第47話エメラルド

「いやね、この人、殺人の記録を付けてる。頭の中身を抜いてって書いてあるけど、何処に捨てたのかしら」夏子が言う。

「やめて下さいよ夏子さん、気分悪くなりますって」薫風が言う。

「きっと倉の中に未だあるはずよ。探してみる?」私はそう問うが、薫風の顔が咄嗟に青白くなった。

「私の・・・友達なんですよ・・・?」言葉尻に疑問符を付けるように薫風はそう言い瞳を閉じた。

 しばらくすると薫風はまた日記を開いた。

 日記の続きはこう書かれている。

◯月B日

 また少女を殺した。今日は夜のプールで溺死させた後、首を外し持ち帰った。

 これで二つ目だ。私はこれをいくつ集めると満足するのだろうか。少々不安である。

 死体は学校の入口にワイヤーで吊るした。プールで溺死させたせいか水滴がポタポタと落ちていた。吊るした理由は濡れていて可哀想だったからだ。早くお日様に当たって乾くと良い。

 二つ目の首を瓶に入れ終えると、両方の首を見つめてみる。

 やはりくるくると周りまばたきをしていた。私は何か音楽が聞こえる気がした。それは宗教音楽のようであり同時にヒーリングだった。

 私は魂の浄化を願う。

 だから少女の首を、人形の首を、集めるのだろうか?

 ああ、私の王国を作りたい。

 それにはもっと首を集めなければ。



「また、殺してるわね・・・。何人殺したんでしたっけ、この世界では」

「二人です。どれも私の学校の生徒の・・・」

「そして夏子、あなたの世界でも人を殺し続けているのでしょうね」

「そうね、言わずもがな」

 また日記の続きを読む。未だ続きがあった。

◯月C日

 こんにちは前とは異なる世界。ここは私の王国。人形と人間が半々で暮らす絵本の世界のようだ。この世界では願えば何でも叶う。そもそもこの世界自体が私の願った世界なのだから。

 始めは驚いた、だって私の屋敷が用意されていたのだから。この世界のたどり着いた時、黒服の男が現れて、私をブルーの乗用車で屋敷まで連れてきた。黒服の男の名前は異国風の名前でジェームスと言った。

 その屋敷には人形が大勢水槽の中に生きたまま裸で入っていて水中で平泳ぎをしていた。エメラルド色の水に光に、ただ私は圧倒された。

 ただ、注意されたことは生きた人間をその水槽に入れると猛毒で死んでしまうということだった。だから私は入ってはいけないと言う。

 それでいいじゃないか、私は只見たいだけだ。

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硝子とルージュ 眠る乃符時個 @grandsilversky

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