第三十一話 吸血鬼との出会い。

――黒城。


 私はキルシー。現在何故かハウスキーパーをやっているわ。

 シャルマータの一員。なんとか仲間に入れて貰えたみたいなんだけれど、掃除をしているのは私だけ。別にいじめとか思ってないし、いいんだけど。

 いつも他の団長含めた八人は談笑するか散歩に行くかで、なんだか心底楽しんでるみたいだけど。その目的は一応は世界制覇らしい。

 大それた夢だと思う?、私も少しはそう思ってる。だって八人…私を入れても9人なのよ。

 私は私で目的のアニマ様に会えて喜んだし、これからいろいろな事を手助けして行きたいなっておもってるんだけど、なかなかアニマ様に構ってもらえない。


「なかなかうまくいかないわね…」


「なにがですか?」


「ふわ!?」


 驚くキルシー。いつの間にか傍らに立っていたのは鈴鹿。深紅の二本角を頭部から生やしいつもの赤い和装姿。


「うまくやっているかどうか、見に来ましたよ。勿論掃除ではなくて」


 からかう様に微笑む鈴鹿。ここは階段の踊り場、立ち話である。


「今のところ掃除しかしていないですけど……」


「それでも主が認めたのですから立派なシャルマータの一員でしょう、私たち七人が特別なので多少の疎外感は感じるかもしれませんがね」


「そんな事はないです…。はい。

 私はアニマ様の役に立ちたいと思っているのですが……」


「アニマのですか。それは無理でしょうね」


「そんなバッサリですか…!」


「私たち七人の役に立つことはあまりできないと思いますよ?」


 確かにそんな気はしていた。これは鈴鹿の意見だが他の六人もきっと同じ思いなのだろう。キルシーに向けられる視線が期待を孕んだものが一切ないことはキルシーも気づいている。

 興味すらもたれていなさそうだとも。


「それは、やっぱり……」


「ええ。彼方様が私たちの求めるものですから。何か他の望みを追い求めた方がいいんじゃないですか?」


「私の望み……ずっとアニマ様に憧れて、初めて見たときの強さに……それで死にそうになっても追い求めてきたんです」


「強さに憧れるなら、修行をしてみるとか。強さに憧れるのは強くなりたいからでは?」


「それもなりたいですけどね、魔物ですし。アニマ様に振り向いてもらうのは諦めろってことですかね……」


「アニマを追ったところで何も返ってこないでしょうしね、彼方様とアニマの仲を近づける何かを貴方が持っているのなら多少見向きもされるかもしれませんが」


「それは……」


 しょんぼりと、肩を落とすキルシー。

 恋愛みたいな会話になっているがキルシーは純粋な憧れで振り向いて欲しいだけなのだ。


「では彼方様に認められる程の功績を見せるというのはどうですか?、それならアニマも他の仲間もそこそこ認めるような感じになるような、ならないような」


「それでもだいぶあやふやなんですね……でも、そうですね。今のところ御掃除だけですけど……機会があらば是非!」


 焦ることはない。まだ入団して間もないのだ。

 仲間のこともほぼ何も分かっていない、これから多くのことを知っていけばいい。


 キルシーは決意を新たに一層掃除を念入りに行った……。





――帝国キャヴァリエ。


 霊山は左側にドワーフ国、右側にダークエルフ国、そして下に連龍国の周囲に広がる山々がある。

 霊山の麓には辿り着いた青葉と大原であったが……。


「結局大した情報は無かったな……。というか隠されただけな気もするが」


「やっぱり自分で調べないと教えてくれない物なのかな」


 麓で一羽のハーピィと出会い、用件を告げ、暫くすると言伝が帰ってきた。

 曰く、我ではその事柄については知り得ない、とのこと。

 無理矢理押し入って直接聞くこともできたがわざわざ今敵対することも無い、とすごすご帰ってきた二人だった。


「この世界は伝説や神話もばかにならないし、そっち方面から調べてみるのもよさそうだが」


 書物に記されている神話の項目に書かれた事柄もそれなりの者に聞けば過去実際にあったことだと言うのが多々あった。


 帝国へ帰るなりエルフの歴史、と題された帝国内書庫の本を借り出して読んでいる青葉。

 隣ではドワーフの歴史を読んでいる大原。

 二人は別室だが青葉の部屋に大原が来ている。


 二人がまだ知らない事柄は多い。

 二人だけが知らないわけではないが未知の可能性を持つものがそれぞれ点在している。

 エルフの秘匿術式の一つとされる神典術式、森羅魔法。ドワーフの神格殺しなどが代表的な神域武装。

 これは自分たちが求める次元移動とは異なるが海帝国の終天常世の海。

 どの国も神は創造主として信仰しているがそれはそれとして、神に匹敵するほどの武器等の制作に勤しんでもいる。いざ他国と戦争になった時に切り札が無ければ蹂躙されるだけだからだ。

 特に今はなりを潜めている上位種勢や魔王等。警戒すべき種族はどの国も多い。


「ありがちな所だと全ての国が同時に切り札を使えばその力の反動で次元が、とかなんだが」


 前世の漫画知識。


「それ見つからないのと同じ様なものだと思うな……難しすぎる」


 2人の苦悩はまだまだ続く。




――エルフ国。



 エルフ国は木々が生い茂る国。建物もみな木製か大樹をくりぬいてできている。

 翠一色の森の国に、怒気が満ちていた。


 国民は厳しい顔をしているものが多い。

 ひときわ大きい大樹の中に作られた中央王宮ではその怒りの大元、アドリアーネでの一件について話し合われていた。


「アドリアーネ……エアハートからの情報は既に全員眼を通しているな。攻撃も封印も効かない敵が出現したとのことだ。名前はレイナス、所属組織はシャルマータというガムザ平野中央付近に位置する黒城が根城だ」


 冷たい眼光で淡々と話すのはマグネビア。周囲にはエルフ国の重鎮が座っている。楕円形のテーブルに全員が座っている、順番に序列などは特に関係なく、服装も多少豪華である程度。


「問題なのが、エルフの魔法も通じず、護衛隊の十数名が殺されたことだ」


 その言葉に全員が顔をしかめる。既にその情報は書面に目を通しているので全員が知っているが、その件についてなんと言ったものか、困惑している。


 一人の大臣が口を開く。

「エルフの魔法、といえど千差万別。まだ全てが通用しないと決まったわけでは当然ないでしょう。マグネビア殿のような実力のある者の魔法と通常の護衛兵の魔法は全くの別物。それに秘匿術式の存在もあり――」


「蛮族程度に秘匿術式を使うと申すか!?」


 重鎮たちが騒ぐ。秘匿術式はエルフの切り札。おいそれと使用するものではないとの共通見解がある……、ある者はある。

 秘匿術式、ひいてはエルフの行使する魔法に神聖視が強い者たちだ。


「資料をよく見られよ。人間と言えどユーリウス殿の魔法が通用しなかったのですぞ?、無論マグネビア殿の魔法も同様とは言わぬがそれなりの脅威と見て使用の検討もしておくべきだと思いますがな」

 

 大魔道士ユーリウス、現役を退いても魔法の質に年齢は関係ない。

 過去の名声は現在も轟いている、そしてエルフも認めるほどの魔法の力量も健在である。


「ユーリウスはどう見る?実際に交戦した感想を踏まえて話せ」

 マグネビアが視線を送る、その先には一人、同種族ではないが情報提供の名目で会議に参加させられている、治療を終え全快となったユーリウスがいる。


「儂?、そうじゃなあ……マグネビア殿の魔法については何も言えんが、少なくともエルフ以外の種族の魔法は一部を除いて効かないじゃろ。資料にも書いてある通り陰陽の魔法使いキュリスとそちらのエルフの護衛隊が合わせた神域の封印術式も平気な顔で抜け出たそうじゃしなぁ」


 キュリスの陰陽による消滅と封印はスキル経由の力なので一般に言う魔法とは異なるが便宜上問題ないので魔法として認識している。

 ちなみに一部を除いて、というのは大体は上位種格、超常の存在のことを指す。


 神にも届くのではないかと判断された程の高位魔法。それが効かなかった事実が大きい。


「まずその者はおいておき、他のシャルマータの団員を削るというのはどうですかな?ただの龍人などもいるようですし」


「問題の先送りになりますが、それも一理ありますな。その不死身の物を先頭に、集団で居るのは厄介ですしな」


「ねぇマグネビア、黒城に向けて先制として大規模魔法を放ってみない?」

 なれなれしくマグネビアに話しかけるのは二人しかいない、そのうちの一人、マグネビアの実妹のフレイア。

 他のエルフ同様白い絹のような流れる長髪に当然のごとく尖った耳、若々しい顔の作りはマグネビアにそっくりだ。

 ただその眼だけはおっとりとした印象を受ける。


「そうだな……かなり後の話になるがそれもいいだろう」

 あまりいい案だとは思わなかったが、マグネビアは家族に甘い。

 咎めるところや否定するところを誰も見たことがない程に。


「我らエルフはこの事態を静観することと決める。以上会議は終わりだ」


 一応、異議はあるかと周囲を見渡すマグネビア。

 会議の意味があったのかないのかよくわからないが、全員の意識の共有が図れれば十分なのかもしれない。

 大した意見が出なかったときは一応会議をして意見を募ったという名目のための会議になることが多い。

 結局はそういう時、最後にマグネビアの決定を聞いて会議は終了するのだが、不満に思っているものは居ない。


「ええっと、静観というのはどういうことですかいのぉ」

 いつもならそこで終わる会議だが、今回はユーリウスが口を挟む。


「ユーリウス。私たちは護衛隊数十人の死者しか出しておらぬ。ゆえに、未だ動く事態ではないのだ。後の合同会議には出席する故、安心しておけ」


 プライドの高いエルフの民は護衛隊が負けたことに怒りを募らせているがマグネビアの決定に意を挟む者は居ないだろう。


「救いの手を差し伸べてはいただけませんかのう?、儂の知る限りエアハートの二つ名ではちと相性が悪い相手……このままだとエアハートがですな」


「愚鈍なつけが回ったと思え。愚かさを理解しろ、世界を見渡せ。この世界、同じ種族がわざわざ、いがみ合い、国を三つにまで分裂する恥を晒している種族が人間以外にあるか?、エルフは人間蔑視が多いと言われるが、何も貴様らが魔法の真似事を神に許されたからではない。同族嫌いの間抜けだからだ。

 団結し、なお手が届かぬというのなら話を聞く価値もあろう。

 これは貴様より国王に言いたい言葉だったがな」


「………」


 ユーリウスは返答に対しての一礼をするのみ。何も言い返せる内容ではない、その通りだからだ。

 長い歴史を紐解いても同種族で国を分割した種族などありはしない。

 

 だがマグネビアの考えを知れたのは行幸。国王に伝えて合同会議での意見や立ち位置を考えてもらう事が出来る。

 ユーリウスは無言のままアドリアーネに思いを馳せる。


 ユーリウスに放った言葉と共にマグネビアが今度こそ退出し会議は終了した。




――ガムザ平野。


 黒城の出現でガムザ平野の環境は変わった。勿論黒城の建っているその周辺だけだが、その噂自体はガムザ平野中の魔物に広がっていっている。

 平野の代表的な知性ありし魔物、セントールは言葉が話せるため、特に情報の伝達範囲が広く。アドリアーネ壊滅に黒城の住人が関わっていることも既に伝わっていた。

 平時ならそんな途方もない噂信じることも無いだろう、何故ならエアハート中の熟練冒険者が集まる最高峰の都市だからだ。

 だが今回の噂には多少の証拠があった。

 城門付近の平野から見えたユーリウスとの交戦内容や、突如出現した巨人など。その姿を見かけた魔物はそこそこいるのだ、だからこそ不気味がられている。謎の黒城の住人達。

 そんなアドリアーネに匹敵するのだろうかと見られている黒城が、平野のど真ん中あたりに鎮座していては、もとからそこが縄張りであった魔物なども他に流れることになるし、様々な緊張状態にあるのだ。


 そんな黒城内で一つの問題が発生していた。


「建国宣言……わすれてたっ!!」


 いつも通りラウンジで八人談笑していた最中、彼方は思い出す。建国するかもという手紙は送ったが、アルマンドの奇襲等があって舞い上がり、どの国にも建国しましたよという通知を送っていないなと。


 掃除を終え、余った分の椅子を持ってきて八人に加わっていたキルシーはそれに何か意味があるのだろうかと小首を傾げ。


「建国宣言は何が狙いなんでしょうか?」

 素直に質問する、最近は八人全員とそれなりに打ち解けたと思っている。まだ上げた功績は掃除だけだが。


「なんか城一個建てただけだとよくわかられて無さそうでしょ?、だからこれは国なんですよーって教えてあげないとね。ついでにガムザ平野全部が領土ってことにしておこ」


 ついででガムザ平野全部を領土って宣言してしまうのか、とキルシーは内心驚く。いまだに直接見たのはアニマの力の片鱗のみだが他の人たちの戦力はどれくらいなのだろうかと気になってきていた。

 とはいえキルシーはアニマと、そしてその属する組織シャルマータと添い遂げると決めたのだ、それゆえ如何に大それて、滅亡しか待っていなさそうな事を言い出してもついていこうと考えている。


「ここだと平地のど真ん中ですから逃げるときはどうするんですか?」


 当然の疑問と、思って聞いたのだが。


「逃げて面白くなる時ってあんまりないよ?」

 

 んん?と意図を理解しかねる。面白い云々ではなく自分の命を守るための手段として逃走経路を作っておかないのかと聞いたつもりだったのだが、どういう意味なのだろうかと、頭を捻る。


「エアハートは顔見知りだし直接使者を送ってみようかな、他のとこは手紙でいい気がする」


「エアハートは今とっても警戒状態にあるんじゃないですか?、私を救い出してくれた事も気づかれてると思いますし……」


「気づかれてるって……そりゃぁ、そうでしょ……?」

 何を当たり前のことを言ってるんだという視線を八人分受け止めてたじろぐキルシーだがどうやって助け出されたのかを牢屋にいたために知らなかったのだ。

 八海大蛇も特に何も伝えていなかった。

 余りにもレイナスが悠然と歩いて助けに来たため見つからずに隠密行動をしてきたのかと思っているのだ。


「パンチ聞いてる感じがするしキルシーと誰かに任せよっか」


「私ですか!?」


 一度救出できたというのにまた捕まるリスクを冒して同じ場所に行くという。最大の挑発だが危険度が高すぎる。


「まぁ慣れなさいってっ、こういう感じなのよっ」


「アニマ様……」


「じゃあ人選を決めて……行動、開始しましょうか」


 たまに見る彼方の悪い笑い顔。とんでもないことをしようとしているって気持ちが全くないその顔を見ると不思議とキルシーも心に余裕が生まれていく。

 他の七人も同様にどんなお土産が良いか、などと呑気な話をしているから尚更だ。

 一度救出されている身でそんな窮地にわざわざ飛び込んで命を危険に晒さなくても、と喚きはしない。

 隠密に長けているとか、いろいろ方法があるんだろうと思うから。


「折角だし、連龍国はアニマね。それでー……エアハートにはやっぱり歌鈴かな。他の二か国は手紙でいいでしょ、多分」


 それぞれ了解の意を示す、ワンテンポ遅れてキルシーも。


「それでは、そのように。いってらっしゃいね」

 パン、と総指揮と肩書のついているニイアが手を叩くと同時、指名されたものが立ち上がる。


「いってきまーぁす!」

 アニマは二階ラウンジから飛翔する、そのまま玄関が煩わしいとばかりにガラス張りになっている壁を突き破り、長い尾をたなびかせ、力強く深紅と漆黒の羽で風を打ちならし飛んでゆく。

 その姿に羨望と尊敬、畏怖の眼差しを向け送り出すキルシーは恍惚としながらも一度も自分に視線が向けられることがなかったとほんの少し寂寥感に見舞われる。


「ほれ、惚けてないでゆくぞキルシーよ」


 歌鈴は黄金一尾を優雅に揺らして歩く。ラウンジから一回までは当然の如く飛び降りて一切音たてることなく一回へ着地し、キルシーも急いで羽をばたつかせ、掃除したばかりの黒城に自分の抜け毛が落ちないように気を付けながら後へと続く。




――上空。


 アニマは久しぶりに自分に活躍の機会が回ってきたと、はしゃいでいた。思えばハーピィ以来レイナスばかりが目立っていてなんとなく不満が溜まっていたような気がするのだ。


 浮かれていたアニマは黒城を飛び出ると一目散に上空を目指した、連龍国の位置は事前にファイから聞いて頭に入れている。 

 ちょうどそのあたりへ向かう様に鋭角よりの逆U字型の軌道を描いて黒城から連龍国へ到達してみようと思ったのだ。


 ぐんぐんとその高度を上げていく、雲を突き抜け更に上へと上昇し、一転。

 勢いを緩めると自重に任せ重力加速のみで斜めに一直線に落ちてゆく、狙うは連龍国中央。

 いきなり王宮へ突っ込んでもいいが、今は使者としてある程度の礼儀は尽くしてみようと、気乗りだけで行動してゆく。そうすることが彼方のためにもなると信じて。


 ところが、落下を続け雲を突き抜けたアニマが目にしたのは連龍国ではなく……。


「え、えぇっ!?ちかっ!?」


 面食らいながらも雲を突き抜けたそのすぐ先に出現した謎の大地へと、とりあえず降り立つ。


「なんなの?ここ?」


 平野の様に枯れた大地に木々がまばらに立っている。不時着したのは端っこだったのか、大地の切れ目が見える。

 周囲には霧のようなもやがかかり視界が悪い。


「連龍国って……陰気なのねぇ…って絶対違うしっ!」


 彼方様を連れてきていたら面白がったかなぁ、今からでも連れてこようかなぁと考えながらまずは視察と、大地の切れ眼と反対側の恐らく中心部であろう場所へと進んでいく。


 目の前に門が見えてくる。古びてひしゃげている鉄の門。

 左右に続く無機質な薄汚れた白い壁は終わりが見えないがそんなに高い壁ではない。


「た、たのもーっ!」


 なんとなく開かなそうな気がしたアニマは強めに門を突くと激しい音を立ててガシャガシャと門が奥へ吹き飛んでゆく。 

 さらには奥で何かに当たった音。家屋か何かを破壊したかもしれない、霧が濃すぎて見えないが…。


「誰も居ないのかしらー?」


 見えないながらも辺りを見回しながら奥へと進んでいく。

 そろそろ翼で霧を吹き飛ばしてしまおうかと考えていたところで声がかかる。


「何者だ?私の睡眠を邪魔しおって……」


 多少歩いて見えてきた、先程吹き飛ばした扉で破壊したと思われる貴族風の館からよろよろと足元覚束ない様子の男が現れる。

 館に見合った高級そうなスーツに身を包む緑色の短髪オールバックの長身。


「だれ?ここはどこ?」

 不用心に目の前まで歩き、首を傾げるアニマ。


「龍人、か?おかしいな。普通のものはここへ立ち入ることはできないのだが……。ここは動く夜の星。鬼人種、吸血鬼と呼ばれるものの住まう場所だ。名を〈エドワール〉という」


 気づけば真昼の空は掻き消え、満月が鎮座する空を背負って、その男は二本の牙を口から見せた。

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