どんな生き物なのか、より深く知ることができるようになった。


そして、一番強く思った事は・・・・。


暇だ。

暇すぎる。


美優様が居ない間、俺は人間の言う所の『留守番』だ。

部屋の中を散策する。

時には、台所をウロウロしてみたり、リビングでふかふかのクッションで昼寝したり。

ああ。至福の時!!

しかし・・・・。

暇だ。


そういえば、こないだは『ティッシュ』とやらで遊んで、帰ってきた美優様にこっぴどく叱られたっけ?

爪とぎに飽きて、柱を引っ掻いたら、大目玉をくらったっけ?


でも、美優様は基本的に優しい。

仕事から帰って来たら、俺の相手をしてくれる。

というか・・・・。

のだが。


しかし、人間というものは本当におかしな生き物だと思う。

特に、ことある事に写真を撮られる。

そして、・・・・。

美優様も、やたらと俺にや頭に何やら載せたがる。

で、その写真を撮って、また喜んでいる・・・・。


何が楽しいんだ?

俺にはさっぱりわからん・・・・。


そして、一番困るのが・・・・。


夜の運動を邪魔される事だ。

俺達猫は、元来夜行性だ。

俺もご多分にもれず、夜の運動が大好きだ。

駄菓子菓子・・・・。

美優様、というか、人間達には、どうもそれがお気に召さないらしい。


この間も夜になって、美優様が寝た後、日頃の鈍った体を動かそうと運動していたら、寝ている美優様が起きてきて、こっぴどく叱られた・・・・。


そりゃ、人間からしてみれば、寝ているの妨害されたのだから、叱られるのは無理は無い。

でも、夜になると、どうしても暴れたくなるのだ。

動きたくなるのだ。


この間、その事をトラ兄ィに相談してみた。

するとトラ兄ィは・・・・。

「そりゃ仕方無いさ。慣れしかないだろ?」

と、あっさりと言われてしまった。

野良と違って、飼い猫は行動範囲が狭まる。

しかしその代わり、飼い主の庇護を受ける分、命を失う危険度も少なくなり、住むところ、食事に困る事は無い。


まあ、物事に全てがメリットばかりの物事なんてない。


何かしらメリット、デメリットはある。


それを天秤にかけながら、より良い選択枝を探っていくしかない。とトラ兄ィは言っていた。


まあ、なんだかんだで、すっかりなのだ。

これはもう慣れるしかない・・・・。


でも、俺は、美優様がご主人で幸せなのかもしれない。

野良時代に、仲間達から人間の『悪行』とやらを散々聞いてきた。

俺だって、仔猫時代に捨てられた。


その時の人間のイメージとは明らかに違う。

なんだかんだで、俺は良いご主人様に巡り会えたと思う。


そうつくづく感じさせられる事に、なる事を、俺はこの時まだ知らなかった。



第一部、完




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クロヌコですが、何か?~とある黒猫の人間観察~ クロニャンコスキー @dan49894989

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