第6話 醒めない夢 

6.

~深山康文と果歩の結婚生活 ③ ~



 夏も終わり来月には娘の1才の誕生日を迎えよういう頃

夫へのメールに、どれだけいられるか判らないけれど

できるだけ家族で暮らせるよう娘が1才を迎えたら

娘を連れてそちらに行こうかと思ってる旨を書いて

送信した。



 一人暮らしで寂しく不便な生活を過ごしている夫は

さぞかし喜ぶだろうな、なんてちょっぴりうきうきした気分で

夫の返信を待った。



 しかし待てど暮らせど・・その日返信はなかった。

 メールを覗く暇も無い程忙しいのだろうか!


 夫からの返信は私が送信した日から3日も過ぎての

ことだった。



 普段の何気ないメールでもこんなに時間をおいて返ってきた

ことがなく、なんで?と訳の判らない不安に包まれつつ

私はメールを開いた。



 「今年の正月は赴任早々で帰国できなかったけど、来年の

正月は暮れから帰国して必ず家族でお祝いして新年を

迎えるようにするつもりでいる。

 今は仕事のほうがとても忙しくてこちらに来てもらっても

家族の団欒は難しいと思う。

 それなのに小さな子を連れてわざわざ来てもらうのは

なんだか忍びないよ。君の気持ちはうれしいけど、赴任も

2~3年で済むかもしれないしね。


 俺ひとりでなんとかやっていけてるから

心配しないで・・ネ? 」


 当初は毎日必ず1度はメールでのやりとりがあったけれど

今では1週間に2~3度の頻度になっていた。


 私もどっちかというとめんどくさがりやでその上乳飲み子を

抱えてもいたので、却って助かってたくらいなんだけど・・



 行く前も行ってからも言葉の合間あいまで寂しいという

言葉を聞いていたので、何がどうってことでもないのかも

しれないけれど・・

何か、ひっかかりを・・返信メールから感じたのだった。


 だって、わたし今ちょうど仕事してないんだよ?

 娘だって当分幼稚園や小学校まで家で自由にいられる身

なんだよ?


 私が行きたくないって話しなら別だけど、夫からして

来なくていいよぉ・・ってどういうこと?


 2~3年って、、ちょっ、、あなた、、私や娘の事は全然

恋しくないってことなの?


 なんか夫と自分との温度差に、私の心の中にひやりとしたものが

生まれた。


 そして私は決めた。


 やんわりとではあるが、来なくていいと言っているのだ。

 押しかけて行くこともできまい。



 しかし、数日間という日程で夫の新しい住処、職場を見に行くこと

・・は妻としては当然のこと、ううん権利があると思う。



 私は娘を母に預け、一抹の不安を抱えつつ夫の住む国へと

旅立った。





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