第8話大雨大洪水警報

○日ノ岡、疎水

   疎水の入り口。

   木村、高田、亜紀、お弁当を食べている。

   そこに山本、原田、太一があらわれる。


亜紀「どうだった?」

太一「すげえ、大洞窟!」

木村「そんなに大きいの?」


   原田、空気口を見つめている。

山本「前より数倍堀広げられている。ほぼ完成だ。

 後は爆破の仕掛けだけだ」


原田「ちょうど10歩ぐらいだ。こっち向きの穴は、

 この疎水の真下に来ている」 

高田「もう間違いないね。そんでいつやの?

 爆破の時て?」



  皆が固唾を飲んで山本を見つめる。

山本「まず祇園祭がすんで梅雨明け時の集中豪雨の日」

木村「ここの疎水も増水してすごいやろね」


原田「それで爆破はいつ?」

山本「南禅寺の水が止まった時」

高田「それやったら分かるわ」

   皆、うなづく。


○変面の里、全景


○広場

   10周年記念の垂れ幕。

   変面一味が祝宴をしている。

   全員ジョッキを持っている。

   あいさつに立つ変面。


変面「というわけで全てはこれからだ以上!へんめーん!」

全員「へんめーん!」

   全員、乾杯をする。


○清水寺、本堂

   住職と出羽、亀山が話している。

   住職、手に手紙を持っている。

住職「こんなのが来とりました」


   出羽、手紙を手にして広げる。

文字『水無月の長刀鉾に誘われて流れ去り行く清水能舞台』


出羽「いつのことです?」

住職「けさ、枕もとの柱に矢文が」


出羽「矢文?」

住職「ええ、かぶら矢というのでしょうか?ヒューと大きな

 音がして、悪い夢を見てたもので飛び上がりました」


亀山、白手袋をして経机の上にある矢を取り上げる。

亀山「これですか?」

  亀山、矢をかざして羽根に変面のマークを見つける。


出羽「まちがいない。やつらは本気だ」

亀山「祇園祭が終わったら厳重警戒ですね」

出羽「本部長にこれを見せてお願いしてみよう」


住職「よろしくお願いいたします。能舞台が流失する

 なんて事は絶対にないとは思いまするが」

亀山「しかし、金閣寺や渡月橋のことがありますから」


出羽「そうや、油断はでけん」

   3人、うなづく。


○フラッシュ、祇園祭、宵山の風景


○フラッシュ、山鉾巡行の風景


○フラッシュ、雨に咲くアジサイ


○シネマ村、オープンセット脇

   大雨である。

   待機中の木村、高田、亜紀、太一。

高田「よく降る雨やねえ」


木村「そろそろ警報が出るわよ」

   山本と原田が加わる。

原田「さっき大雨洪水警報が出た」



木村「ほんと?」

高田「いよいよやね」

山本「今回京都府警は全然動かんらしい」


原田「この雨の中危険やもんな」

山本「今回は非常に危険。だから我々も

 安全な場所で見守ろう」


高田「そやけど南禅寺の疎水が止まる所見届けたい」


原田「そやな」

山本「どっかいい場所探してみるか?」

皆「賛成!」

   皆、笑む。


○京都府警本部、正面

   大雨である。


○同、本部長室、内

   本部長と出羽、亀山がいる。

本部長「・・というわけで南禅寺の疎水が止まったら

 すぐに知らせてくれ」


出羽と亀山「は、かしこまりました」    

二人、敬礼して去る。


○疎水土手、下流    大雨である。    

出羽と亀山が雨合羽を来て歩いてくる。

出羽「すごい水量やな。これが無くなるんかいな?水無月」

亀山「こんな警報が出てる時に。誰もいませんよ」

出羽「そんなこと分かってるワイ」

亀山「こんな所にあれ?だれか、テント?物好きがいますよ」


出羽「なに?」

   出羽、不審げにテントを見つめる。

出羽「消防団だろう?」


亀山「そうみたいですね。そんならこの辺で」

出羽「そやな。交替で休憩しよう。下に自販機あったやろ?」

亀山「行ってきて下さい。ここで見張ってます」


出羽「ふむ。水無月とはこのことか?」

   出羽、下流へ戻る。


○疏水土手、遠景

   雨の中上流と中流にテントが見える。

   疏水、すごい水量である。

  上流に忍者達が現れテントに入る。


   太一が知らせに行く。

   出羽が交替に来る。


   疏水の水が止まる。

   出羽と亀山、驚き携帯をかける。


   中流のテントから6人が出てきて驚く。

   ほどなく疏水に水が戻り始める。


○疏水土手中流

   雨。

   出羽と亀山が携帯中である。

   出羽、驚きの顔で、

出羽「ええっ!清水寺が!?」


○清水寺、能舞台、裏手

   大雨。

   大きな岩盤の周りから水があふれてくる。

   ボンと音がして岩盤がゆっくりと倒れてくる。


○同、正面

   大量の水があふれ出て、あっというまに

   清水の舞台を呑み込み、清水坂を流れ下る。


○清水商店街

   大雨。シャッターの閉まった商店街。

   突然濁流が押し寄せる。

   大量の材木が流れ下る。


○フラッシュ

   五条通から鴨川へと流れ下る濁流と材木。


○海

   大きなタンカーが見える。


○タンカー

   変面のマークが見える。

   前半分に木材の山。

   後ろ半分で能舞台を再建中。


○同、操舵室

   変面と一味がいる。

変面「出発!面舵一杯!」

全員「おーっ!」

   全員右手を上げる。


○海

   大きなタンカーの後姿。


                  -完-

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消えた清水能舞台 きりもんじ @kirimonji

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