29スライム居ない平和な王都3

 僕とジャックの衝撃を知ってか知らずか、リリーは端的に真相を告げた。


「あの人いろんな街で女作ってて、お前は最低の船乗りかって張っ倒しておいたよ」

「そ、そう、だったんだ……」


 それはまた何と言っていいのやら。行商人の彼ガタイが良くて結構長身だった気がするけど、張り倒したんだ。その細い腕で……。


「ち、因みに恋の傷は恋でって言うように、新しい恋人がいたりは……?」

「ないない。運命に気付いたって言ったでしょ? 傷心を心配してくれるのは有難いけど、本当にもう粉微塵も何とも思ってないから気にしないで。ああでもどこかであの野郎と再会したら……もう一発入れるけど」

「そ、そう、頑張って……」


 返事代わりのリリーのどこか底知れない笑みに僕はぞわぞわと寒気を感じつつ、ジャックを見やる。


 ああやっぱり。感情が突き抜けてそのまま天まで昇っちゃってるよ。半開きの口から何か分身みたいなのが出てる。


 だってさ、リリーがフリーになったんだもんね。


 そんなリリーは何故か声を潜めて僕だけに聞こえるような声量で話しかけてくる。


「それでね、アルに頼みがあるの」

「へ? 僕に?」

「そう。アル達が冒険から帰って来たらって思ってたけど、ここで会えたから善は急げかなって。……ねえ、だからちょっとこっちきて」


 リリーはどこか気恥ずかしそうに僕を道の反対側の壁際まで連れると、ジャックの方を窺うように一度見て何かを決心したように一人頷いた。寛容になったのか、そもそもジャックはもう彼氏じゃないからか、エロ本の件は水に流したみたいだった。


「実はね……頼みって言うのはジャックのことで」

「ジャックの?」


 当のジャックはようやく我に返り、落とした男達の聖書エロ本をそそくさと拾っている。敬虔なる僕も是非その書を拝見したいものだよ。

 で、何故かジャックの横では愕然としたミルカが何かを話しかけていた。

 離れていたから話の内容は聞こえなかったけど、程なく二人共深刻そうな表情になったのがわかった。

 こっちではこっちでリリーが珍しく先を言い淀んでいる。

 あっちもこっちも、一体何事なのかな?





「やっぱり路地の先にチラッと見えた女の子と歩いてた人はアルだったから追い掛けてきて正解だったけど、ねえジャック、あの人ってあなたの元カノなんでしょ? それが何でアルを引っ張ってってこそこそ二人で話してるの?」


 ミルカは偶然にも奥まったとある古書店でジャックと鉢合わせして、お互い気まずさから早めにアルと合流してしまおうと決めて例の店を出た。そんなところで路地のかなり先に辛うじて見えた人物に反応したのだ。

 それがアルだと彼女は言い張ってジャックを引っ張ってきたのだが、ジャックには生憎と人通りが多いのと遠過ぎるのとでよく見えなかった。それでもミルカに従ったのは既に植え付けられた彼女への底知れない怖さだけではなく、見知らぬ女子と一緒だったとの証言が動機としては最も占めていた。

 もしもその男が本当に友のアルなら一体どうして知らない女子と歩いていたのか、朝は息抜き云々と言っていたのでまさか一人だけエンジョイなのか、と心の裏で抱いては惨めになる嫉妬を抱いたからでもあった。自分は手垢の付いた古い紙面で満足するしかないのにリアルなのが狡い、と。

 もう一つ付け加えておくと、ジャックとミルカ二人のバッタリ会った店は男性向けだけではない古書も沢山扱っていて、店内では色褪せたナイスガイ達が白い歯で笑っている。

 ジャックは怖いくらいに鋭い真剣味を醸すミルカに若干仰け反りつつもあっさり返答を口にする。


「え、さあ。でもまあ同郷の幼馴染みだし、何か用件があるんだろ」

「用件? 本当にそれだけ? さっき運命に気付いたとか優しい男ゲットするとか言ってたし、――それってアルのことじゃないの?」

「…………は?」


 思い詰めたようなミルカの言葉がすんなり理解できなかったのか、やや間があってからジャックが今にも瓦解しそうな表情で両目を極限まで見開いた。


「そ、そそそそんなわけってあるか!」

「あると思うわ。幼馴染み三人とかだとよく見るトライアングル展開じゃない。離れてみて自分の気持ちがわかったってことなんじゃないの?」

「そんな……俺はどうしたら……! アルは大親友だ。仮に俺が女だったら恋人としてそりゃ申し分はない。ない……が、リリーとなんて考えたこともなかった。俺はリリーしか心にないから喜べない。でもリリーの幸せのためには身を引くべきなのか!? 忍ぶ恋をすべきなのか!? なあそうなのかミルカ!!」


 がくりと脱力して絶望する者のように四肢をつき、尚且つミルカに縋るような目を向けるジャックへと、共感したのか苦行に耐えるようにきつく眉根を寄せていたミルカは、ぱっと眉間を開いて地面にヘタるジャックに屈むと柔らかな表情で目線を合わせた。


「そんな玉の小さいこと言わないでジャック?」

「は? 玉……って貴族の子女が破廉恥に何言ってんだよ……」


 ご令嬢にあるまじき言葉遣いだと注意しようとしたものの、脱線は許しまへんでーなミルカのいつにない目力にジャックは口を噤んだ。


「あなたが諦めたらそこでもうあの二人には何の障害もなくなるのよ? あたしはアルが、ジャックはあの人が欲しいって利害は一致してるって気付かない?」

「ええと何を言って……?」


 耳横で栗色の髪を弾ませてミルカが上機嫌な悪女のようににやりと微笑んだ。


「手を組むのよ、あたし達で。恋愛共同戦線同盟を結んで互いの恋路を邪魔せずむしろ成就に向けて応援する同志になるの。……どう?」

「――っ、ミルカ……様!」


 ジャックの目には今や後光さえ見える微笑を湛えた聖母ミルカの差し出す手は単なる人間のそれではない。惑う仔羊たるジャックは導く羊飼いの笛を聞いたかのようにその聖なる手へとおずおずと手を重ねる。

 至高の教会画の如く繋がる手と手。

 今ここに、二人の私欲に塗れた同盟は結成された。





 一方、僕とリリーはそんな光景を眺めていて、僕は不思議に思ってキョトンとし、リリーは短く息を呑むやドサドサと荷物を落としてよろけるように壁に手を突き自らを支えた。


「リリー大丈夫!? 貧血? 喫茶店で休んだ方がよくない?」

「ううん、違うよ、違うんだよアル……っ」


 気遣って顔色を確認しようと覗き込んだ僕は、次の瞬間には壁を背に彼女に追い詰められる形になった。


 俗に言う、壁ドンだ。


 両腕の間に僕を挟んだリリーは項垂れてしまっている。

 向こうで目を剥くジャックとミルカからの刮目かつもくだけじゃなく、往来の注目も集まってくる。


「ええと、リリー……さん?」


 ブツブツ何事かを小声で呟いてるし、本当に具合が悪いのかもしれない。とは言えこの状況にたじたじで遠慮がちに声を掛けると、リリーは無言のままようよう顔を上げた。

 ……ぶっちゃけ、手でそっと下げ戻したいくらいには怖かった。

 仄暗い茶色の瞳には一切の光がなく、だけど何故か圧迫感が半端ない。夢の中の圧はまさかリリーのだったとか? ジャックを差し置いて実はリリーの夢を見てたとか? なーんてそんなわけはないよね。

 暫し息を詰めて黙って見ていると、リリーは急激に病んだような面差しで蚊の鳴くような弱々しい声を出した。


「ねえアル、まさかあの二人って……デキてるの? それ以前にあの人誰? どうしてジャックと親しげなの? どういう関係?」

「え? デキ? あははそれはないよ~」

「隠してるのかもしれないよ」

「ええー? それでもないない」


 まあ覚醒させられしエロ属性は隠し切れてないけどね。

 それでもいつもリリーばっかだし、未だ一番はリリーだよ……って言ってやりたいけどやめた。そういう言葉はジャック本人の口から聞くべきだしね。


「もしかしなくてもあの人、同じパーティーなんでしょ?」

「うん、そうだよ。ミルカって言うんだ」

「じゃあ恥ずかしくて言えないことだってあると思うけど。それにカップルがいたらアルが気を遣うと思って言い出せないんじゃないのかな? ……それに胸もあるし」


 胸はこの際関係ないよリリー、と大いに突っ込みたかった僕だけど堪えた。それよりも、俯き加減で暗い表情の彼女の推測を僕は再度笑い飛ばそうとして、できなかった。

 だって目の前で繰り広げられている光景に、さすがの僕でも確証が持てなくなっちゃったんだよねー。


 視線の先のジャックとミルカは、目には互いの何かを求めるように熱いものを滲ませていた。しかもさっきは手に手を取り合ってたけど、今度は優しい顔のミルカがジャックを抱きかかえている。


 ……え? ええッマジ……?

 リリーの言うように本当に二人から隠されてた?

 いやまさか~。

 でも現実が物を言う。


 だってジャックのあの目は恋に期待する目だ。長年の付き合いでそれくらいはわかる。


 でもさ、だけどさ、だけど…………。

 きつく両目を瞑って奥歯を噛んだ。

 我が身の愚かしさを痛感する。

 ジャックは今でもリリー一筋だなんて、僕の勝手な思い込みだったのかもしれない。

 いつの間にかミルカにフォーリンラブしていて、ミルカもジャックにそうで、後々は報告してくれるつもりだとしても、当面は秘密だからと気を遣わせないよう二人の関係を悟らせないために演技していたんだとしたら……?


「し、知らなかった。僕は今まで無神経に二人を邪魔してたのかも」


 宿屋のベッドの並びとか、いつも僕が真ん中でまさに物理的障壁だった!

 あまつさえジャックに相談もせずに髪飾りを贈っちゃったじゃないか!!

 挙句の果てはリリーと積もる話でもだなんて余計な気を利かせてしまった!!!

 猛烈な罪悪感が胸に込み上げる。

 真実がショック過ぎて言葉を選びあぐねていると、リリーは壁ドンをやめて呆れた。


「知らなかったんだしそこは自分を責めちゃだめだよ、アル」

「それは、そうだけど……」

「もう、アルは悪くないでしょ。相変わらず優しいんだから」


 姉のように励ましてくれるリリーに何だか和んで、相好を崩す。昔からリリーは僕に対してどことなくお姉さん風を吹かせるきらいがあるんだよね。誕生日は僕のが早いのに。

 ジャックに対しては女の子丸出しだった。彼と付き合ってた当時は恋愛馬鹿な面が色濃かったけど、元々面倒見は良いんだよね。


「ありがとうリリー。ところで、ジャックのことで頼みがあるんだよね?」

「ああー、うん、そうだったけど、その件はやっぱりいいや」

「そうなの? ホントにいいの?」


 何となく納得しきれない僕の心境を表情から読み取ったのか、リリーは取り繕うように補足を加えた。


「実は今更だけど私と別れてジャックが引き摺ってないか気になっててね。でも杞憂で良かったよ」


 いやいや引き摺りまくってて色々と面倒だった……とは言えない。


 でもリリー、君はもしかして……ジャックとヨリを戻したかった?


 彼女の様子から薄々思っていたそんな考えが消せない。

 だとしたら彼女は何て酷な場面に居合わせてしまったんだろう……。

 けれど、僕はもうそれを問いかける機を逸していた。

 リリーは誤魔化すように平素の表情を貼り付けている。


「ねえアル、今日はアル達が帰るまで一緒にいてもいい?」

「それは、全然構わないよ」


 僕はジャックとミルカの邪魔はできない。

 でもリリーを遠ざけるのもしたくない。

 だから、彼女が望むなら、せめてそれくらいはいいだろう?

 誰にともなくそう問いかけていた。


「じゃあその前にミルカに紹介するよ。あの子ホントいい子なんだよね。だからさ、ええと、心配せずともジャックは大丈夫だよ」


 慰めにもならない言葉しか言ってやれない気の利かない自分に呆れる。でもリリーにはお見通しらしく、うん、と頷いてパシリと肩の後ろを軽く叩いてきた。

 僕はリリーを連れて、二人の元へと爪先を向けた。





 ジャックとミルカは、二人で雑談でもしているように見せかけてその実アルとリリーの会話に耳をダンボにしていた。


「かかか壁ドンしてたわよ、壁ドン!! リリーさんって積極的なのね」

「ま、まさかリリーの方からするなんて……っ、おっ俺の時は一度だってなかったのにいいいっ」

「……されたかったの?」

「んや、されてみないとよくわからない」

「ならいいじゃな……よくないわね。この調子じゃ夜にもアルがベッドに押し倒されちゃうかもおおおっ」

「んな!? んがっうんがっんがんがんンンッ」


 ジャックの襟首を掴んで揺さぶるミルカは相手が白目を向きそうになっているのにも気が付かない。


「どうしようジャック、距離があるから断片的にしか聞こえなかったけど、一緒にいてもいいかって訊いてたわよね。それってこっちとしても好都合だわ。見張れるし邪魔できるし」


 ジャックは押し黙っている。訝りを浮かべたミルカの目がやっと彼を向き直った。


「ジャック? ああッごめんなさい大丈夫!?」


 ミルカの締めつけのせいで唇にチアノーゼまで出ていたジャックは、手を離せば倒れ込みそうで、故にこそ劇中での悲劇の二人のようにミルカが抱きかかえる形で支えた。それが大きな誤解を生むとも思わずに。


「ホンットごめんッ。しっかりして、同志!」

「ごほごほっ、胸の痛みと比べれば、こんな息苦しさなんて屁でもないぜ。じゃあ俺のターンってとこだな」

「そうよその意気よ!」


 二人は企みを誤魔化すように平素の表情を取り繕い、どこか憂えるような様子で自分達の方へと歩き来るアルとリリーを迎えた。






 その頃、上空では頬を切る風にピンクポニーテールと白衣の裾を激しくはためかせ、実年齢と比すると外見年齢が著しく低く見える女性――メリールウ先生が箒に乗って飛んでいた。


 武器工房からの帰りでもあり、工房からのお使いの途中でもあった彼女は、自身で魔法を行使しているわけではなく、工房所持の魔法道具の空飛ぶ箒を借り受けているだけだ。


 愛する魔法科学の純然たる使徒でもあるメリールウ先生だが、実のところ魔法は一切使えない。


 それでも上等な武器を持てば魔物と渡り合う事が可能なので、彼女は武器を注文したのだ。生半可な代物ではなく超一級品の武器を。

 まだ何日間か微調整が必要なので今手元に自分の武器はないが、彼女は小脇に布に包まれた別の武器を抱えていた。


 工房の主人が王国騎士団から手入れを任された古い時代の剣だという。


 現在使い手はなく、騎士団の象徴のように代々受け継がれていた一振りらしい。


 物持ち良過ぎだと話を聞いた時は呆れと感心が半々で思ったものだった。

 それはともかく、多少武器の料金をまけてもらう代わりに、王都東側地区――古王都にある騎士団の屯所にそれを届ける一仕事を引き受けたという次第だった。


「ふんふんふーん、楽ちん楽ち~ん。魔法の箒ってこんなに楽しいものなんだ~」


 彼女の眼下にはちょうど古書街とその周辺の黄灰色の建物群が広がっている。


「リリーちゃんまた迷子にならないか心配だなあ」


 昨日実際足を棒にし汗だくで捜し回ったのはリリーの方だが、どちらが迷子になったのか双方の主張はきっと食い違い平行線を辿るだろう。

 今日に限っては、空を飛べば道に迷いようもないのがせめてもの幸いだ。


 ――くれぐれも落っことさないで下さいね。


 白髪交じりの髪に片眼鏡モノクルをした、物腰や細身の外見だけなら一見どこかの執事のような工房の主人の言葉が、脳裏を過ぎる。

 メリールウ先生はぷくーっと頬を膨らませた。


「もう、子供じゃないんだし、おじさんも失礼ね」


 思い返して憤慨していると、脇に抱えた布包みがヴゥンと震えた気がした。


 ――念のために言っておきますと、少し前からこの剣は動作がおかしくてですねえ、やたらとカタカタと動くんです。金具で固定していなかったら人知れずどこかへと飛んでいっていたかもしれません。ですから、万が一この剣が自分からどこかに飛んで行くような素振りを見せたら、構いません、手を離して下さい。無理に引き留めると斬られかねませんので。


 そんな意味不明な、ちょっと怖い事も言っていた。


「でもまさか剣が独りでに飛んでくなんてあるかなあ? 魔法剣なのこれって? でも魔法剣だとしてもぉ、普通は使い手が使って初めてその能力を発揮するものだよねえ?」


 悩んだように包みを見やり、結局わからずいつもよりぐんと近い天を仰いだ時だった。

 今度は気のせいで片付けられないくらいに布越しでもわかる程、剣がヴヴンヴヴンと細かく震え出したではないか。


「え? えええ? あっ、あッ、ふぁああああああああああッ!?」


 ずるりと、布を裂いて中から飛び出した剣が、重力に従うように真っ逆さまに落下していった。






 ジャックとミルカの方へと歩みを進めていた僕は、女性の微かな叫び声を聞いた気がしてピタリと足を止めた。


 今の声、どこから?


「アル?」


 やや後方から付いて来ていたリリーが不思議そうにする。


「いや、今女の人の悲鳴が聞こえなかった?」

「悲鳴? もうアルったら昼間から怖いこと言わないでよー」

「だよね、あはは気のせいかなー」


 なーんて笑ってるけど、白昼夢じゃない不可解体験はさっきしたばかりだけどね! 本当にあれ何だったんだろう? リリーがいるから今は二人にその話もできないし。

 気を取り直して前に一歩踏み出し再び歩こうとした矢先……。


 ――ズドオオオオオーーーーンッッ!!


 と、超速の何かが眼前の空間を上から下へと垂直にぶった切って地面に突き刺さった……というか突き立った。


 わあ~、風圧が凄いや~。

 前髪がふぁさ~って全部上がって額丸出しだよ~アハハー。

 大きななたでも落っこちてきたかな~ハハハハー、いや違ったこれは剣だねー。剣だねー。剣だねー。剣だねー…………――けっんっ!!


「ハハハ、ハハハハ、ハハハハハハハ……――――はあああああああああああっ、ちょッ、なッ、こッ、どこから<>?*!+○▽(;´д`)!!!!????」


 明日からは新たに天気予報に剣や槍が降る確率もどうか付け加えてほしい。


「だだっだっ誰か知らないけど僕を殺す気いいいいッ!?」


 大混乱する頭の中では、僕の生命株大暴落あわや故人かっていう大恐慌が吹き荒れてたけど、大荒れな思考とは裏腹に更にあと一歩前に出てたら冗談抜きで確実に脳天直撃串刺し上等コースだったと思えば、恐怖に体が竦み上がって足先一ミリだって動かせない。

 ところでこの凄烈な存在感、最近どこかで覚えがある気がする。でも思い出せない。


「もっもう降って来ないだろうな!?」


 焼く前の串焼きとかケバブ状態になるのは絶対嫌だ……っ!

 とか思ってたら、


「ふぁああああああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁああああっ!!!!」


 建物の屋根を超えた遥か上空から、今度は人が降って来た。

 天気予報に人が降る確率もプリーズ。

 スライムがいなくて、最早それだけの理由でああ平和な王都……だったけど、全っっっ然平和じゃないッ!!

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