第4話 長女と紅のロストラブ

  「うぎぁぁぁぁああ!?」

 「…??!!」

 耳をつんざくような断末魔で目が覚める。

 声のするほうは分からないが、ともかく紐を巻き、廊下に出る。

 目の前には、変質者。

 「…ついに住居不法侵入をするまでになったか」

 「ふふ…見て…遂に私はミサを捕らえた!」

 「はーなーせー」

 変質者の手にはミサががっしりと捕まえられていた。

 「さてさて…?どうしてやろうかしら…?」

 「はーなーせー」

 「離してきなさい」

 「えー」

 「人をペット扱いするな」

 変態は手を離した。

 ミサがストンと床に着地する。

 …着地した途端にテポを開けてあった窓に蹴り飛ばした。

 飛び上がっての回し蹴り。

 テポは変な声を出して落ちていった。

 …あ、爆破した。

 「ふっ…おかしい奴を無くした…」

 「あんたねぇ…アンモにこれがしれたら…」

 「…んー…いいんじゃない?」

 アンモが後ろからすっと出てきた。

 「うわああ!いたの!?」

 「ずっと東風の後ろにいたじゃない」

 「憑依…!?最近肩痛かったのってまさか霊障!?」私は飛び離れる。

 「失礼ね」アンモむすっとなった。

 その時、廊下の奥にある玄関の扉が開いた。

 …火星姉妹だ。

 「ちょっとうるさい、ミサ」といいながら姉がミサに近づき、ミサの前でたちどまる。

 「…全く、テポと仲良いからって調子乗らないでよ」と、いつものムスッとした顔でいうと、ミサはいつもの意地の悪そうな笑顔で言う。

 「くくっ…そんな事いって…心配してあげてテポの気を引くつもり?駄目だぞ?この子猫が。躾がなってないわ、ねぇ?妹さん?」と、矛先を妹にむける。

 妹はすかさずごめんなさいと言う。

 ミサに口では勝てない事はマンションの中では良く知れている事だった。

 妹が謝ると姉はすかさず「その子は関係ないでしょ!」と、切れる。

 いつもの事、姉はケンカ早い癖に沸点10度の瞬間お湯沸かし機なのだ。

 「くく…そうね、ガキの性根の悪さは教師のせいじゃないわね、一番悪いのは常に自分よねぇ?ガキが何故うざったるいか、知ってる?それは自分が悪いと考え付かないからよ、貴女…自分が悪かったかも…とか、考えないでしょ?だから何時までもガキのままで、死んでも餓鬼なのよ。この鬼の恥さらしが」

 「………っっ!!」

 「ね…ねぇ?あの二人どういう仲なの…?」と、妹に近寄り聞く。

 「あ…ああ…それは…あの…」と、妹は話すべきか迷ったみたいだが、直ぐに話だした。

 「実は…昔、本当に昔ですよ?テポさんと姉は付き合っていたんです」

 「えええ?!付き合った!?」

 「はい、付き合ってました、なのですが…姉が事故を起こしてしまって病院で隔離されていたのです、その時テポさんと離れてまして…時に15年ぐらいでしょうか…?その間で距離が出来てしまって、それから退院して、このマンションに来たときにはテポさんは姉の事を忘れていて、ミサさんと付き合っていたので…その…目の敵にしているんです」

 「え、ええ…テポって忘れっぽいけどまさか愛人を忘れるとか…ってかアイツも同性愛者なのか」

 「はい、残念ながら」

 私は2階にある私の部屋を出て、1階に降りた。

 …あ、テポの奴、石像にもたれかかって寝てやがる…ってかあの石像たしか火薬はいってなかったっけ…?

 「ねぇ、ねぇ、テポ、テポ、起きて………っ?あれ?これは…」

 テポの制服のポケットから手帳が出てきた。

 中をみると盗撮と思われる写真が出てきた。

 こんなの捨ててやると思ったら、次のページで日記らしき物が出てきた。



 ……某日某月。

 火星がこのマンションに来ちゃうなんて。

 なんて言えばいいんだろ。

 あの事故は、意図的に私がやったこと…なんて、どうやって言えばいいんだろ。

 私が…隣国のスパイだなんて。

 今はこの国に尽くしているし、この国が好きだ。

 でも…やっぱり言えない。

 ミサは火星の恨みは私が買う…とか言ってたけどやっぱり不安。

 私…どうすれば…。




 「テポ……」

 私はそっとテポのポケットに手帳を仕舞う。

 上の階では討論が続いていた。

 …そうかぁ…

 そうだよね、好きだった人を忘れるわけないよね。

 私は、テポの隣に座る。

 …?何か堅いものが…?

 私の座った所は、石像の起動スイッチだった。

 夏のお昼下がり。

 私たちは爆破した。












尚、復活後手帳に入っていた盗撮写真は全て破棄した。




 


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