美人過ぎる私の悩み

@karaokeoff0305

美人過ぎる私の悩み

私の名前は望月莉桜。

学年で1位・2位を争う位、美人でスタイル抜群だと評判だ。



「莉桜ちゃんって、ホント可愛いよね~

スタイルも良いし」



同じクラスの友人は、口を揃えて私にこう言う。

その羨望の眼差しが嬉しくて、私はまた一層強く笑みを浮かべる。



「そうかな?自分では普通だと思ってるけど…」



この時、少し奥ゆかしそうに眉を顰めるのも忘れない。

謙虚さと奥ゆかしさも、美という言葉を確立する為には必要なのだ。



「え~普通?莉桜ちゃんが?莉桜ちゃんが普通だったら、ワタシ達はどうなるのさー」


きゃはは、と声を立てて私の親友―真由子は茶化すようにそう笑った。

そんな事ないわよ、と付け足して私は言う。



「隣のクラスの、由維子の方が可愛いわよ。ホラ、私って少し脚太いし」


「何よう、少し脚が太いくらい…私なんてこーんなでっかなでっ鼻よ」



グイ、と顔を近付けて駆け寄ってきたのは、同じく親友の麻里。

彼女は人を笑わせることが大好きで、いつも冗談ばかり言っている。



「そーんな事ないよ、可愛い鼻だよあはは・・・」



なーにが可愛いだ、美人だ。私の心の中の苦労もしらない癖に。

目の前にいる女性陣を一瞥し、フンッと鼻を鳴らした。



「キミ、可愛いね。何処のクラス?」


「え、モデルか何か?こんな可愛い子みた事ね~!」



何処に行ってもそんな風に声を掛けられた。

美人過ぎる、スタイル抜群、将来ミス・ユニバース1位決定―

ハッキリ言って人生イージーモード。他の人とは比べ物にならない位、

格段に最高の人生を歩んでいる。



(だけど美人過ぎるっていうのも色々大変なのよっ)



彼女らに聞こえないように、心の中でそう呟く。

まず、何処に行っても声を掛けられる。一人になりたい時もあるのに、

いつも人に囲まれるというのは少々気が滅入る時がある。



次に、女性同士の関係。「良いわよね~莉桜ちゃんは。何処に行ってもモテるから」同性の友人には必ずと言って良い程妬まれ、望んでもいない争いに参加させられることもあった。

そういう時、決まって知らんフリかどうでも良いという顔をしているのだが、彼女らはあの手この手で、争いに巻き込もうとしてくる。



「面倒臭いのよ、容姿が良いっていうのも…」



そう思ったが、正直に言ったところで親友の反感を買うだけだと思い、グッと

言葉を飲み込んだ。このスタイルだって、維持するのにどれだけ苦労していることか。家に帰ったら1時間ランニング&100回腹筋。これを毎日だ。

毎日続けているからこそ、この体型を維持出来ているのだ。



(はぁ、解ってないわね、全く)


言った所で無駄だと思い、口を噤む。

意中の人が何の苦労もなく手に入る、というのはとても香ばしくて良いけれど、もう疲れたわね。たまには、苦労をして相手を捕まえたい。



「莉桜ちゃんみたいに私もなりたーい」


「私も、私も」


「どうしたらなれるのかな?やっぱ整形?あー、神様。

この人と私の顔を交換して下さいっっ」


ぎゅっと瞳を瞑り、口々にそう呟く親友達。

あはは、何ていじらしいの。そう思いながら、外の景色の方へ目を見遣る。


「そんな莉桜ちゃんにしつもーん。どうやったらそんなに可愛くなれますかぁ?」


「無理だって、麻里。無駄な希望は持たない方が貴女の為よ」


「何よ真由、失礼ね。ほんの少しくらいなれる可能性があるって信じたって

別に良いじゃないのっ」



知らないわよ、美人になる方法なんて。

生まれた時から可愛かったんだし。どうしてこんなに容姿が良いんだろう、

なんて考えたこともなかった。父が美形だから父親に似たのね、とそれ位。



「ま、地道にコツコツ努力することね。美に近付く為に努力は欠かせないわ」


「努力ならもうしてるもん、ねー」


「毎日スキンケアに念入りに化粧。週に1回エステにも通ってるよ」



元々の作りが違うのだから仕方がない―

ハッキリ言って、努力なんて無駄。産まれた時から全てが決まっている。

本当の気持ちを抑えながら、無難な言葉でその場を濁す。



「そう言う麻里だって結構モテるじゃない。

この前、廊下で男子に声掛けられてたのを、私は見たわよ」


「えっ莉桜あの時いたの・・・確かにそれはそうだけど・・・」


「でっ鼻なんて、卑屈にならないでちょうだい。目もパッチリしてるし、

手足も長いし、相当美人の部類に入ると思うわよ」


「やだぁ、お世辞。でも嬉しい」


「お世辞じゃないわよ。いつも心の中で思ってることよ」


こう言っておかないと、また変な争いに巻き込まれるかもしれない。

全く、気の置ける親友にもこんなに気を遣わないといけないなんて。

美人って言うほどトクじゃないわね。



「今日の帰り、スタ〇に寄って勉強しよー」


「おー」


「もうすぐ期末試験だしね。皆で力合わせて頑張ろー」



ファイッ、と握り拳を固めて私達はそう言った。

そう、私達はもうすぐ期末試験。無駄にクヨクヨと悩んでいる時間もないのだ。



「あー次こそは赤点免れますように!最低でも20点!」


「あはは、麻里目標低すぎ。私はいつも通り学年5位以内を目指しまーす」


「さすが学年3位の真由子様は、言うことが違いますわね」


「こう見えても今回結構ヤバイのよ。前の試験、20点も点数下がっちゃったし」


「わー嘘くさぁ」



そう笑いあい、肩をこずき合うようにして教室を出た。

少なからずも、同性の友人が居て良かった。心の中でそう安堵の息を吐きながら。



(ホントまぁ、美人過ぎて損するってコトはないわよ)



視界に入った男子にパチッとウィンクをして教室を出る。

さっきの男の子は誰だったかしら・・・真由子が昨日、「~君って、結構カッコ良くない?」って言ってた人だっけ。



「ま、誰でも良いか」


声を掛けてくる男子が多過ぎて、正直男子の名前と顔が憶えきらないのだ。

学年で1、2位を争うイケメンならともかく、親友が少し騒いでたレベルの男子なんて、名前すら憶えていない。



「行くよー、莉桜」



親友の声に倣い、玄関口へと足を向ける。

私は可愛くてスタイル抜群の美少女。(少々骨が折れることもあるが)、

その特権を活かして、今日も生きるのだ。

心の中でそう呟きながら、強く照りつける真っ赤な太陽を睨んだ。

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