最強ヒロインは独りじゃない!

何かの折りに、(主に商業出版において)「強いヒロインは可愛げが無い」とダメ出しを喰らうというような話を聞きました。そういう見方がどの程度一般的なのかはよくわかりませんが、そのような人に対して、「強いヒロインの物語は面白いし、何よりその強さがまた可愛いんだよ!」と、私は結城かおるさんの烏翠シリーズを挙げて力説したくなるのです。

おそらく、「強いヒロイン」に対して否定的な方の言い分としてあるのは、「その強さゆえに他人を必要としなくなる」という、物語としての面白くなさにつながるからでしょう。

しかし、本作の宝余はどうでしょう。
彼女は強いです。烏翠シリーズの他の強いヒロインも見てきましたが、恐らく私の知りうる限り、最強ヒロインの域です(笑)
しかし、彼女はその強さを、「人と関わっていく」ことに使っていきます。それは「紫瞳の国君」と呼ばれ忌み恐れられる夫との関わりでもそうですし、後に彼女が窮地に陥ったときに関わることになる様々な身分の人とでもそうです。

あまり書くとネタバレになりますが、その窮地の折りの宝余の強さがすごすぎて、ハラハラするより笑いが込み上げてきて、ツッコミメモを書きながら読み進めた覚えがあります(笑)

でも、何がそんなに面白かったのかと振り返って考えると、宝余は何もかも自分で切り開いているように見えて、実はそうではないのです。彼女の行動一つ一つが、人を巻き込み、巻き込まれ、そこに生じる関係により、彼女は窮地を脱していくのです。

そこに爽快感があり、文字通り「愛すべし」という意味での「可愛さ」があり、また、ツッコミを入れたくなるような普通の意味での「かわいさ」もあるのです。

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