#14

「では・・・大岡さんお願いします」


 万治はサークルメンバーをゆっくり見渡してニヤリとすれば、大岡を指名する。

 大岡は万治の顔を不快な表情で眺めると、渋々といった様に答える。


「俺は大学近くのラーメン屋で、十五時ごろ食ってたな」


「ほう。少し昼食が遅いようですね?」


 大岡は自分の腰に当てて居た手をパッと離すと、手振りを交えて答える


「な、何だよ。俺はただ、少し残ってシャドージャンプ文明の事について調べてたんだよ。最近、シャドージャンプ文明の長、ジャーガコクーエン二世のコーヒーを飲んでいる壁画が見つかってだな、どうもそれがナポリタンスパ……」


「はい、結構です」


 万治は喰い気味に話を切れば、大岡は更に不機嫌な表情を浮かべる。

 そんな事をどうでもよさそうヘラヘラ笑い流して、万治は次の対象者に話をふった。


「では、田辺さんお願いします」


 田辺はポケットから手を抜けば腕を組んで、ウーンと思いだす様に右上を一瞬見て答えた。


「俺も大学近くで飯を食ってたな」


「何時に?」


「十二時半位かな」


「何をお食べに?」


「うどんだよ」


「それは、本当ですか?」


「は?」


 場の空気が固まった。


「もう一度、聞きます。それは、本当ですか?」


「ほんと―――」


 その言葉を遮る様に万治は言う。


「俺は伊藤さんが落とされた駅のホームで田辺さん。あなたを見ましたよ?」


「な、なにを言っ……て……」


「あの駅に何の用事があったんですか?」


「俺は、アキバに行ってない!」


 上げた口角を大きく開いて万治は更に質問をした。


「何故、秋葉原の駅だって分かったんですか?」


「それは伊藤がアキバでイベントがあるって言ってたからだよ」


「おかしいなぁ。確かに伊藤さんは、イベントに行く事は皆に言っていたみたいなんです。でも、『電車を利用する事』については知らないはずなんですよ、皆。コレを知っているのは突き落とした犯人の部長さん。アンタだけだよ」


「なな、何を言ってるんだお前。大体、証拠があるのかよ!?」


 明らかに同様を浮かべる田辺に対して、万治はフッと息をついて追い詰める様に話す。


「フッ……犯人の王道パターン踏みやがって。お望み通り解説してやるぜ!」


「……こいつキャラぶれ激しいな。なにが『ぜ』だ」


 ぼそりと独り言を漏らすアヤメ。

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