第8話

 居間で正座させられているあたしには今、2つの選択肢があった。

 今日、この時間になった理由をある程度、本当のことを話すか、もしくはごまかしてウソをつくか。

 ……よし。ウソをつこう!


「えっとね、お母さん――」

「あんたウソつこうとしてるでしょ」


 ぎくり!


「い、いやだなぁお母さん。そんなウソなんてつくわけないじゃない」


 あたしは乾いた笑いを浮かべながら、鋭すぎるでしょと思っていた。

 これはもう、レストランの『注文の多い料理店』へ行っていたことを話すしかない。

 あたしはネコたちのことは隠しながら、『注文に多い料理店』へ行っていたことを話した。


「じゃあ、今日もそこに行っていたのね」


 あたしはうなずいた。


「あそこはネコがいるからあんたが行きたくなるのも分かるけど、夜遅く帰るのが危ないってのも分かるわよね!」


 あたしはまたしても神妙にうなずいた。


「休みの日に行くのまでは止めはしないけど、夜に行くのは禁止よ。わかった?」


 お母さんが言うことはもっともだけど、休みの日しか行けなくなると、一気に行ける日が少なくなってしまう。

 それはイヤだなぁ。


「え~っ」


 思わず口に出していた。


「え~、じゃないの!」

「はい! ごめんなさい!」


 反射的に謝ってしまった。


「なら、もう夜には出歩かない。わかった!」


 あたしはしぶしぶ、その言葉にうなずいた。


※※※


 夏休みの初日だというのに、問題だらけのスタートになってしまった。

 夏休みだから、『注文の多い料理店』に行こうと思えば毎日でも行ける。けれど、夏休みが終わったら?

 ほとんど行けなくなってしまうだろう。


「う~~ん」


 独りで頭を悩ましていても全然解決策が出てこない。

とりあえず、行けなくなっちゃうことも含めて、夕方になってお店が終わったころに大将たちに話をしに行こう。

 そうと決まったらやることは……。

 あれ? とくにないぞ。

 適当に時間を潰して、ようやく夕方になると、あたしは急いで『注文の多い料理店』へと向かった。

 昨日あの後、塾のない日の門限は6時にされている。

 レストランが閉まるのが5時だから、1時間しかいられない計算になるわね。

 5時ジャストに店内へと入ると、いつものコック帽にエプロンの怖そうな顔をした大将はまだ一人でもくもくと片付けに追われていた。

 自分勝手だとは思ったけど、大将の手を止めてもらうために、大きな声で、大将とアルの名前を叫んだ。


「うわっ! え? 何っ?」


 大将は驚いてとっさに身をかがめる。

 一方、看板ネコのアルはまだお店にはいなかったみたいで、奥からゆっくりと出てきて、「良子さん、いったいどうしましたニャ?」と聞いてきてくれた。


「それが大変なのよ!」


 あたしは昨日のことを包み隠さず説明した。


「ニャんと! 大変ニャ!」


 自慢の白い毛並みを逆立てながらアルは驚きの声を上げる。


「ああ、すみません。そうですよね。確かにお母さんの言うとおりです。自分がもっとしっかりしていれば。例えばちゃんと良子ちゃんを送るとかしていればよかったんですが」


 大将は顔に似合わず、あたしのことを本気で心配し、顔面蒼白になっていた。


「ううん。大将はしっかりしてくれていたよ!」

「そうニャ! そうニャ!」


 大将が夜にあたしみたいな女の子を連れていたらもっと大事になっていたかもしれないわよ!

 アルも同じ考えのようで、激しくうなずいてくれた。


「とにかく事情はわかりましたが……」


 大将は考え込んだまま、なかなか口を開くことはなかった。


「あたし、もうあんまりここには来れないのかな……」


 いつもはズバッと解決してくれる大将が今回に限っては困っているようで、あたしはもうダメかと思って一気に気分が下がっていく。


「すみません。今回の注文はどうにかならないか、もう少し時間をかけて考えて見ます。明後日は14時でお店を閉めるようにしますから、そのときにでもいいですか」


 あたしでは何もいいアイデアが浮かばないのだから、ここは大将に任せよう。時間が掛かるからなんて贅沢言っていられない!


「わかった。それじゃあ、また明後日来るわ」


 あたしもここに居るんじゃなくてどうにかしてお母さんを説得できないか考えてみよう。


「あたしももう一回どうにかならないか考えてみる。大将、アル。勝手なお願いでごめんね。よろしくお願いします」


 まだ門限まで時間はあったもののこの日はこれでお店から出た。

 入れ違いでダイや他のネコたちが『注文の多い料理店』へと入って行くのが見えた。

「良子さん、今日はもう帰るんですかナァ!」

「うん」

「じゃあ、また今度ですナァ! わっちたちはこれからムシ退治で食費を稼いでくるナァ!」


 楽しそうに手を振るネコたちを見て、あたしも絶対なんとかして、また来るんだから! 心から強く思った。


 自分でも色々と考えてみたけど、いい答えは出なかった。

 とりあえず、夏休みの宿題を終わらせておけば門限が長くなるかもと思って、宿題を始めてみる。

 あまり集中は長続きしなかったけど、それでもそれなりには進んだ。


「はぁ、どうなるんだろ。これから」


 独り呟いて、明日、大将がすごい答えを用意していることに期待するしかなかった。


※※※


 なんかあっという間に大将が何か考えてくれるタイムリミットの日になってしまった。

 あたしはというとひたすらに夏休みの宿題を片付けていて、ドリルはもう半分くらい終わっている。

 無駄な努力になりませんように!

 そう祈りながら何度えんぴつを握ったことだろうか。

 そして、その答えが今から出る。

 『注文の多い料理店』へと入ると、店内はキレイに片付いており、大将とアル以外には誰もいない。

 あたしはいつものカウンター席へと座る。

 すぐに聞くのも怖い気がして、クリームソーダを頼んだ。

 アルがすぐに持ってきてくれて、一口飲んでから、思い切って聞いてみた。


「大将。どう?」


 大将はまじめな顔で口を開いた。


「はっきり言うと、お母さんの方が正しいし、自分も良子さんが危なくなるようなことは避けたいとは思うんですけど、やっぱり、他のネコさんたちが淋しがるんで来てほしいんですよね」


 そう切り出すと、一呼吸おいて再び話し始めた。


「ようするにお母さんがここに来るのを容認してくれればいいわけですから、ここで何かプラスになることをしましょう! そこで質問ですけど、良子ちゃんのお母さんは良子ちゃんにどうなってほしいと思ってるんですか?」


 お母さんがあたしにどうなってほしいか?

 あたしは少し考えてみる。


「う~~ん」


 うなり声をあげて、頭をフル回転する。

 塾に通わしてくれている以上、勉強ができるようにはなってほしいとは思っているはずだけど、それは塾でやればいいわけで。あとは、そうね。女の子らしくなってほしいとかかな。

 考えた結論を伝えると、


「ああ、ならちょうどいいのがありますね」


 大将は嬉しそうに声を上げた。

 いったいあたしは何をやることになるのだろうか!?


「ではさっそく今日からやりましょう!」


 厨房へ連れて行かれ、派手な花柄のエプロンを渡される。


「花柄……、これ以外にエプロンは?」

「ないですよ」


 あたしの発言は一蹴された。


「ちゃんと人も食べられるものがいいと思いますので、今日はフレンチトーストでも作りましょうか?」


 大将は聞いているような口調だけど、あたしが返事をするより前にせっせと準備を始める。

 別に不満があったわけじゃないので、その様子をそのまま眺めていると、いつの間にか全て準備されていた。

 さすが大将、手際がいいわね。


「それじゃあ、自分が説明するから良子ちゃんが手を動かしてください」

「わかったわ!」


 フレンチトーストくらい楽勝、楽勝! と思っていたのが甘かった。

 分量は細かく指定され、火加減に焼き加減。包丁の使い方。さらには盛り付けの仕方までやることは山のようにあった。

 大将もいつになく真面目で、厳しかった。

 ようやく完成品第1号が出来た。

 出来たは出来たなんだけど……。


「えっと、大将、ぐちゃってしちゃってるけど何が悪かったのかな?」

「焼き加減と盛り付けかな」


 苦笑いを浮かべる大将。そんなにまで酷い出来なの!?

 まだ焼けていないときに乱暴に何度もひっくり返したり、お皿に盛り付けるとき、叩きつけるように置くのがダメって言われた。

 このフレンチトーストどうしよう。

 あたしが責任持って全部食べるしかないわね。

 そう思って手の上のお皿を眺めていると、


「ニャ、ボクが味見するニャ」


 アルは器用にフレンチトーストを一口大に切ると口に運んだ。


「ん。食感は大将のに比べるとまだまだニャ。でも味はおいしくできてるニャ」


 アルは口の周りをぺろりと最後に一舐めする。


「あ~る~~!!」


 あたしは涙目でアルに抱きつく。


「うわっ! 何するニャ」


 アルはじたばたと暴れてあたしから脱出する。


「もう恥ずかしがらなくてもいいのに」

「きょ、恐怖しかなかったニャ……」


 アルはしばらくあたしから距離を置くようになった。


「さて、もうそろそろ門限の時間じゃないですか?」


 大将の言葉で時計を見ると、5時50分。確かに今から帰らないと間に合わないかも。

 これで上手く行って、塾の帰りに寄れるようになるかはわからないけど、ちょっとずつでも努力しなきゃ、絶対に叶わないものね!

 あたしは大将たちにお礼を言って、家路へとついた。


※※※


 翌日からのあたしは、午前中は夏休みの宿題。午後は自由時間で友だちとも遊んだけど、5時からは『注文の多い料理店』で料理の修業。塾がある日はそのあとさらに勉強とスーパーいい子ちゃんな生活を送った。

 8月に入り、残す宿題も自由研究だけになったころ、あたしはフレンチトーストを極めたと言ってもいいくらいに上手く作れるようになっていた。

 もちろん他にもいくつか教わっていたのだけど、いまのところこれが一番上手に出来た。


「大将! そろそろお母さんに挑戦してみようと思うの」

「えっ、もう! 夏休みはまだあるし、もう少し練習してからでも……」

「実は、夏休みの宿題もいま急いで終わらせていて、あんまり夏休み終わりになるとそっちの効果が薄れると思うんだけど」

「そっか、色々良子ちゃんなりに頑張っていたんですね。そういうことなら」

「それに! 小学生最後の夏休みなのよ! 悩みなんかなく、パァッーと遊びたいじゃない!」

「そっちが本音の気がするニャ」


 アルの冷ややかな目にもくじけず、あたしは続けた。


「それで、明後日の土曜日にお母さんをここに呼ぼうと思うんだけどいい?」

「いいですよ」


 大将は二つ返事で快諾してくれると、


「大将がそう言うのなら、わかったニャ。他のネコのお客さまにはボクから伝えておくから、5時から使うといいニャ」

「2人ともありがとう!」


 その日の夜。あたしは帰って来たお母さんに挑戦状を叩きつけた。


「あたしがレストラン『注文の多い料理店』でつちかった全てを見せてあげるわ! それでもし、あたしがレストランに行っているのがプラスなことだって思ったら、これからも塾のあとに寄らせてもらうわ!」

「もし、そう思わなかったら?」


 お母さんの冷静な返事に一瞬たじろいだけど、ここでまず負けちゃダメだ!


「もし、そう思わなかったら、門限は絶対守るし、これから毎日お皿洗いとお風呂掃除をするわ!」


 お母さんはあたしの言葉を聞くと、にやりと不敵な笑みを浮かべ、「いいわ。その勝負乗りましょう!」と言った。


※※※


 土曜日の午後5時。

 決戦の時間になった。

 お母さんが来る前に大将から渡されたものがあった。

 それは――。


「これってコックさんが着る服と帽子?」

「うん。ちゃんと女性用ですよ」


 その言葉通り、パティシエみたいな服でかっこいい。

 そのことを大将に素直に伝えると、「うん、まぁ、同じですからね」と言われた。

 コックとパティシエの服が同じだとは今まで知らなかった!

 それから最後に今までずっと一緒だった花柄のエプロンをつける。

 よしっ! これで準備万端!

 あとはお母さんを迎えるだけだ!

 きぃ……。

 『注文の多い料理店』の扉が開かれ、お母さんが入ってくる。


「いらっしゃいませ! こちらのお席にどうぞ」


 あたしは今までアルの接客をずっと見てきた。今はそれと同じことをすればいいだけだ!

 しっかりと席に座るのを見届けると、お水を出した。


「で、何を見せてくれるの?」


 お母さんの言葉に動じることなくあたしは言葉を出す。


「今日はお母さんのために腕をふるってフレンチトーストをお出しさせていただきますので少々お待ちください」


 あたしは厨房に入ると、


「すごい緊張したよぉ~!」


 静かに見守るアルにこぼす。

「まだまだ本番はここからニャ。大将は良子さんのお母さんと今までのことを話すそうだから、一人で頑張るニャ。今まで通り落ち着いてやれば大丈夫ニャ!」

「う、うん。そうだね。頑張るよ! アル、ありがとう!」

「お礼は全部終わってからニャ!」


 あたしは調理台へと向き合った。

 大将から教えてもらったフレンチトーストはまず、食パンのみみを切り落として、それからパットに卵を入れてかき混ぜる。それから牛乳と塩少々。さらに混ぜて、パンをひたす。

途中でひっくり返すんだけど、形が崩れないようにフライ返しで丁寧に行う。たっぷり5分以上漬ける。

 次はいよいよ焼いていく。フライパンを中火で熱してからバターを入れる。

 ここからが集中!

 パンをフライパンに入れて、両面を1分半ほど焼く。

 1分半経ってキレイに焼き色が付いたらひっくり返す。そして反対側も同じように焼いていく。

 両面焼けたら、お皿に置いて、斜めに半分に切る。

 それから可愛いお皿に少し重なるように置いてから、はちみつをかける。

 これにて完成なんだけど、う、上手く出来たよね?

 お皿を持つ手がカタカタと震える。

 ど、どうしよう、上手く持てないんだけど……。


「良子さん。落ち着くニャ。大将が大丈夫って言ったんだから大丈夫ニャ! 大将はおいしくないものを人前に出させないニャ! 自分を信じるニャ! 大丈夫ニャ! 行けるニャ!」

「ちょっと! 励まされすぎて逆に自信なくなるんだけど! やめてくれない!」


 アルはニヤっと笑って、


「そうニャ。その調子ニャ」


 あたしも思わず笑顔をこぼしてしまった。

 いつのまにか手の震えは止まっていて、お皿をしっかりとつかんだ。


「行ってくるね」

「行ってらっしゃいニャ」


 あたしは厨房の扉を開けて、お母さんのもとへ向かった。


※※※


「お待たせいたしました。フレンチトーストになります」


 あたしは静かにテーブルにお皿を置く。

 さっきまでの震えた手じゃまずこんなに静かに置くことは出来なかっただろう。


「…………」


 お母さんはフレンチトーストをにらんでいるだけで一向に手をつけようとしなかった。

 何か失敗しちゃった!?

 不安にかられていると、大将はスッと立ち上がって、どこかへ行ってしまった。

 ちょっと! 今、このタイミングでどっかに行かないでぇ!

 あたしは心の中で全力で叫んだ。

 その叫びが通じたのか大将はすぐに戻ってきた。


「失礼しました。ナイフとフォークをどうぞ」


 大将は紙ナプキンをテーブルに置き、その上にナイフとフォークを置いた。


「あっ!」


 あたしはあまりのうっかり加減に思わず声が漏れた。

 これは、もうダメかもしれない~~。

 色んな悪い考えが頭をぐるぐると駆け巡る中、お母さんは始めの一口を口に入れた。


「あっ。おいしい」


 お母さんの第一声はそれだった。


「やった!」


 あたしは笑顔で声を上げると、大将もこちらを向いて微笑んでいた。


「本当はもう少し、じらすつもりだったのに」


 お母さんは悔しそうな顔をしている。


「まぁ、いいわ。がさつで男っぽい娘の、女の子っぽいところと服装も見れたし。それに最近は勉強も頑張っているみたいだったし、どんなでも、もともとOKしようと思っていたのよ」


 そっか、宿題を頑張ったのもムダじゃなかったのね。


「ここに来てすぐに良子ちゃんのお母さんからそう言われたから、なんの心配もせず待ててよかったですよ」


 大将は顔に似合わず、胸をなでおろす動作をしてみせる。


「大将、知ってたんだ!?」

「でなければ、ナイフとフォークに自分も気が付かなかったかもね」


 大将の笑う声で完全に場が和んでいる中、


「ただし!」


 お母さんは指を2本立てながら言った。


「ここにこれからも通うのに2つ条件があるわ」

「条件?」

「1つは、夜の一人歩きは危ないから、ここに来たらそのまま居なさい。お母さんが迎えにくるから」

「いいの?」

「そうじゃなきゃ危ないでしょ!」


 さらにお母さんはもう1つの条件を伝える。


「もう1つは、今度家でもフレンチトースト作りなさいよね。お父さんもきっと喜ぶわよ」

「うん。もちろんよ!」


 あたしは力強く答えた!


「では、すみません。これからも娘をよろしくお願いします」


 お母さんは大将に深くお辞儀をする。


「いえ、こちらこそ」


 大将も負けないくらい深いお辞儀だった。


 翌日からのあたしは生まれ変わったかのように晴れ晴れとしていた。

 もはや日課と化した『注文の多い料理店』では、今日も様々なネコが入り乱れていた。


「う~ん。何にも気にせずここに来られるってサイコーね!」

「結局来られるようになって良かったニャ」

「これもアルと大将のおかげね。でも何か忘れているような……」


 ま、いっか。


「ところで、良子ちゃんはこれからも料理は続けますか?」


 クリームソーダを出しながらおもむろに大将が聞いてきた。

 答えはもちろん決まっている。


「うん! これからも教えてください」


 大将は微笑みながら、「はい。これからも頑張っていきましょう」と答えてくれた。


「あ、そうそう。みんなに今日はお礼を持ってきたの」


 あたしはタッパーを取り出すと、カウンターの上に置いた。


「これは?」

「フレンチトーストの焼く前ね。ここに来てるピーちゃんの飼い主の高橋さんから教えてもらったレシピよ! 大将に教えてもらったのよりネコが食べやすいように牛乳多めなの! 良かったら食べてみて!」


 さっそくアルは一切れ食べてくれて、「食べやすくておいしいニャ! 味は大将のレシピのままなのがまたいいニャ」とほめてくれた。


「おっ! いい匂いがするんだナァ」


 そう言って現れたのは赤茶ネコのダイ。

 続くように、ミケやラムちゃんとマト。


「ちょうど良かった。みんなも食べて!」


 大将が気を利かしてお皿を用意してくれ、みんなへと行き渡る。

 みんなが楽しそうに、しかも、「おいしい」って言って食べてくれるのが何より嬉しかった。


「大将。おいしいって言ってもらえるのっていいね!」


 大将は優しく頷いた。


「これからもよろしくお願いします」


 これからもここに来よう! そう強く思った。


「ところで良子さん。通信簿は大丈夫だったニャ?」

「あっ。それどころじゃなくて忘れてた。今見せたら隠してたっぽいよね!? どうしよう大将~~~!!!!」

「それはまた難しい注文ですね」


 これからもここに来よう! 絶対に! 

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猫レストラン『注文の多い料理店』 タカナシ @takanashi30

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