「ありがとうございました」と言うしかない

 偶然、同じ企画の仲間として、結城かおるさんの作品を読む機会に恵まれた。そして、1つの作品を読んだら、「もう、止めようがない!」という状態で、次々と彼女の作品を読破していった。
 この『手のひらの中の日輪』で、最後となった。

 登場人物がそれぞれの物語りと被っていて、彼らがそれぞれの物語りで、主役となり脇役となって登場する。脇役で登場してきた時は、「まあ、お久しぶりです。お元気そうで何よりです!」って、思わず脳内会話してしまった。

 昔々の伝説の色も濃い中国に住んで、彼らとともに自分もその物語のどこかにいるかのよう。それも、結城かおるさんの確かな筆力に魅せられた結果。ああ、また彼らに逢いたいなあ…。それとも、またまた私の心を鷲掴みするような新しい登場人物たちであっても、いいかなあ…。

 登場人物たちと脳内会話が出来るようになると、そのうちに彼らを生み出した、まだお目にもかかったことのない作者の結城かおるさんとも、以前からの知り合いのような親近感を覚えてしまった。

 このような<深い読書体験>を味わせてくださって、「ほんとうに、ありがとうございました」と言うしかない。


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