友情と、未来

 島の地上で相打あいうちになっている二体のロボット。

 周囲に水はない。空はただ、青。


 目が開く。

 近くに、スミコの顔が見える。

 じゅうたんが敷いてあって、寝心地は悪くない。

「なんだよ。くつろげる部屋もあるじゃないか」

 外ハネヘアの少女は、返事を言わずに少年の肩を抱く。

「もうちょっと、考えて戦ってよ」

「悪い。壊しちゃったな」

 ライゾウは素直にあやまった。


「無茶しすぎ」

「ごめん」

 キヨカズに言われ、再び謝るライゾウ。

 地下の部屋の中。身体を起こして伸びをする。

「助け出すの、大変だったぞ」

 銀髪のネネが追い打ちをかけた。

「もういいだろ。俺が助けてほしいぜ」

 ライゾウは助けを求めた。

 視線の先には、椅子に座るトミイチの姿。


「なぜ、コックピットを狙わなかったのですか?」

 正式な服を着た少年は質問した。

「友達を攻撃するやつが、どこの世界にいるんだよ」

 普段着の少年が即答した。髪は短め。

 二人の少女は、黙って見ている。

「私は、あなたがたを利用しただけで。友人などと――」

「友達だと思ってるよ。僕は」

 キヨカズが伝えた。

「もちろん俺も。みんな、そうだろ?」

 部屋のドアが開き、五人の同級生たちが入ってきた。

 元四天王も続く。

 ならんだ笑顔を見て、トミイチの目から涙が流れた。


 微笑みながらも、不思議そうな表情をする少年。

 手で拭った液体を見つめている。

「知らなかったのか? 嬉しくても涙は出るんだぜ」

「なんで、偉そうなのよ」

 ライゾウとスミコは、いつものように話を続けている。

 みんなで、いつものようにそれをながめていた。

「知識があっても、経験してみないと、分かりませんね」

 長めの髪の少年は、顔から離したハンカチーフをしまった。

「一人で、何でも抱え込まないほうがいい」

「大勢ならできることもあるぞ。たぶん」

 キヨカズとネネが、優しい言葉を掛けた。

 トミイチが肩の力を抜く。

「では、遠慮なく処分してください」

「人の話を聞かないやつだな、お前は」

「ライゾウに言われるなんてね」

 スミコはあきれていた。


「世界を守るためには?」

はるとおく。光の壁を突破しないと、たどり着けない場所に行くこと」

「え? そんなの、一人でどうにかできるわけないよ」

「詳しくは、戦闘記録せんとうきろくを参照してください」

「壊れちゃってるのよ、ねえ」

「生物の細胞内に設計図があるように、あの機体にも、設計図が内蔵ないぞうされています」

「応急処置をしておけば、そのうち直る、か」

 五人は椅子に座っていた。

 話を任された、アカ、ミドリ、アオ、クロ。トミイチとの相性は良かった。


「話がまとまったところで、罪を償ってもらうわ」

「はい」

 立ち上がるトミイチ。

 可愛らしい服を着た少女の前まで、美しい姿勢で歩く。

「スラブの頭脳として、きっちり働いて」

「何を、言っているのですか?」

「わしに分からなかったことを、知っていたのじゃ」

 地味な服の少女が近寄ってきた。

「だよな」

「次の目標に向かって、みんなで進もう」

 普段着の少年二人も集まってきた。

「いいのですか? それで」

「もう決めたから。従ってもらうわ」

「そうそう。頑固がんこなんだぜ、スミコは」

「だよね」

「ネネ? そんな話しかた、できたんだ」

 キヨカズが大げさに驚いて、みんなで笑った。


 睦月学園むつきがくえん。放課後。

 制服姿のタカシとミツルが、トミイチに声をかける。

 フユとメバエとホノカも続いた。

 その少年が、別の友人たちに気付く。

「勉強、教えてくれよ」

「自分で考えなさい」

 ライゾウに対して厳しいスミコ。

きかたなら」

「うん」

 キヨカズとネネは、比較的甘かった。

 四人もトミイチに声をかける。

「考えたほうがいいと思いますよ。二人でね」

「なに言ってるのよ、トミイチ」

「変わらないな、トミイチは」

「話しかたは普段どおりなので、気にしないでください」

 長めの髪の少年は、心からの笑顔を見せた。

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二重装甲ダブルエス 多田七究 @tada79

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