紅晶物語

青切

とある主任の一日

会社紹介

 僕が務めて六年目になるきりしょうかいは、世界屈指のエネルギー関連企業なのだが、世間からはずいぶんとミステリアスな存在に映っていることだろう。

 切尾家が戦国末期に起した、この老舗しにせぎょうは、株式が非公開なうえに、全株を創業家の眷属けんぞくが保有している。

 また、会社の主要ポストにつけるのは、切尾家に関わりのある者だけだ。

 そのうえで、切尾商会は情報の外部流出をきびしく統制していたので、世界の発電量の五パーセントを担いながらも、まったく外部に開かれていない企業であった。

 しかし、切尾を謎めいた企業にしている一番の理由は、発電の材料であるフェニキウムにあった。

 フェニキウムは、紅色のクリスタルの形で発電に使用される。

 この物質は、人体や環境に与える影響が皆無とされているうえに、高効率かつ安定的に電力を生み出すことができた。

 どういうわけか、愛智県にある凰来山おうらいさんの地中からしか産出されなかったが、第二次世界大戦後、このフェニキウムを発見し、発電の実用化に成功したのが切尾家であった。

 凰来山にある、切尾の主要工場で精製されたフェニキウムが、先進国の発電所に送られ電気を生み出すことで、切尾は莫大な収益を得ていた。

 そのような企業で働いていると、仕事の内容について、あれこれと聞かれることが多い。

 たしかに、変わった会社だと僕も思うが、慣れてしまうと、どうということもない。

 毎日たいへんではある。

 しかし、それはおそらく、どの仕事でも同じであろうし、苦労した分の給料はもらっているのであまり文句はなかった。

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