DESIRE-デザイア-

自由帳

Desire1

 第一印象は、最悪の一言に尽きる。

 最初から最悪だったという点で見れば、なるほどあたしたちは最初から今に至るまで大して変わってないのかもしれない。

「欲しいものは見つかったかしら? 欲しい物なら何でもいいわよ、この生徒会室で祝える、たった一度の誕生日だもの」

 夏休みという事で久しぶりに染め直した金髪も、段々とプリンヘアーに戻ってきた頃、クーラーの効いた生徒会室で、あたしと先輩はいつも通り駄弁っていた。

 あたしが痣を隠すために来ている長袖のせいで暑いから、かなり設定温度は低い。

「あたし、別に欲しい物とかないし」

「JKがそんなんで、どうするのよ。いっそ車とかでも奮発するわよ?」

「……まだ免許取れないんだけど」

「じゃあ車はまた今度にするとして……新しい服なんてどう? もしくはアクセサリーとか」

「別に、あたしはジャージで十分」

「だからJKがそんなんでどうするのよ……」

 先輩は暑苦しい大きな胸をセンスで仰ぎながら、スマホ片手にあたしのプレゼントを探しては唸っている。

「大体先輩は受験生だしバイトなんてしてないんでしょ? あたしなんかのために無理しなくていいよ」

「お金は余ってるのよ、理由はあなたが嫌がるから言わないケド」

 ほとんど言ってるのと同じだ。

 つまり、セックスの代償として貰ったお金なんだろう。それで私にプレゼントを買おうなんて、皮肉のつもりか。

「売女、汚らわしい」

「あら、随分とヒドイ言い草ね。私は何もお金が欲しくてセックスをしてるんじゃないわ。セックスのためにお金を貰ってるのよ」

「何その屁理屈、同じじゃん」

「理屈は通ってるわ、お金じゃなくセックスをするのは、むしろ私はそっちの方がいいのよ。勘違いさせないように、お金を貰うの」

「ふうん……」

 生徒会副会長職が何を言うのだろう。

 呆れることはとっくに諦めたが、この人のこういう所だけはどうしても許容出来ない。

 この人がお金目的で身体を売るような人じゃないのは分かっているし、それも含めて私はこの人に惹かれはしたのだが、それでも嫌いだ。

「それで、何がいいかしら? 誕生日、もう来週でしょ? 早く決めないと」

「……誕生日プレゼントなんて、お母さんが居なくなってから貰った事なかったからなぁ……思いつかないんだよねー……」

 確か最後に貰ったのは、髪飾りだった。

 昔はポニーテールをしていたから良く使っていたけど、髪を切ってからはすっかり使わなくなってしまったけど。

「なら、私があげたいものをあげてもいいかしら?」

 シンミリとした雰囲気が嫌なのだろうか、いつもよりも食い気味に先輩は提案する。

「別にあたしは何でもいい、貰う文化があたしには無いから、何貰えばいいか分かんないし」

「それなら決まりね、張り切って選ぶわ」

 どこか怖い微笑みを見て、私は怖さを覚えながらも、少し期待してる自分が居る。

 まぁ、これもこれで良いかも知れない。

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