第4話 雀の国~スズメノテッポウ・スズメノカタビラ

 小さいものに「スズメの…」とつける事が多々あるようだ。茶色い、かわいらしい穂をつけた植物には「スズメノテッポウ」という名前がついている。これの名前がスズメノテッポウだと知ったのはずいぶん後だ。だから、小学生の頃は、ガマの穂というのは、これの大きいものだろうか?と想像する為の手がかり位でしかなかった。

 それでも可愛いものは可愛いので、そこそこ好きだった気がする。穂の部分を持って引き抜くと、穂を包んでいる葉と擦れてキュッと音がする。

 スズメノテッポウは、まだその形状から命名の由来が想像つくのだが、これがスズメノカタビラとなると、もう訳がわからない。小さな穂を沢山つけているが、稲のように伸びてはおらず、短い穂が集まっているような、何とも形容しがたい形状である。これがなぜ帷子かたびらなのか。

 帷子に湯をつければ、湯帷子ゆかたびら、つまり浴衣である。単衣ひとえの着物の総称を帷子というようだが、調べてみたら本来は夏用の麻の単衣の小袖を指す言葉らしい。スズメノカタビラとは、雀用の小袖ということになる。

 雀が小袖を着て踊る様を想像すると何とも愉快だが、実は、私はつい最近までこの帷子を鎖帷子の事だと誤解していて、雀の鎧だと思っていたのだ。雀の鉄砲と組み合わせると、戦いの支度が出来上がる。はたして、雀が戦うのは、イナゴか、それとも人間か。近年、雀の数が急速に減っているのだが、小さな雀の兵隊さんは雀の国を無事に守り切れるのだろうか。




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