望み

「ところでさ……。」

メグが口を開く。4人は再び合流していた。

「優勝したらどうするの?」

彼女は目を輝かせている。しかしジャックは眉間に皺を寄せていた。

「どうするってなんだ?」

「優勝したら願いを叶えてくれるって書いてあったじゃない!」


 ジャックはハッとする。

「あ、アレそう書いてあったの!一部全然読めないなぁと思ったら。」


 ダリオは呆れた様子だ。

「読めなかったのか……。」

「本とか読まないんですから、これでも読めてる方だと思いますよ。」

カノヴァが目を閉じて、ゆっくりと頷く。

「そうっすよ。自分もはっきり言ってちんぷんかんぷんなんすよ。アレを言葉だと思ってる人間がおかしいんすよ。」

「そうだそうだ!」


 メグとダリオが顔を見合わせた。

「ほら!!ボンボン育ちはこれだから嫌っす〜!」

「やっぱ庶民の気持ちは分からんよなぁ!」

2人が調子に乗ってきたので、メグの表情がだんだんと険しくなっていく。

「で、どうするの?」

「そうだな。やっぱ──。」

「だいたい字が読めない事の何が悪いんすか!?しょうがないじゃないすか!」

カノヴァがまだ話題を引きずるので、3人は彼女が喋り終えるのを待った。カノヴァが黙ると、ダリオが話し出す。

「……で、どうすんだ?」

「あぁ、えっと……。やっぱりねが──。」

「読めるような教育してくれんなら、最初っから受けやすよー!なんで生まれ育った環境でここまで差がで────!!」

耐えかねたジャックが、カノヴァを思いっきり殴った。


「願いは誰かに任せます。叶えたいものはありますが、それをここで叶えてしまうと、旅をしている意味がなくなってしまうので。」

ようやくジャックが答えた。

「というか、端から優勝なんて目指してないんでしょ?」

メグが言うと、ジャックは不機嫌そうな声音で、

「だいたい参加したいとも言ってないぞ。無理にやらせておいて優勝まで求めるな。」

と言った。

「分かったってば。」

メグが肩をすくめた。ダリオは笑っている。

「まぁ、無理するなよ。」

「ええ。どうせ無理はしますので、努力だけします。それに問題が……。」

2人は──、あ、いや、復活したカノヴァも加えて、3人は不思議そうな表情を浮かべた。


「クロードとジゼルが、来るかもしれないと……。」


 3人は返答に困っている。

「大将……。負けないで。」

「多分、きっと、恐らく大丈夫だから。」

「無理するなよ。」


 ダリオのサムズアップで、ジャックは悲しくなってきたのか、少し泣きそうになっていた。

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