あの音

薄命

あの音



 さて、みなさんは聞き覚えのある音はどのくらいありますか?

 僕が体験した「音」についてのある出来事を話したいと思う。

 その事件が起こってしまった2012年に遡る。その年は日本一大きい電波塔が建った年だったけなぁ。僕が東京に仕事の関係上住むことになったとき、浅草の雷門へ行ったついでに見た覚えがある。その大きさにビックリして写真パシャパシャ撮ってたなあ……まあそんなことはどうでもいい話だが、いきなり東京に転勤になったからまだアパートすら借りてない状況だった。慌てて東京に住んでる友達に電話して10日ぐらい住ませて貰えるよう頼んだ。すぐにいいよ、と言ってくれた。今でもほんとにいい友達を持ったと思う。

 東京での仕事が始まるのにまだ時間があったので観光をした。東京に近いところに住んでいたが観光をしに行ったことがなかったぶん楽しかった。

 夜になり、部屋を貸してくれた友達とビールを飲みながら昔の思い出を語りあっていたが、眠くなり別々の部屋に行って寝ているときに僕は夢を見始めた。それは、僕がその部屋で寝ている夢だった。ドアが勝手に開いて誰かが僕の頭の横に来て座ったような音がした。目を閉じて寝てるふりをしていたが若干震えながら恐る恐る目を開いてみると黒い服を着た女の人がいた。顔はモヤがかかっていてよく見えなかった。そのときどこからかファーン、ファーンというような音が鳴っていた。どんどんその音が大きくなっていく一方、女は口元が動いていて何か伝えようとしているようだった。そこで目が覚めた。気味が悪いなぁと思って友達に話したけどそんなに興味を持たれなかった。それから日が過ぎアパートに住み始めた、仕事先で残業し終わって終電の電車を座って待っていたとき、ふとあの時の夢のことを思い出した。そしたら目の前にお通夜に着るような真っ黒い服の女性が来た。黄色の線を超えていた、電車がすぐそこまで来ていた。あのとき聞いたような音が近づいてきた。ファーン…ファーン…通過する電車の音だった。そのことにようやく気づいた。女はこっちを振り向き線路に落ちて電車に轢かれた。その時の女の表情は何故か笑顔だった。

 その後、新聞に人身事故として取り上げられていた。

 あれから僕は些細な夢でも気にするようになっていた。

 夢は科学で証明できないことが多々あります。

 夢には気をつけてください。


 目の前で誰か死にますよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あの音 薄命 @SONIC

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ