麗丹

第1話 徐麗丹という女官

 後宮には最近、名物女官といわれる女性がいる──りゅうばい


 奴婢ぬひから女官へと華やかな出世を遂げた女だ。

 おおっぴらに語られることではないが、元は市井のじょだったのではないかともいわれている。


 その噂が決して絶えなかったのは、彼女の素養によるものだ。後宮内の歌舞をつかさど)る部署の長官であるしょうがくに目をかけられるだけあって、芸術的なことに秀でている。

 もちろん容貌も端麗。

 女官であるならば、ある程度の容姿を求められるが彼女はその水準を遥かに超え、ひんとしても遜色がないほどだった。


 ……だった。

 過去形である。


 昨今の彼女は、やけに体型が横に伸びて、かつての美貌が見る影も……いやこれは言いすぎか。

 見る影しかない。


 ただおかげで元妓女という噂は下火になっているので、惜しいというべきか、どうなのか。

 さて、ここまで長々と劉梅花について述べたが、実をいうとこの物語は彼女についてのものではない。


 繰り返す、彼女が主役ではない。

 これは劉梅花の相棒として、特に歴史に名前を残すわけではない、じょ麗丹れいたんの物語である。

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