第4話 X軸とY軸の交点を求めろと言われましても……。

「地球の一時間とこっちの世界の一時間は尺度が違うらしい」

 ネコ改め、タチ改め、ヒトセさんは、左の手首にしているごつい時計を見ながらそう言った。

「どういうことでしょうか。わかりやすい説明をお願いします」

 きわめて従順に、そして理性的に、下手したてに出て教えを請う。

 理由?

 足元をご覧ください、右手に見えるのは、犬科っぽいナニカ、左手に見えますのは猫科っぽいナニカ。どちらも猛獣で、ヒトセさんがぶちくらしてくれました。

 護身用の三段ロッドの威力、素晴らしい。

 本人は、なにか実力以上の力が出たとおっしゃっていましたが、なにをおっしゃいますやら! 素養が無ければ、出る力もありませんよ!

 ところでなんで、三段ロッド……警棒的ななにかをお持ちなんでしょうか。踏み込んで聞けない。

「こっちに来て、もういいだけ歩いているが、時計の針は僅かしか進んでいないんだ。ということは、こっちの世界の時間と向こうの世界の時間の長さが違うということなんだろうな」

 溜め息を吐きたそうな顔でそう教えてくれましたが。

「ちょっと待ってよ! だって、半日したら迎えに来るって言ってたじゃない! 向こうの半日って、こっちの何日!?」

 せめて神様が多少納得する程度……半日くらいは、アスタリスクで過ごして欲しいなぁ。なんて言われて、半日ならなんとかなるかと思って頷けば、だ。

「そういうことだな。当分、迎えは来ないだろう」

 無慈悲な肯定。

 思わず両手で顔を覆ってしまった、ジーザス。

 神よ……じゃないや、問題はその神様だよ。

「さて、移動しよう。血のにおいに引き寄せられて、他の獣がこないとも限らないからな」

「大賛成っ! 早く行こうっ」

 冷静な彼の提案に、私は彼の太い腕を掴んで小走りで進む。

 もうあんな獣に襲われるのイヤだ!

 私のほうが弱そうだと思ったんだろうけど、あいつら私の方ばっかり襲ってくるんだもんっ!

 

 

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