リリィとアビー
「リリィ!!」
アビーはいきなり自分の視界と感覚に戻されてくる。
「どうしたんだ!」
近くにいたロイスがアビーに話しかけてくる。
「リリィがやられた!」
「なんだと!さっきの光は!」
「本体は倒したみたいだってそれどころじゃねぇ!!」
アビーはリリィが落ちる場所を最後にリリィの視界で見ていた。
今は太陽の光が地上を照らしていたので、どの辺りにリリィが落ちて来るか予想が出来た。
「くそが!!」
だが、わかっていても間に合う距離ではない。
アビーはそれがわかっていても走るしかなかった。
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(・・・・・・・・痛い)
リリィは落下する中、腹に刺さった腕がもがく度に痛みを覚えていた。
(意識が・・・・・遠のく)
この腕から闇の魔力が流れ込んでくる。
僅かに残った魔力じゃ、とてもではないが対抗が出来ない。
(このまま・・・・・・死ぬのかな)
リリィは己の死を覚悟する。
思い出すのはアビーとのふざけた過ごした日々。
いつも悪戯をされて、怒って、最後は笑顔になるそんな日々。
そんな当たり前だった日々はアビーがいたからだ。
孤児だったリリィを引き取って育ててくれたから。
(・・・・・・ああ、私はやっぱりアビーさんが好きなんだ。でも・・・もう・・・・)
どれくらい時間が経ったか分からない。
身体は宙を落下し続けているのはわかる。
だが、時間の感覚がなく、永遠のような一瞬のような時間が続く。
(・・・・・・・・・あれ?)
どれくらい時間が経ったのだろう。
リリィの身体を貫いていた腕がいきなり消滅を始めていた。
(バカナ!!ナゼ・・・ナゼココニ!!)
リリィの頭の中にそんな声が響き渡る。
(・・・・・・・この感じは・・・アビーさん?)
まだ空の上だ。
こんなところにアビーが来れるわけがない。
だけど、身体を包み込む暖かなこの感じはアビーそのものだった。
(・・・・・・・・・・・まほう?)
アビーは一切魔法は使えないはずだ。
それは長年一緒に暮らしてきたリリィが良く知っている。
(でも・・・・・・この感じは・・・・・・魔力)
リリィは空っぽになった自分の中にアビーの魔力が流れてくるのを感じる。
(・・・・・・・・・・あ)
アビーの魔力はリリィの知らない魔力。
どの属性にも当てはまらない魔力。
だけど、リリィは魔法を感覚で作ることが出来る。
だから、ある魔法が頭の中に浮かんだ。
(ナゼッ!ナゼソウゾウシュノマリョクガッ!!!)
リリィの中を侵食していた闇は魔力が入ってくるのと同時に、外に弾き出されていく。
(これがお母さんが言っていた・・・・切り札)
出発前にリュミエルがアビーを見て、そんなことを言っていたとリリィは思い出した。
「・・・・・・消えて・・・ナッシング!!!」
(グガァァァァァァァッ!!!!!)
リリィの身体の外に弾き出されたフォンセの腕と闇は無へと消えていった。
そして、アビーが使っていた剣もひび割れ、砕け散っていった。
(そうか・・・この剣はアビーさんがずっと持ってた。だからアビーさんの魔力がこれに)
リリィはそう理解するも、腹部からは血が溢れ出てきており、落下は止まるわけではない。
(でも・・・闇は消せた)
リリィはもうすぐ到着するであろう地面を迎え入れるように、そっと目を閉じた。
(リリィ、生きるのよ)
意識が途切れる瞬間に、母親の、リュミエルの声を聞いた気がした。
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「はぁっ、はぁっ・・・おら!!」
アビーは全速力で走っていた。
足は高所からの跳躍とかでボロボロになって、感覚が無くなってきている。
それでも気合だけで動かし続ける。
「はぁっ・・・・あ?」
もうすぐリリィの落ちる場所に到着しようとした時に、光り輝く一人の女性がリリィを抱えて立っていた。
「っ!?リリィ!!」
アビーは最後の力を振り絞るように走り出す。
そして、愛しいリリィを女性から受け取り抱きしめる。
「よし、息はしてる。これなら・・・ってあれ?」
リリィは腹部を貫かれたはずだ。
なのに服は破けているが、傷は消えていた。
「・・・・・これはあんたが?」
アビーは女性に聞こうとするが、そこにはもう女性の姿はどこにもなかった。
(アビー、リリィをよろしくお願いしますね)
「っ!?・・・・ああ!!任せとけ!!」
アビーは今の女性がリュミエルなのだとわかった。
アビーはリリィの頬に手をそっと当てる。
「よく頑張ったな」
アビーは自然とリリィの唇に自分のそれを近付けていく。
「・・・・・・・・んん!?」
リリィは目が覚めると、アビーが自分にキスしていることに気が付き、慌て始める。
「あああああああアビーさん!?いったい何を!!」
「リリィ!!」
「きゃう」
リリィはアビーに抱きしめられる。
「結婚しよう!!」
「いきなり何なんですか!?」
アビーは嬉しすぎて、頭のねじが何本も飛んでいった状態だった。
「嫌か?」
「いや・・・・ではないですけど」
リリィもアビーと一緒に生きていくことに不満はない。
「・・・わかりました。でもその前に帰りましょう」
「だな。立てるか?」
「うん、ってあれ?傷が治ってる?」
そこで自分の傷が消えていることに気が付くリリィ。
「ああ、そいつは・・・」
「んん?なんですか?」
「・・・・いや、何でもねぇ」
アビーはそれを言うのはやめた。
それはなんでかはわからないが、今は自分だけを見てほしかったのかもしれない。
「そう・・・ですか。でも、うん、立てますし、何とか歩けそうです」
「そうか。そいつはよかった」
「じゃあ、アビーさんも」
「俺は歩けないし立てないけどな」
「なんでですか!?ってアビーさん!!足!!足がボロボロ!!」
アビーはここまで無茶な走り方や道を通ってきた。
リリィが無事だと認識した途端に動けなくなってしまったのだ。
「まぁ、ここでいちゃついてようぜ」
「きゃっ」
リリィはアビーに抱き寄せられる。
「で、でもアビーさんの怪我を」
「お前だって魔力ねぇんだろ?」
「それはまぁ・・・そうですけど」
「それならここでロイス達を待とうぜ」
「・・・・そうですね。でもあまり胸を揉むのはやめてもらうと助かるのですが」
アビーはいつの間にか片手をリリィの胸に這わせて揉んでいた。
「いいじゃねぇか。いつかもっと凄いことするんだし」
「・・・・・・・もう、エッチなんだから」
リリィはされるがままになりながら、ロイス達がやってくるのを待った。
そして、30分も経たない内にロイス達がやってきて、ルインの街へと帰る事が出来る2人だった。
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