ねむるこころのおくそこに。

有沢 木蓮

第一言目 『夢』

大好きな人の内の1人が、いつにもないくらい優しくて、一緒に抱き合ったり、キスしたり、エッチしたり、たくさん色んな事をしたんだ。


幸せだな、幸せだなーって思ってたら、いつの間にか机に磔みたいにされててね、天井と君しか見えないの。意地悪な君のことだから、括りつけてドSに攻めてくれるのかなって思っちゃった。


違ったね、あなたはそのままペンチを持って、私を殴りました。抵抗できない私から血が吹き出して、鼻が潰れて、頭に穴が空いてぐずぐずに皮膚が歪んでも殴って、私は君がそんなに何を溜め込んだかすごく心配だった。


漸く止まって、君の心が晴れたかなと思えば、今度はわたしの歯を叩き折って抜いてったね、君の耳元で可愛く囁けないのは残念だけど、君の気はまだ済まなかったのかな、私は貴方に何も出来てなかったのね。


そしてそのまま奥歯をドライバーで突いて削って抉り出して、ようやく手が離れたかと思えば、君は醜い私を抱き締めてくれました。すごく優しいよね、やっぱりすこしストレス溜まってたんだね、ごめんね。


私の事を笑顔で抱きしめる君はやっぱり可愛くて太陽みたいでした。


夢じゃなければよかったのに。


目が覚めた時には絶望でいっぱいでした。君と離れてしまう、君の声が聞こえない、すごく寂しかった。カーテンの向こうはどんよりした曇り空で、青い空も眩しい太陽も見えず、夏の昼間のような君をハッキリと思い返せず、私は思わず泣いてしまいました。

こんなに愛しいのに側で香りを確かめることも温もりを感じることも出来ません、まして、天気で貴方を思い返そうとする私の浅はかさにも歯痒さがあって、どうにも気持ちが悪くなった。


このままじゃいけない、と私は布団から飛び起き、携帯を手に取りました。向かうのは『仮想世界』、自分ではない自分で他人と接する携帯から繋がる異次元。


そしてもう一つ、そこで知り合った人たちとの会話の場所。



私は、ネットでしか、むしろそこですら本当の自分で存在できない情弱な女です。





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ねむるこころのおくそこに。 有沢 木蓮 @Magnolia_flowers

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