すいません、幽霊も困惑するんです(泣)

kaku

すいません、幽霊も困惑するんです(泣)

 私は、BL暦軽く十年以上いっている女である。

 外野の声なども聞こえず(と言うか、無視して)ずかずかとこの道を驀進してきたことに、後悔はない。

「姉ちゃん……でも、自分の職業を自覚した方がいいと思う」

 だが、同じ子どもを相手にする仕事の妹の言葉は、少しだけ耳が痛い。

 まあ、それも少しだけだ。

 でも、婚活中の今は、真っ当な人生を送る方法を考えた方がいいのかもしれない。

 しかし、友人は言う。

 「いや、それは無理だよ」と。

 彼女の断言は、私のとある話を聞いたせいである。

 それは、こんな出来事だった。

 二連休の時に、私はホテルに泊まっていた。

  その日も、私はいつもと同じようにベッドに入った。

 そして眠る前に、本を読んでいた。

 もちろん、ゲットしたばかりのBLだ。

 その本はとってもいい作品だった。

 いい本を読んだ時は、誰かと感動を分かち合いたい気持ちは、きっとみなさんもわかってもらえるだろう。

 でも、この時の私には、相手がいなかった。

 その日一緒にいたオタクの友はもう自宅に帰った後だし、つまんないなあと思いながら、目を閉じた瞬間、目の端に、何かの人影が見えた。

 それと同時に、鳥肌が立ち、おでこの真ん中の部分で、女性の人が私の顔を覗き込んでいることを感じた。

 目を閉じているから、顔はわからない。

 でも、誰かいるのがわかり、それが女性だということはわかる。

 そして、私は言ってしまったのだ。

「BL小説って、最高だよね!」

 正確には、頭の中でそう言ったのだが、相手が固まったことだけはわかった。

 だが私は、少しでもさっきの感動を分かち合いたいがために、読んでいたBL本の素晴らしさを語り続けたのだが、相手は消えてしまった。

  何のコメントもなしに。

 私は、少しだけ哀しかった。

 きっとBLを知らない幽霊だったに違いない。

 「残念だなあ」と、その話をした後、友人に言うと。

「いや、普通の反応だよ。って言うか、あんたやっぱり真っ当な人生は無理!」と、断言されてしまった。

 いいじゃないか、好きなんだから!

 どこかにいないだろうか、BL好きな幽霊さん。


 

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