替り
「今日は特別暑くなりそうだ。」
ラジオの放送を聞いてそうぼやいたのはイワオさんです。イワオさんは台所に立っているタケミさんを
「少し、出掛けてくるよ。」
イワオさんはタケミさんが居る所に居たくありませんでした。イワオさんがラジオを聴き、タケミさんが料理を作る。こんな毎日が繰り返され、イワオさんは
「親父さん、おはよう。」
川近くの
「おや、イワオさんではないか。別に責めている訳ではないが、こんな早朝にどうしたのだ。」
「いやね、今日は久々に釣りを楽しもうと思いましてね。この時期何か面白い魚が釣れませんかね。」
「ふむ。この時期は渓流へ行くと良い。
「いえ、今は
渓流まで行くのが億劫だったイワオさんは
二本目の煙草を吸い終え、煙草が入っている箱を見ますと、イワオさんは目を見張りました。
「何だ
イワオさんは好奇心いっぱいの表情のまま手に力を込めました。すると驚いたことに人形は呻き声をあげたのです。
「止めてくださいよ、旦那。今なら代償少なめでお一つ願いを叶えますから。」
セールスマンの様な台詞を喋る人形にイワオさんは興味を持ちました。
「ふむ。願いを叶えるのか。
すると人形は判りましたと言い、イワオさんの手の中で小さな指を回しました。人形の姿は変わり、まるで紳士の
「私は悪魔です。今は訳有りましてこのような小さな姿ですが、願いは叶えることができます。では非日常をお楽しみ頂くために、
「成る程、悪魔にしては随分と代償が軽いな。非日常の内容はどの様な物なのか。」
「それは旦那が決めて頂いて結構ですよ。大量の金貨も誰からも愛される人柄、全く別の美しい体だって手に入ります。」
イワオさんは
「生活環境は全く変わることがなく、
「では
悪魔は再び小人のような人形に姿を変えました。
イワオさんは岩の心臓を持ち上げました。自分一人の命はこんなにも重いのかと驚愕したイワオさんでしたが、落とすわけにもいきませんので、地面を踏み締めて腰を丸めてぎゅうと抱え込みました。
誰がいつ来るかも判らずに、空気がぐんぐん熱を帯びてくる中、イワオさんはただじっと自分の心臓を抱えていました。
おしまい
イワオの願い事~人から人へ~ 亀麦茶 @chart_clock
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