フラスコの中に雷落としたら

αβ

フラスコの中に雷落としたら

 水の入ったフラスコをガスバーナーで加熱する。沸騰した水は気体となりフラスコと繋がったガラス管を伝ってもう一つのフラスコへと移る。このフラスコにはメタン、アンモニア、水素が満たされており通り抜けた後水蒸気を冷却する。そして液体に戻った水は再び最初のフラスコへ戻り循環が繰り返される。


 さて、この循環に変化を加えよう。気体の入ったフラスコの中で放電を行えばどんな変化が起こるだろう。


 1週間休まず循環を続けたフラスコの中に入った液体は赤褐色に変化した。その成分はアミノ酸、これはタンパク質の源でタンパク質は生物の素となる。すなわち、その液体は生命のスープとなっていたのだ。


 今を去ること40億年、地球上で同じことが起きていた。海から自然に蒸発した水が、酸素すらない死の大気と混ざり合い、そこに雷が落ち変化して、海には少しずつ生命の素が満ちてゆく。無限に思える循環が繰り返されてはぶつかり、混じり、変化して、ついには原始の生物が誕生したのだった。


 破壊の象徴のような雷は、実は生命の父親だったのかもしれない。

 

 現在、この説は実際の原始地球の気体と異なっていた可能性が高いため否定されており、別の方向から生命誕生のシナリオが考察されている。しかし、生命誕生を解明することに対しての科学の挑戦としてその価値が褪せることは決してない。

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