第14話 亀裂

 ダンジョンの中はとても綺麗だった。石造りの壁に石畳、明かりは心ともないがそれでも地球でよく見たラノベなどから想像していたものとは違って見えた。やはり実物を見るというのはとても良い経験になる。


 「どうです?綺麗でしょう?この1階はスライムのみを出現させるようになっているのですが、スライムは落ちているものを何でも食べてしまうのでゴミなどが残らないんですよ。」


 違った。スライムのおかげだった。よく見ると少し奥の方に大きさが膝くらいまでの水色で、プヨプヨした物体…ラノベやゲームよくに出てくる形のスライムがいた。スライムは石の隙間から生えた草の上に被さると徐々に草を溶かしていった。


 「まずはここに居るスライムを倒してもらおうと思う。スライムは子供でも倒せるが、打撃等の攻撃は効果がほとんど無い。騎士達から剣を借りて攻撃してみてくれ。そのあとはここで魔法を使えるものは魔術師から魔法の出し方や魔力の操作を教わってもらう。」


 こうして、初めて魔物を倒すことになった。騎士から剣を借り、スライムに向かって剣を振り下ろす。スライムは頭?から二つに裂けすぐに光となって壁へと吸い込まれていった。他の奴らも次々とスライムを倒していった。スライムは居なくなる気配が無いので王様に聞いてみたがダンジョンの魔物はそこに出せる数が決まっており、一体居なくなると同じ階層にまた一体とどこかに現れるそうだ。そして現れる時はタイムラグがあるらしく最弱の魔物であるスライムはすぐに現れるがドラゴンだとかの最強クラスの魔物は1か月程かかるらしい。


 ラノベに出てくるような魔物に対するランク付けなどは基本無いらしいが魔王や魔人、ドラゴン等、人に対してとてつもない被害を出すものには総じて災害級と呼ばれているらしい。魔物に対してランク付けが無い理由は魔物によってレベルも違えばたまにイレギュラーと呼ばれる変異体がおり、確定できないからだそうだ。ちなみに災害級が現れたときはそのものに対して区別するために攻撃法法から◯◯の災害とつくそうだ。


 話を聞き終えたあと次は地下1階へと下り、ここにはゴブリンこいう背が子供と同じ位の肌が緑色をした、醜悪な顔押した魔物が現れるようになるこの階層では集団戦の練習をするらしい。

 

 俺は神代達のグループと共にゴブリンを倒すことになった。しばらく待っていると奥の通路から木の棒を持ったゴブリンが一体こちらへ向かってきた。


 ゴブリンはグギャギャと言う声を発し俺に向かって手に持っていた木の棒を振り下ろす。その攻撃は意外にも早く先程のスライムで油断していた俺は咄嗟に剣を前に出し防ごうとした。

 自分のステータスは普通であると言うことを忘れていた。

 その結果ゴブリンの打撃を受けた俺の腕は痺れ尻餅をついてしまった。


 直後に横から神崎さんがゴブリンの胴体を横から斬り。ゴブリンの血が…出ることはなく切り裂いたあとから光りが漏れ出し、そこからゴブリンは光りに変わって壁へと吸い込まれていった。


 「ありがとう神崎さん。助かりました。」


 「平気よ、大丈夫だった?」


 「えぇ、おかげさまで」


 神崎さんはそう聞くと「ならよかったわ」とだけ言い残し周りに目を向けた。つられて俺も周りを見る。近くには神代達と騎士、それから魔道士と王様が居る。ただ遠藤たちが居ない。それに気づいた騎士と魔道士は焦り他の部屋へ探しに向かった。


 俺たちも探しに行くと、地鳴りの起こったようなゴゴゴッという音がなり響く。そして奥から遠藤達が三人で戻ってきた。だが今度は村神がいない。話しを聞くと村神が足を滑らせて深い穴に落ちたそうだ。


 遠藤達と合流し、全員で村神が落ちたという場所へ向かう。だがそこには話しで聞いた村神が落ちたという深い穴は無かった。代わりに大きな亀裂の入った石畳みとこの亀裂の間に村神が身につけていたと思われる服の切れ端が挟まっていた。


 遠藤達に聞いてもここには確かに深い穴があったらしい。ひとまず王様は村神を行方不明ということにし、全員でダンジョンを出ることにする。


 そして俺が後から全員のあとをついて行こうとしたとき地面に亀裂が入り丁度人が入れる大きさの穴になった。地割れの揺れで重心を崩した俺はその穴の中へと落ちていった。

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