#4

「す、ストーカーを見つけるって可能なんですか? と言うか、なんでストーカーが居ると思ったんですか?」


 テーブルを挟んで万治の向かいに座る伊藤は、水の入ったグラスを両手で包むように握り俯きながら万治に聞いた。


「いや、そこは君が言ったじゃないですか。ストーカーが居るって。とりあえず、今君を悩ますストーカーかどうかは分からないけど、怪しい奴は十中八九見つけられるかも」


 苦笑いを浮かべて万治は左手の人差し指の第二関節と親指を顎添え当て、うーんと唸って見せる。


「ほら、お二人さん。見てポーズ。如何にも名探偵っぽいでしょう? この悩める考える感あるポーズ。コナンくんも一ちゃんも名探偵がやるポーズだよ。なんか解決してくれそうだべ?」


 ウィンクをしてアヤメは隣に居る万治を親指で指して同調を促した。


「いや、それ今後、何気に取るこのポーズしづらくなるから止めてくんない? なんかナルシストっぽいじゃん、俺。って、ちょっとアヤメ黙って」


「てへぺろ☆」


「流石可愛いな、お前。俺じゃなかったら皆惚れてるんじゃね? さて、まぁ探偵なんて事はやって居ないのだけれども、それでも、もしこの事を解決あるいは究明したら報酬は貰うけど良いですか?」


 万治はニコッとアヤメに微笑みかけて、そのまま伊藤と川下の方に顔を戻し首を傾げて問うた。


「報酬?」


「そう、俺はただの御人好しでは無いからね。因みに今回の報酬は、それね」


 そう言って万治は伊藤の隣にある箱を指差した。


「ちょ、ちょっと待って! それを彼方にあげたら、ここに来た意味ないじゃん!」


 川下はテーブルに身を乗り出して万治に詰め寄る。


「んーや、意味はあるべ。こうやって被害が減少オア無くなるって話しに扱ぎ付けてんだからさ。ここに来なかったら別の場所でもっと酷い被害があった可能性もあるし。ストーカーの仕業ならって可能性の話しだけど」


 そんな川下をジッと見つめながらアヤメはそう言うと、手元に視線を移し温かいブラックコーヒーを啜って、ジーンズのポケットから取り出した加熱式タバコを口に加えた。


「どう? 伊藤さん。もし、何にも進展が無かったら何も報酬は要らないから。とりあえずここまで来たんだし、俺達もちょっと手助けしたいってのもあるしね。やるだけやってみない?」


 伊藤は下唇をクッと噛んで、俯いていた顔を上げた。


九栖ここのすさん、杜若かきつばたさん。お願いします。・・・・・・もう、こんな思いはしたく有りません。悔しくて気持ち悪くて、胸も痛いです。本当にストーカーが居なくなるんでしたら、これはあげます」


 息を吸ってフゥっと大きく煙を吐いたアヤメは、どこかスッキリとした笑顔で頷いた。

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