ひねくれくんとすなおくん

@karaokeoff0305

ひねくれくんとすなおくん

俺の名前は捻呉涼太。

その名前の通り、とても捻くれている。



「捻呉くんって、頼り甲斐があってとてもカッコ良いね♪」

「そうそう。誰にでも優しくってさ。捻呉君みたいに素敵な人、初めてみた」



そう言って囃し立てるクラスの女子達。

なんだなんだ?そうやって煽てて相手を奈落の底に突き落そうっていう魂胆か?



「涼ちゃんは、いつも裕(ゆう)ちゃん(俺の弟の名前)の世話をしてくれるから助かるわぁ。ほんと、兄弟想いの優しい子ね」

「優もお兄ちゃんを見習って、兄弟想いの優しい大人に育つんだぞ」



父と母はいつもそうやって俺を褒めるけど。

裏があるに違いない。人を褒めるなんてこと、自分にメリットがなければする必要がないからな。



「良いところたくさんあるのに…涼ちゃん、貴方もっと他人に対して素直になったらどう?」



最近、母親は口煩くこの言葉を言う。

なんだ、ほんとは俺が嬉しがってるとでも思ってるのか。とんだ見当違いだな。

生憎、俺の頭の中には猜疑心ってヤツしかねーよ。



「あの…コレ、手作りチョコ。家で作って来たの。良かったら食べて…」



見知らぬ女子にチョコを渡された。

そうか、今日はバレンタインか。カレンダーの日付を見てハッとなる。

このチョコ・・・純粋な好意があって俺に届けられたとは考えにくい。

さてはこのチョコ・・・毒が入ってるな?俺を〇して、学級委員長の座から引き下ろそうっていう魂胆だな?誰に頼まれたんだ、誰に・・・




「いや、あのそれ…純粋な気持ちで作ったチョコレートだと思うよ」

「あ?なんでわかんだ、そんなこと」

「さっきの女子…ずっと前から君のコトを気になっていたようだし…

わざわざ手作りでチョコ作って相手を倒そうなんて思う人も居ないでしょうよ…」



不意に後ろから話し掛けてきたのは、俺と同じクラス、2年B組の素直真咲。

その名前の通りメッチャ素直だ。

こちらが怖くなるくらいの素直さだ。素直過ぎる性格が災いして、今年に入って3回も振り込め詐欺に引っ掛かっている。



「ん~、確かにそれもそうなんだが・・・」

「でしょ?疑うんだったら僕が食べてあげるよ。恐らく毒なんか入っていないだろうから」

「良いよ別に。せっかく貰ったんだし、俺一人で食べる」



赤の他人から渡されたものなんて、一口も口にしたくないというのが本音だが―

まぁ、仕方ない。コイツの言う通り毒なんか入ってないだろうし、頂きものだしな、一応。



「相変わらず素直じゃないね、君は」

「素直過ぎたらお前みたいになるだろーが。ホイホイ怪しげな詐欺に引っ掛かりやがって」

「ははは、だって人を疑うのも良くないかな、って思って。お母さんからは

『もう少し警戒しなさい』って口酸っぱくそう言われるんだけど…」

「全く、その言葉の通りだと思うぜ」

「ん~でも…人…特に友達を疑ったりしたら気分悪くならない?」

「騙されるよりマシだろーが」



友人といつものように小突き合いをしながら、頭の中で考える。

『素直じゃない』なんてよく言われるが、こんな性格でもまぁ悪くはない。

コイツみたいに、何回も他人に騙されるよりはマシだと、

そう自分に言い聞かせ、先程渡されたチョコレートの箱をぎゅっと握り締めた。

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