絶望の始まり

1

2014年、4月。


桜は三分咲きで、何とも惜しい風貌だった。でも陽は春らしい暖かさで、とても清々しい気持ちだったのをよく覚えている。

着られている感満載の真新しい制服を纏い、私は私立F高等学校の正門を潜った。


……実はというと、本当は高専に進学したかった。生化学が好きだったというのもあるが、少し汚れた白衣を着て、色鮮やかな液体の入った試験管を振る科学者への憧れがあったから。中学の先生に推薦までしてもらい高専を受験したのだが、ちょうどSTAP細胞とやらの影響でリケジョというものが流行ってしまい、合格への門が急激に狭くなってしまった時期だった。先生から不合格の通知を得た時は、心の底から悔しかったが、その憧れは未だに捨てきれていない。

その後、公立と私立の高校を併願受験したものの、完全な進学校であった公立高校は、独特のトゲトゲとした雰囲気に圧倒され撃沈。併願でも特待生の資格を得られた私立の高校…F高校で3年間を過ごすことになったのだ。


私立の高校は、私自身あまり良い印象を持っていなかった。都会ではまた違うのかもしれないが、田舎では公立高校の方が頭が良く、私立高校はいわゆる落ちこぼれが入学するものだと思っていたし、世間一般でもそういう考えだったからだ。

ただ、私が所属することになるクラスが、「普通科 特進コース」というものだった。でもまあ、私立じゃあ特進と言えども、所詮は"もどき"だろう。そうなめてかかっていた。


……しかし、その考えが、"特待生"という称号が、私を蝕んでいく事になるとは、その時は考えもしなかった。

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