第31話 二度目?

 ぬらりひょんが消えたあと王様と俺、神代、神崎さんの4人はしばしその場で今話された内容を理解しようとしていた。


 「王様…俺は行きます。あいつを止めるために!神崎もついてきてくれ!」


 神崎さんも少しまとまってきたが、そう簡単には決められないらしく返事は無い。


 「俺も行きます。あいつにラフィの事も聞きたいので。」


 「私は神代君についていきます。彼一人だと心配なので。」


 俺が言ったあと神崎さんも続けて言う。


 「すまん助かる。そして宜しく頼む。ムラカミ殿を止めてくれ。」


 王様はまさか勇者に宣戦布告されるとは思わなかったのだろう。拳を強く握り言った。


 そうして俺たちは村神を止めるために…いや、最悪殺すことになるかもしれない旅に出ることになった。


 「…旅に出るのは良いんですが全員一緒に行きますか?それとも二手に分かれますか?」


 こう言ったのは神代だった。確かに全員で回るよりは二手に分かれた方が早くすむだろうか。


 「そうだな、その方が良いか。…カンザキ殿とヒダカ殿もそれで良いか?」


 「はい、かまいませんよ。」


 「私もそれで大丈夫です。」


 俺と神崎さんは答える。神崎さんと神代の出発は明日、俺は今日すぐにでも向かうことにした。


 「そうだ、ヒダカ殿はシオンと共に向かってもらうぞ。」


 シオンと再び旅に出る事になった。まぁ、魔王討伐に出る前に魔王がいなくなったので再びとは言えないだろう。


 「はい、分かりました。俺の準備はできているので今すぐにでも向かうことはできますがシオンさんはどうですか?」


 「私も準備はできております。」


 シオンはそう言うと背負っていたリュックを見せる。よく見ると関係の無い物がはみ出していたがシオンが自身満々に言うのでツッコめ無かった。


 そして俺が獣国から魔国の順で周り、神代達が帝国から教国落ち合う場所は魔国として出発した。


 

 




 「まだなのか、獣国って。」


 「まだ国境にも着いてないわよ。そろそろ大橋に着くから前見てなさい。」


 俺たちは獣国領へ向けて馬車で移動していた。しばらく馬車に揺られ移動していると目の前に大きな橋が見えてくる。この橋は各国の境界である渓谷を跨ぎそれぞれの国をつなぐために造られた橋である。橋の前には兵の駐屯地があり隣国へ渡るときに許可を取るそうだ。


 出発する前に王様からもらった許可証を持って兵に見せるとすぐに通してくれた。


 橋の上は幅も広く石でできているためほとんど揺れないがどうやって造ったのかは不明である。橋は10分ほどで反対側が見えてきたのでそこまで遠い訳ではないらしい。


 橋を抜け此方にもいた獣国の兵に許可証を見せ獣国へと通される。






 ー虚妖ノ國ー

  

 虚妖ノ国中央、虚実ノ摩天楼:最上階、


 この部屋には現在、盟主である男性と副盟主である女性がいた。


 「では報告の来ない獣国へ行ってきますね。」


 「あぁ、頼んだよ。夜宵はきっと忘れて遊んでるだけだと思うからそこまで心配はしてないけど。」


 「ふふっ、貴方でも心配することがあるのですね。」


 「そりゃあるよ、身内に対してならな。」


 「では私の心配もしてくれるのですね?」

 

 「あー、どうだろうなー心配するところがが無いなー。」


 「…それはそれで残念ですね。まぁ、信頼されていると受けとりましょう。私は勇者達の案内をしてきますよ。此方の関係者だとバレずにですよね。」


 「あぁ、宜しく頼むよ。その方が面白そうだしね。」


 女性はそのままその部屋から出るとここへ来たときの門を使い監獄塔最上階へと向かう。


 部屋に残った男性はため息をつき目の前に黒い靄を広げるとそこには六箇所の景色が映し出された。そしてそれらは少しずつ動き揺れている。それは彼が送り出した六人の視界であった。


 その景色は家の中、空の上、町中と様々だったが1つだけ灰色に染まり色合いのない景色があった。そこには獣の耳や尻尾がついている獣人の姿が映っている。


 この視界は獣国へ送った夜宵の視界だったが見ると子どもと遊んでいるようで見ている男性は安堵していた。


 



 監獄塔最上階 門前、


 「ふぅ、さて夜宵ちゃんを探しに行きますか。」


 女性はそれだけを言い残しその場で腰のあたりから黒い翼を生やし飛び去った。


 

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