第9話 悪魔

「これ。見たことあるでしょ」

遥が三叉槍を拓也に突きつける。イラストなどで見るよりも鋭利で、本物そっくり。いや、本物なのかもしれない。

「それとこれ。今回の任務書。天使も悪魔もこれを見て動くの」

そこには見たことのない字が並べられており、とても読めるものではなかった。

「あと、髪が紅いのも悪魔の印。私は天使から堕ちたから一部だけ紅いけど、元から悪魔の連中は髪の毛全部紅のやつもいるし」

「は、はぁ…」

ここまで具体的に言われてしまうと疑うことを諦めてしまう。もし、これが作り話なのだとしたら、遥の口ぶりは女優さながらである。

「お前…全然学校とキャラ違うよな」

「悪魔ってことバレていいのあんたにだけだし。学校では大人しくしてるの」

女怖い。てか、悪魔怖い。もうどうしたらいいのか分からない。

「素朴な疑問なんだが…天使とか悪魔って全員お前みたいに人間の形してんのか」

「んー。基本はそうだけど、人間界に下りるとさらに人間らしくなった気がするかな」

なんだか不思議な生き物がうちに来てしまったことだけは間違いない。漫画やアニメでしか聞いたことのないような話が今 目の前で起きている。夢なのかもしれないが、とりあえずこの堕天使とやらの面倒を見つつ、幸せにさせられなくてはならない。そんな謎の仕事を負うことになった拓也は、とりあえず遥の話を信じてみることにした。


2人の同居生活がゆるりと始まった。

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