22:00

 今日はとくに何事もなく、一日が終わりそうである。

 毎日、いや、定年まで、こんな感じで日々が過ぎて行ってくれればよいのだが、そういうわけにはいかないのだろう。

 お店の個室には、酒瓶が何本も転がっている。

 その中で、同期のそう佳南子かなこさんが、僕の膝を枕にして、たけかわこうの夜景をながめていた。

 黙っていれば本当にかわいいのだが、彼女の口から出ているのは、上司や部下の悪口ばかりであった。

「ねえ、今日のホテルはどこ」

「今日は予約してないよ」

 僕の言葉に、佳南子さんの機嫌が急速にわるくなっていくのが表情から読みとれた。

 「眠いから今日はもう帰ろうよ」とは言えなかったので、僕を罵る彼女の口をふさぎながら、スマートフォンでホテルの予約をした。

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