第32話 アイムとの再会

 まるい緑色の広場。四隅に並ぶベンチに座りきれない見物人が、周りにひしめく。

 タクミとスズネが遠距離戦を繰り広げている。

「やってるやってる」

 ヤヨイとカケルの近くに、おさげの少女がやってきた。屈託のない笑顔。

「アイムさん、こんにちは」

「飛んでいた人ですね。こんにちは」

「こんにちは!」

 挨拶のあと、自己紹介をしていなかったカケルが名前を伝えた。白い建物の前に三人が座る。

「ヤヨイ。連絡先、交換してたの?」

 その返事を待たずに、あおい服のアイムが話す。

「そうだ。交換しようよ」

「してなかったんだね」

 カケルが呟く。アイムは独自の雰囲気を持っていた。


「お。ヤヨイが重くて飛べなかったときの」

「そういう言い方はやめてよね」

 模擬戦の終わったタクミとスズネがやってきて、アイムに自己紹介した。連絡先を交換する。

 のんびりとした雑談がつづく。

「へー。分離できるようになったんだね」

「そういえば、驚いていませんでしたよね」

 出会いも別れも突然で、聞けなかったことをヤヨイは聞いた。

「たまにいるんだよ。分離できない人、しない人」

「詳しいんですね」

 カケルは興味津々だ。真剣な眼差しで見つめつづける。

「あ。私、用事があるから、またね」

 十代後半の少女は、風のように去っていった。

「何だよ。肝心なところで。怪しいぜ、あいつ」

 長身のタクミは疑り深かった。

「そんなことより、たまにはバトル以外のことでも話しましょうよ」

「ここ、バトル用の広場だよ」

 ミドルヘアのスズネの言葉に、短髪のカケルが突っ込んだ。

「じゃあ、遠距離戦しよう」

 ロングヘアのヤヨイは、いつもの調子で言った。

 ヤヨイとタクミ、カケルとスズネが組んで、2対2の模擬戦の幕が開く。

 通常弾を使っている。

 その後も、模擬戦がひたすら繰り返される。今日もいつものように、ヤヨイ組の基礎訓練は続いた。

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