第19話 ヤヨイ・スズネ・タクミ対ガイ・ダン・ジョー

 宿の料金を支払う四人。そとへ出る。

 それぞれの荷物を背負って、茶色い建物の右手を目指す。ヤヨイ組はとなりの空き地に行った。

 すでに、眉毛の太い男性が立っている。

「待っててくれ。もうすぐ来る。オレの名は、ガイ」

 言葉のあとに、二人がやってきた。

 くせのある髪の男性が口を開く。

「ボクはダンっていうんだ。よろしく」

「なんで、リーダーが最後なんだ、いつも。ワシはジョー」

 とがった髪型の男性が遅れてきた。三人とも、十代後半だ。

 ヤヨイたちも自己紹介する。

 和やかな雰囲気ではなかった。ヤヨイとガイ以外は。

早速さっそく、戦おうぜ。誰がやるんだ?」

 パーカーを脱いだガイは、赤茶色あかちゃいろの服をあらわにする。

「僕は見学するから、三人でどうぞ」

 深緑色の服のカケルが、壁際にさがる。緑色の荷物を置いた。

「決まりね」

「俺かよ。休む気、満々だったのに」

 橙色の服のスズネと違って、紺色の服のタクミはやる気がなかった。

 赤い服のヤヨイが手を上げる。

「順番は?」

「三対三に決まってるだろ」

 ガイは即座に答えた。

「だよね」

 青紫色あおむらさきいろの服を着たダンも、すぐに同意する。

「だから、なんでリーダーを無視するんだ、お前ら」

 黄緑色きみどりいろの服を着たジョーは、機嫌が悪かった。


 3対3の能力バトルに同意した六人。

 ルールは、ゲージあり、連続ヒットなし。

 戦闘空間が広がっていく。領域は精神力により変動する。町の半分を包んだということは、全員の力が強いことを意味する。

 広がっていた円形のドームが止まった。

 赤い服になったガイ、青い服になったダン、緑の服になったジョーが姿を現す。

 ヤヨイは精神体に分離せず、赤色の服のまま。

 スズネが黄色の服に、タクミが青色の服になって現れた。

 不機嫌そうなタクミ。

「おい。かぶってるぞ、色が。さっさと倒して分かりやすくしようぜ」

「そういうことは、言わないほうがいいと思う」

 座って見学しているカケルが呟いた。

「もう。せっかちなのは、よくないわ」

「まずは、わたしが前に」

 落ち着いているスズネ。ヤヨイも普段よりは落ち着いている。

 その様子を見ていたカケルも、落ち着いていた。

「おい、さっさと分離しろよ」

「わたしはこのまま戦うので、よろしくお願いします!」

 いつものようにヤヨイが伝えた。

 相手の三人は驚いた。一人がすぐに表情を変える。

「マンザエモンの編み出した奥義おうぎってやつか? 面白い」

 ガイは呟いた。仲間二人とは違う反応。

「途中から精神体を分離するので、気を付けてください!」

「それは言わないほうがいいと思う」

 堂々と手の内を明かしたヤヨイ。見ているカケルは、いつものように呟いた。

 そして、相手の能力を真似できることは言わなかった。

 スズネとタクミは、表情をあまり変えない。

「オレの攻撃はガードを無視するぞ! 気を付けろ!」

 ガイが叫んで、大笑いした。

 ダンとジョーは呆れている。ヤヨイとガイは、楽しそうに笑った。


 乾いた土。まばらに生える草。広い空き地で戦いが始まる。

 ヤヨイとガイは、距離を詰めていく。

 スズネとタクミは、ダンとジョーに向かって目を光らせていた。

「やるぞ。ダン」

「今? 分かった」

 ジョーが指示を送り、二人は攻撃を仕掛けた。

 ダンの放った無数の弾が、真っ直ぐにスズネとタクミのほうへ飛んでいく。あまり速くはない。

「どうする?」

「こっちに来て。守ってあげるわ」

 タクミは能力を使わず、スズネの言葉に甘えた。

 そのとき、弾が方向を変える。


 目まぐるしく動くヤヨイとガイ。

 ダンの放った遅い弾が、がって飛んでいった。

 ジョーも弾を発射する。

 気付いたスズネが、曲がる弾をいくつか撃ち落とした。

 のこりが向かっていく。

「右だ!」

 タクミが叫んだ。

 防御が間に合わず、ヤヨイは攻撃を受けた。そこに、すこし角張った弾が飛んでくる。後ろに跳んでよけた。

 地面にぶつかった弾が、光をまき散らす。

爆発ばくはつ?」

 ヤヨイが攻撃を受けた。その瞬間を、ガイは見逃さない。

 とっさに防御ぼうぎょしたヤヨイのガードは破られ、ガイのこぶしが当たった。

 ヤヨイは、身体をひねって威力を軽減している。

「すごい。わたしたちも連携しないと」

 ヤヨイは、相手の連携に感心していた。

「敵を褒めてる場合じゃないぞ。うちの組長は、全く」

「その呼び方は、どうかと思うわよ」

 タクミとスズネが、ダンとジョーに攻撃を開始。

「さっさと沈めるぞ」

「しょうがない人ね」

 話しながら、二人の周りにかがみを設置する少年。少女が高速弾こうそくだんを発射し、目まぐるしく反射させて動きを封じた。

 抜群の相性である。


「切り札を使います!」

 ヤヨイは二人を信じていた。横から弾が飛んで来ることは、まったく考えていない。

 身体が光の壁に包まれる。

 白色の服になったヤヨイが姿を見せた。

「待ってたぜ!」

 赤い服のガイが、突きを繰り出した。ヤヨイは流れるような動きでよける。

 剣を使って反撃しなかった。

 すでに半分ほど精神力を失っているというのに、焦りの色はない。

 相手の蹴りを、剣を使いらしたヤヨイ。ガード代わりの受け流し。するどい蹴りで反撃した。

 迫ってきた突きも剣で逸らして、左手で突きを叩き込んだ。

 そして、右手の剣で斬りかかる。

 ガードするガイ。剣は途中で消えた。体勢を変え、上から叩き込むような拳を浴びせるヤヨイ。

 ガイのガードは破られ、戦闘不能になった。


「何だよ。二人がかりなのに先を越されてるぞ」

「仕方ないでしょ。足止め目的なんだから」

 タクミとスズネは見事な連携を見せ、ダンとジョーを翻弄ほんろうしていた。

 ガイを倒したヤヨイは、すぐに分離がとけた。本体に戻ったその場から、無数の遅い弾と、すこし角張った弾を発射。

「これは、上だな」

「横にも少しね」

 タクミが、相手の上空にいくつか鏡を設置した。スズネの言葉を受けて、横方向にも設置し直す。

 鏡にぶつかる角張った弾。爆発せず、上に向かって飛んでいく。

 曲がる弾が、ダンとジョーに迫る。

 鏡に反射し曲がる弾を、ガードしきれない二人。半球体の光の壁は、広い範囲を守れない。

 うえから降ってきた角張った弾が、地面で爆発した。

 両手を光らせたスズネが、大きな弾で追い打ちをかける。容赦ようしゃなかった。

「味方でかったぜ、全く」

 タクミが笑いながら言った。二人は戦闘不能になり、戦闘空間が消えていった。

 見ていたカケルは、すこし柔らかい表情をリーダーに向ける。


 戦闘空間が広すぎた。

 戦いを見つけられた人は少ない。

 チームごとに、いくらかのお金を受け取った。

「お前はもっと強くなる。オレが保証する」

 茶色寄りの赤い服を着たガイが、きっぱりと断言した。

「また、戦おうね」

 ヤヨイが再戦を誓い、二人は握手した。

 癖のある髪のダンが同意。

「そうだね。もっと腕を磨こう」

「チーム・ジョーガイダンをよろしく!」

 尖った髪型のジョーがリーダー風を吹かせて、三人は去っていく。

「俺たちのチーム名も、名前くっ付けるか?」

 タクミが提案して、ほかの三人は却下した。

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